に向かって立たせた楊ゼンに、太乙は手を伸ばして格子に掴まるよう命じた。
            楊ゼンが逡巡すると、無理に腕を取り、縦横に等間隔に組み合わされた格子の、
          十字になった一つに両手首を一纏めに縛られ、括りつけた。
            あっけないほど簡単に、楊ゼンの上半身の自由は奪われてしまった。
          「どうされるかわからないってのは怖いだろう?」

            楊ゼンの道服の裾を捲り上げる。
            嫌がって足を楊ゼンは暴れさせたが、力の差は歴然で、難なく下半身を剥き出しに
          され、高く持ち上げられた。
          「手に負担が大きいけど」
            言いながら、楊ゼンの体を二つ折りに、腕と足を纏めてしまう。肘と膝、二つの関節が
          完全に一つに拘束される。
          「しなやかで、ほどよく鍛えられた筋肉だ。これなら長い間体を保っていられる」
          「うう・・・」
            体重を支えるのが、格子を掴んだ手と、括ってある紐だけになって、痛みに楊ゼン
          がうめく。
            紐が手首に食い込んだ。
          「いい格好だ。全部脱がしてしまうよりずっと惨めたらしい」
            赤く染まった楊ゼンの頬に軽く口付けて太乙は離れた。すぐに何かをひっくり返して
          引き摺る大きな音がしたが、楊ゼンに振り返る勇気はなかった。
            何より手にかかる負担が酷くて、とてもそんな余裕などありはしない。
            例え格子から手を離しても、縛られたままでは、落ちることさえ無理なのだ。
            食い込んでいる紐に全体重がかかるだけである。
          「・・・!」
            ふいにひやりとした物が楊ゼンの秘部に触れた。
            驚いたようゼンが視線を落とすと、体の下に裏返されたテーブルがあるのがわかった。
          「ひ・・・っ」
            楊ゼンの体が震えた。触れているのは、上を向いたテーブルの、ほっそりと丸く削られた
          長い脚の部分なのだ。
          「細くて物足りないかな?」
            太乙が、それに甘い香りのする油をねっとりと塗りつける。
          「君のそこは、感じる。挿れられて嬲られてたまらなく。私の指なんかでは満足出来ない
          だろうから・・・」
            僅かに楊ゼンを持ち上げ、位置を整えさせると、脚の上に完全に据えさせた。
          「嫌・・・」
            ひくりと楊ゼンの喉が鳴った。 
          「後は君のがんばり」 
            銀色の光が走った。太乙が手にしたナイフは鋭く空を切り裂いて、楊ゼンの頭上へ
          向かった。
            手首を縛める紐が、ブツ、と嫌な音を出した。音は連続し、すぐにただの残骸へと紐は
          刻まれてしまった。
          「・・・止めて下さい・・・!」
            意図がわかって、哀願の言葉が漏れる。
          「君自身で加減が出来るんだから、成す術なく打たれたりするよりいいじゃないか」
            紐の束縛は外れた。
            直後、縋りつく重力に引かれ、楊ゼンは落下した。
          「−・・・!!」
            甘い香りを放つ物の上に。
            格子にしがみついた指が痛んだ。楊ゼンは手だけで体を宙に保たなくてはならなくなった。
            力を緩めれば、杭がより深く楊ゼンを穿つだけなのだから。
            格子を持つ手と、それに繋がる腕がぶるぶると震えた。
          「がんばらないと串刺しになってしまうよ」
            白い額に汗が伝わった。
          「中が・・・壊れてしまう・・・」 
          「全部入ってしまえばね。そうなるかも。でも人の内部って、腕一本分くらいの長さはまっすぐ
          入るとか」
          「止・・・めて・・・」   
          「仕方ないなあ」
            太乙がテーブルの足の中ほどに、留め具を刺した。
          「ここまで到達する前に、多分テーブルが倒れてしまうだろうね。勿論君も。かなり痛いと
          思うけど、倒れたら終われるよ」
            楊ゼンは首を振った。
          「好きなように」
            肩を太乙は竦めた。
          「何時までそうやっていられるかな?」
            言い放ち、太乙が胸の突起を摘んだ。指で挟んでゆるゆると刺激を与える。
            愛撫を振り払おうと、楊ゼンが身を捩って悶えた。
            瞬間、
          「あううっ」
            楊ゼンの指が金属の格子をで滑った。浮遊感。体が軋む。ひやりとした物は、肉壁を
          押し広げてさらに進んだ。
          「何の為に格子窓を使っていると思うんだ? 君が縋りやすいようにじゃないか」
            かろうじて滑り落ちたすぐ下の格子に指が引っかかり、楊ゼンは渾身の力を込めてそれを
          握った。
            痛みが楊ゼンを貫く。
          「許して、もう、嫌だ・・・」
          「まだだよ。まだ解放してあげない」
          「どうして・・・っ」
          「プライベートを暴かれて、気持ちいい者がいるとでも?」
            それにね、と太乙が耳元に唇を寄せて囁く。
          「君はもう感じてる」
            敏感な箇所を包まれた。
          「ああ・・・っ・・・」
            電流に似た鋭い、間違えようのない快感が楊ゼンの背中を突き抜けた。冷たく固い物を
          飲み込んだ腰が跳ねる。
          「プライドが高いから、感じさせられる事が、君には辛いはず。足を開かされた恥ずかしい格好で、
          こんなばかげた物を挿入されて、格子にしがみついて震えているなんて、最低だろう?」
            指先の動きに、胸を掠める息に。体の芯が溶けていきそうに切なくなる。
            格子に掴まる指から力が抜けた。もう一段、下へ。楊ゼンは落下して、つややかな脚に深々と
          沈んだ。
            柔らかい粘膜が張り裂けるほどの痛み。
            無残な姿勢で。
            ぐらりと傾いだ楊ゼンを太乙が受け止めた。
            体が引き抜かれる。
          「もっと、して欲しいんじゃないのかな?」
            無意識に楊ゼンの唇が薄く開いて、太乙の指を舐めた。

                                                   3へ続きます。