太乙の様子がおかしい。どこが・・・とははっきりわからないが、漠然と玉鼎は感じていた。
          止む気配なく雪が降りつづける寒い冬の日。
          手に入れたばかりの西域の砂棗を届けに訪れた玉鼎の前には、既に心を閉ざして
         しまった太乙がいた。
          普段ならば知的好奇心に満ちている瞳は輝きを失い、何をするでもなく、出窓の枠に
         座っていた。
          まるで人形のように。
          火もついていない室内にどれほどいたのか。肌も着物も冬の冷気に溶けてしまっている。
         「・・・太乙」
          抱きしめても身じろぎ一つしない。
          開かれたままの目は虚ろに外を映していた。
          冷えきった体を温める為、浴室に太乙を運び、道服を脱がせようとした時だった。
          太乙がにわかに抵抗しだしたのだ。
         「い・・・やっ」
          腕を胸前で交叉させて、襟が寛げられるのを阻む。尚も玉鼎が奪おうとすると、背を
         丸めて蹲ってしまった。
          華奢な体ががたがた震えていた。
          それは怯え。
          小さな獣と同じで、世界の全てを怖れている。
         「太乙!」
          強引に腕を掴んで、玉鼎は太乙を起こさせた。
         「離してっ」
          色を失った唇が叫んだ。
         「怖い、嫌だ! 私に触れるな−−−・・・」
          玉鼎がごうを煮やし、太乙を床に組み敷く。小柄な体の動きを封じるのは容易だった。
          2、3日見なかっただけなのに、はっきりわかるほどに太乙はやつれていた。
          帯を解き、はだけさせた服の下にありありと残るのは暴行の跡。
          何時もの事ながら、玉鼎は溜息を吐いた。
          仙としての力もまだ完全に身につけないまま十二仙へと上げられた太乙への陰惨な扱い。
         同格の仙達のあまりにも酷い態度。
          太乙とて自らの道府を持つ仙。故に玉鼎も何時も側にいる事は不可能だった。
          その隙を狙って全ては行われる。体への暴力だけでは済まず、もっと奥深い所・・・性的な、
         精神的な所までそれらは及んだ。
          太乙が強くなれば治まることであろう。しかし、時間がかかる事なのだ・・・。
          すすり泣く太乙を、玉鼎は湯へと誘った。
          体を浸けさせる前に傷を確かめておかなければならない。大きな怪我を負っていれば、湯の
         熱で再び開いてしまうから。
          腰を降ろさせ、ぴったり閉じられた膝を開かせようと玉鼎はした。
         「止めて・・・」
         「私に見せなさい。隠さずに」
          耳に唇を寄せ、囁いた。直接注がれる言葉に太乙の気が逸れるのを計り、大きく割って
         しまう。 
         「・・・!」
          俯いた顔を、肩口で切り揃えられた髪が覆った。
         「酷いな・・・」
          腿の内側は赤くなっていた。噛み跡や、愛撫にしてはきつい跡、それらは後方にまで
         続いている。
          先端にいたっては亀裂まであった。弄られたというよりは、鈴口から何かを入れられて、
         尿道の中から抉り嬲られたような裂け方だ。
          赤剥けて萎えたモノは、玉鼎の手が掠っただけで、太乙に悲鳴させるのに充分だった。
         「一度も達かされなかったか?」
          双果実が重く熟れているのを掌に受け止める。
          垣間見える表情が、辛く顰められているのが事実だと告げていた。
         「は・・・あんっ、くぅ・・・うう」
          玉鼎が握りしめた。痛めつけられたソレに痛みを強く与えているのはわかっていたが、
         留められているのを追い上げるのにさほど時間を要しなかった。
         「や、いや・・・手・・・をっ、もう、赦して・・・お願いだから・・・」
          太乙は首を振る。 
          高ぶらされるだけで解放させてもらえず、苦しめられたのだろう。
         「大丈夫だ。達かせてやる」
         「や−−−っ」
          怯えきった太乙は触れているのが玉鼎だと理解していない。暴れるだけ暴れて、体が
         倒れてしまう。
          うつ伏せに這って逃れかけるのを、足首を掴んで玉鼎は封じた。
         「ひっ!」
          再び指が前に触れた。同時に逆の手指が深く内部を穿つ。
          刺激のきつさにびくびくと背が撓った。すがるものを求めた手が虚空をさまよう。
         「あ、あ、あ・・・っ」
          叫びが一層激しくなる。
          焦らせはせず、玉鼎は放出させてやった。
          太乙が初めて安堵を浮かべた。
         「まだだろう?」
          仰向けにさせた顔の横に両手を付き玉鼎が覗き込む。
         「おまえはまだ満足してはいない」
          体をゆっくりずらす。
         「もう一度だ・・・」
          唇に熱く含まれて」
          涙が新たに太乙の頬を伝った。

    
         「しばらくおまえを、私の洞府に留める」
          抱き、交わった後、また魂を喪失させた太乙だった。
         「おまえが元に戻るまで、誰にも触れさせはせぬ」
          道府を持つ仙が長く離れる事は好ましくないが、このまま置いていく事など出来るはずも
         なかった。
         「おまえも、最高峰の仙の一人。ショックが癒えれば回復していくだろう」
          ぴくりともしない太乙を抱きしめる。
         「だから・・・太乙・・・」 
                                                       End           

         No.2100のきり番で、氷輪様からリク頂きました。テーマは
         玉乙裏で、何らかの理由で記憶をなくした太乙を慰める玉鼎のお話でした。
         氷輪様、大した物では全然ありませんが、・・・しかも記憶喪失よりショックで
         ぶっとんでしまった太乙になってしまっていますが、お納め頂けましたら
         嬉しいです。
                                                虚無の瞳・リベンジへ