友雅の長い指が泰明のモノに絡められた。
「は・・・ああっ」
とたんに背筋を駆け抜けた刺激の強さに仰け反る体は、簡単に押さえつけられた。
筋張った男の手のさらつきを感じ取れるほど敏感なそこは、怯えたように震えた。
「離せ、!」
「こんなにして、まさか自分でするとでも?」
苦笑が聞こえるとともに、掌で揉みしだかれた。
「ああ・・・」
開いた泰明の唇から熱い吐息が漏れた。
「君が知らなかった悦びを与えてあげよう」
囁きは恐怖を呼び起こした。身の内に抱え込まされた熱く甘い疼きを追い求めたい欲求は
あったが、それが未知故に恐ろしかった。
「んんんっ」
泰明が首を振った。
「さても強情な事だ。君の精神はずいぶんと高い所にあるようだね」
先端の小さな割れ目に爪先が当てられた。
びりっと鋭い痛みが走った。
「ああっ」
「その方が私としては面白い。自ら浅ましく求める者のどこが楽しいというのだ」
滲み出した雫が丹念に塗り込められる。そのじれったさが辛い。眉根を寄せた泰明の顔が
苦し気に歪んだ。
「堪えきれなくなったら、達きたいと・・・言いなさい」
濡れた音が響く。耳を覆いたくなるように淫らな音が・・・。
「う・・・ふ、あ、あぁ・・・あ・・・」
留める事などとても出来ない喘ぎが泰明から溢れ出た。
それを見計らった友雅は、空いた手を滑らせ、細い右脚だけを抱えあげた。
「何を・・・っ!」
大きく広げた形に曲げられ、不自然な体勢に筋が攣った。
「私を受け入れてもらう」
悪い予感に泰明の瞳が見開かれた。
「嫌だ・・・」
「される事が何かもわからないのに、拒絶するのかい?」
目じりに溜まっている涙を友雅は唇で吸った。
「・・・あっ」
泰明を嬲っていた指がふいに離れた。滑るように高ぶりを伝い、さらに奥へと忍び込む。
先ほどまで弄っていた場所は、熱く熱を持っているせいで、すぐに探り当てられた。
残っていた滑りで馴染ませた中心に人差し指が添えられた。
「止めろ! そこは・・・もう・・・!」
咥えた大きさを覚えているそこは、友雅がさしたる力を要さずとも、すんなり指の先端を呑み
込んだ。
関節一つ分だけを含ませたところで、指は小さく前後した。
「あぁ・・・」
「ここに・・・」
泰明が覚えたのはもどかしさ。華奢な体が震えた。
「迎え入れるのだ、私を」
もっと深くへと、腰が浮いたのは本能的な反応。
指の先だけを出し入れされれば、柔らかな襞は絶え間なく刺激を受ける。前方の立ち上がりを
中途で放り出された事が、泰明をより脆くしていた。
「友雅、友・・・」
「焦らずとも」
癖のある髪が泰明に落ちかかった。



うつ伏せた腕の中に顔を隠し、泰明はすすり泣いていた。
ひどい痛みが去らない体はその姿勢から動く事が出来なかった。
「初めての君に無茶が過ぎたようだ」
友雅が泰明の頭を静かに撫ぜた。
「軽く交わるだけにしようと思っていたのが・・・自制がきかなくなるなど・・・」
泰明を見つめる瞳がすっと眇められた。
触れていただけの掌に力を込める。無理矢理、震える体を返させ、仰向けに押さえつけた。
「−−−!!」
激痛に泰明が掠れた悲鳴を上げた。
下肢は自身の一部ではないように力が入らなかった。なのに、神経だけは麻痺する事なく
こうして、絶え間ない痛みを送ってくるのだ。
見下ろしてくる友雅を睨みつけたつもりだったが、涙で霞むだけだった。
「泰明」
苦痛に震える唇に接吻が与えられた。
「ん・・・」
脳がじん、と痺れた。
何故? と思う。
この男によってもたらされる辱めも痛みも、何故、口付けられる事で薄れるのだろうか。
汗で張り付いた前髪が掻き上げられた。
ひんやりとした夜の大気が晒された額に感じられた。
「・・・わからない」
「君ならばそれもありえるのかもしれないね」
友雅が長い髪を宙に躍らせ、天井を振り仰いだ。

夜に舞わぬはずの・・・蝶が御簾の隙間より入り込み、高みを飛んでいた。

緋炎5 でした。次回くらいで完結させたいです。

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