細い指が絹を解いた。
中に収められているのは、永泉には似合わない無骨な輝きを放つ鉄だった。長く永泉の肘から手先
までほどもあり、先端に行くほどなっていた。
「鉄など・・・私は好みませんが・・・銀だと強度に欠ける・・・。優美で強い銀がどこかに存在しない
物でしょうか」
永泉がそれを悔しそうに握り締めた。
初めて見る物に泰明の瞳は向けられた。
言葉ではない問いかけに永泉の唇がうっすらと笑みを履いた。
「さあ、何でしょうね。でも最初はこちらから。私はあなたを傷つけた方とは違います」
燭を灯す時に垂らす貴重な香油を入れた小瓶を永泉は取り上げた。
「少し、冷たいので我慢して下さいね」
「・・・っ!」
ふいに永泉の指戯によって熱を帯びた場所に香油が滴って、泰明が小さく悲鳴した。
「大丈夫です。すぐに体温に馴染みますから・・・。あなたを抱いた方はこのようにして下さらなかっ
たのですか?」
秘所に落ちた香油は泰明の下肢の間を伝い、小ぶりな性器にまで流れてから床に垂れた。
「香油を馴染ませるのが、ここを緩めるのには丁度良いのです。私も、そうされるのが一番気持ち
良く出来ます」
「永泉・・・」
「私の事などどうでも良い事ですね。つまらない事を口にしました」
永泉の指が香油の助けを借りて滑らかに秘裂を辿った。
「もう泰明殿と同じ温かさになっています」
「言うな」
「どうしてですか?」
「・・・くだらぬ」
「そうでしょうか」
「勿論だ・・・あっ!」
揃えた指がいきなり泰明の肉を割った。滑った感触がしただけで痛みはなかったが、受けた衝撃に
泰明が竦んだ。
くちゅくちゅと濡れた音を立てて永泉が指を出し入れさせた。その淫らな響きが自身の体から起こ
っているのを認める事などとても出来ずに泰明は顔を突っ伏した。
「床の上でそのきれいなお顔を傷つけられては大変です」
永泉が器具を包んでいた布をくるくると丸め、泰明の顎の下に置いた。
柔らかな絹に泰明がほっと息を吐いた。
「絹がお好きですか? それにしては泰明殿は上着以外で身におつけになりませんね。これも・・・
あまり上等な品とはいえませんが・・・。殿上に上がる身分にはないとはいえ、このように質素に
なさる必要はないと私は思います」
殿上に上がる身分とは三位以上を指す。従七位でしかない泰明にとって手に届くはずもない地位で
あった。
それでも末端とはいえ貴族の地位にある者が、都の庶民に近い素材の着物を纏っているのが永泉
には不可解だった。
「陰陽師に華美な装いなど必要ない」
「私としては泰明殿をきれいにして差し上げたいですね。今度何か仕立てて贈りましょう」
「要らぬ」
「私の気持ちです」
「・・・勝手に、しろ・・・」
泰明が喘いだ。
何気ない話を永泉は続けていたが、その間も泰明は弄ばれているのだ。治まっていた息が再び
上がり、呼気が辛くなった。
音を立てぬよう、永泉が鉄の器具を探り寄せた。指と入れ替わりに泰明にあてがう。
「な・・・っ」
異常な冷たさに泰明が大きく撓った。
「どこに使うかわかっていらっしゃったでしょう? 今さら何を驚かれるのですか?」
頑なな蕾も執拗に解されたせいで幾分は緩んでいる。そこに永泉は一息に半分近くまで押し込んだ
のだ。
「あああ・・・!!」
異物を感じる事などありえないほど深くまで冷たさに犯された泰明が悲鳴した。びくびく痙攣する
のを体重を掛けて押さえる為に永泉は上体を屈ませ、泰明の耳元に囁いた。
「まだ、これからですよ」
その意味をもっと奥まで入れられる事だと感じた泰明の頭が拒絶を表して振られた。それだけでは
ないのに、と永泉が忍び笑った。
黒い鉄故に、危険な気配のした物故に泰明は長く正視出来ず、気づかなかったのだ。それが
巧妙に二本の作りになっている事に。
永泉が器具をずずっと押した。
「は・・・あっ」
「あまり肉を絡ませるとお辛いですよ?」
意思の力で制御出来るはずもない事を永泉は告げた。
「泰明殿の中の動きが、無粋な鉄であっても私に伝えてくるのです」
進めるにつれて増してくる抵抗を振りきる為、永泉が器具をぐるりと回転させて柔らかな内壁を
擦った。
「ああうっ」
うめいたはずみに一瞬泰明から力が抜けた。
それを永泉が逃すはずもなく、残った部分を無理に挿入させてしまう。
「や・・・、止めっ、もう・・・、」
「はい。入れるのはもうおしまいです」
5センチほど泰明の秘所からはみ出させてはいたが、永泉は押し込む動きを止めた。その場所に
永泉は指を置き、小さく開いた穴に捩子を入れる。
きゅっと捩子留めまでを嵌めてやると、異様な気配に泰明が気づいたようだった。
「何を・・・している・・・」
「準備を」
永泉が鉄の器具を揺すった。
「嫌・・・あっ」
この器具は咥えさせた最も奥の細い先端を軸に、二本が大きく開く仕組みになっていた。捩子の
力を借りて力のない者でも用意に出来るように作られている。
「泰明殿を開かせて頂きます。傷つけないように、優しく。私はあなたの身体の中を見てみたいの
です。約束をしましたので、抵抗などなさいませぬよう」
言葉で泰明を封じ、器具によって無理に寛げられて充血した、秘めやかであるはずの場所にそっと
永泉は触れた。

終了予告はしない事にします。毎回嘘吐きになってしまうので・・・(汗)
永泉、まだ白い・・・はず。