友雅の瞳がくっと眇められた。柔らかな肉を穿った指が、熱く絡みつかれている。
いきなり二本もの挿入は泰明にはきつかった。締め上げてくるのを掻き分けるように
根元まで咥えさせてから、中をぐるりと探る。
「う・・・あっ」
組み敷く泰明が痙攣した。荒い呼吸が室内に響き渡る。
男の象徴を嬲られた痛みとは異質の・・・しかし痛みと分類出来る感覚が無理に
広げられた場所にはあった。
それは疼くように鈍く、擦り剥けた傷を弄られるように苦しく、吐き気を覚えるほど、辛い。
「苦しいばかりでは可哀想だね」
赤く熱を帯びた頬に友雅が触れた。からかうように皮膚の上を滑った指が唇に到達
した時、泰明は思いきり歯を立てた。
「・・・っ!」
素早く友雅は手を引いたが、既に指先には血が滲んでいた。
口中に広がった鉄の味に顔を顰めながらも、泰明が気丈に友雅を睨んだ。不思議な
煌きを浮かべる瞳を見返した後、友雅がうっすらと笑んだ。
きつい光りを帯ながらも、その中に怯えがある事に気付いたせいだ。
「このような状況にあるというのに」
友雅が指を舐めた。
「君は面白い。興味がわく」
瞬間、挿れたままにしておいた指が肉の一点を突いた。
「ああああっ!!」
泰明の全身を走り抜けた痺れ。今まで知らなかった感覚が背を抜けて脳へと突き
刺さる。
「や・・・、抜け・・・嫌だ・・・」
擦る指のざらつきさえもが克明に感じられて、泰明が首を振った。
力で退けようとしても、細く華奢で、まして疲労を纏う泰明にそれが出来るはずもなかった。
折り曲げられた脚が攣るほどに硬直した。
「全くの無垢というわけか」
泰明の反応から、友雅が呟いた。
「では知りなさい、泰明」
「何、を・・・」
「これが悦い、という事を」
「ふざけるな!」
身もがいた泰明は軽く封じられてしまった。
「戯れ事では決してないよ。その証拠に、君の部屋で・・・」
「違う、ここは・・・」
似せられただけの場所だと言いたかった。
友雅を通り越した視線が、周囲の風景を映す。住み慣れた部屋。僅かばかりの家具。
扉を開くと、咲き乱れる桔梗花があるようで・・・。
「違う、違う!」
「君の部屋だ。だからここで」
泰明を惑わす言葉は続けられた。
「後ろだけで達かせてあげよう」
驚きに固くなる泰明を見下ろす友雅の瞳は冷たかった。
指が中で鉤のように曲げられた。
「い・・・っ!」
一つ箇所を集中して攻められる。拒絶も逃げる事すら出来ずに受け入れなければ
ならない泰明が涙を漏らした。
肉体を痛められる事は堪えれば済む。
しかし・・・熾火のように炙られるこの感覚にはどう対処すれば良いのかが・・・
泰明にはわからなかった。
「あ、あ、あ・・・」
縮んでいたそこがゆっくりと頭を擡げ出した。
「嫌・・・!」
己が身に起こる変化に泰明は怯えた。がくがくとした震えが大きくなる。せめてその
部分を隠せれば・・・という思いも叶うはずがない。
「今は遮るつもりはない。君の悦びを」
もう噛まれる心配はないとわかっている友雅は、喘ぐ唇に指を這わせた。
泰明が抱える熱の一端を表す熱沙の湿りが付着した。
「・・・泰明」
呼ばれた名が堪えていた心の堰を破った。
低く・・・甘く、耳より深い頭の奥にその声は響いた。
「−−−−−−!!」
幾筋も頬を伝い落ちる滴を拭いながら、良く出来た、と唇が触れ合うほど近くで
友雅が囁いた。
「あ・・・」
口付けが降る。
声よりももっと甘い接吻。
「んん・・・」
下肢に覚える不快感が浮遊感に覆い隠される。落ちかかってきた友雅の長い髪が
泰明の周囲に闇の流れとなった。
「期限つきの預かり人を・・・」
すいと離れた友雅の両手が泰明の頬を包んだ。
「何時までも留めおきたくなった」
与えられるこの一連の仕打ちに意味があるのか、とぼんやり泰明は考えた。思考が
上手く巡らない。
わかるはずもない答えに、思う事が続けられなかった。
「友雅、脚を・・・」
この姿では苦しいと泰明が訴えた。
「ああ、まだ駄目だよ。私に晒す事がこたえるかい?」
「私をもう嬲ったではないか」
「君がいたぶるだけの対象ではなく、気にいったからね」
解放とは逆に、さらに脚を押さえつけられて泰明が狼狽した。
これから、何を求められるのか・・・と。

今回から桔梗柄に変えてみました。ハッピーエンドを目指して、GOです。

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