葡萄踏み楊ゼン。これは前作「秋の実り3」の
プロットです。楊ゼンが服の裾を持ち上げてる
ちょっときわどめのを描いてみたかったんですう。



「一つしか作られないんですか?」
「そうだよ。師兄は色んな所のを手に入れるし、
私は職人じゃあないし。これだけで充分」
「でも、桶一つではほんの少しです」
「だから貴重さが増すだろう?」
「・・・」
 何故、たった一つしか作らない物を手伝わせて
くれたのかが、楊ゼンにはわからなかった。
 毎年、太乙が玉鼎の事を考えながら作ってきた
物を。
 尋ねるのも何だかはばかられるような気がした。
 葡萄の芳香が辺り一面に充満していた。
 足も紫に染まっている。
 洗ったら、きちんと落ちるかな?と楊ゼンは
思って、自分の足を見つめた。
「川まで行こうか。この足で屋敷には入れないし
ね」
 太乙がすたすた歩き出したので、楊ゼンも慌てて
後を追った。
 一瞬靴をどうしようか迷ったが、太乙が素足の
ままだったので、置いていく事にした。
 足底に直接感じる草や土が気持ち良かった。