深い眠りにあった楊ゼンが、ふと意識を浮上させた。何故目が冷めたのかわからない
     まま、ぼんやり瞳を開く。
     「起こしてしまったか?」
      髪が優しく撫ぜられ、耳に心地よい声が伝わった。
     「どう・・・されたのですか?」
      夜更けなのに・・・と楊ゼンが問い掛ける。
     「いや・・・」
      玉鼎は答えず、立てた膝に付いた腕を頭に当て、僅かに逡巡した。
     「太乙が来ている」
     「え・・・?」
     「玉泉山の結界に入り込んでいるようだな」
     「どうしてこんな時間に・・・。師匠の思い違いではありませんか?」
      体を起こした楊ゼンの肩が引き寄せられた。
     「それがあり得ぬ事くらい、おまえは知っているはずだ」
      玉鼎が道府を置く玉泉山は、全体を彼の結界ですっぽり覆われている。侵入した
     者などすぐにわかるのだ。
     「楊ゼン、部屋に戻りなさい」
     「太乙様の為に、冷たい寝台に行けとおっしゃるのですか!」
      つい、楊ゼンの語気が荒くなった。
     「−−楊ゼン」
     「嫌です。ここで何が起ころうとも、います」
      玉鼎が、楊ゼンの顔を上げさせた。
     「では、いなさい。間もなく太乙はやってくる」


      ほどなく、部屋の扉がノックもなしに開かれた。
     「玉鼎・・・」
      歩く足がおぼついていない。隠しようのない酒精を太乙が纏っている事は、寝台の中に
     取り残されたままの楊ゼンにもわかった。
      太乙は、玉鼎が座る椅子の前に移動し、ぺたりと床に座り込んだ。
     「何をしにきた?」
      玉鼎が冷たく尋ねた。
     「急ぎの用があったとしても、夜明けまで待つのが礼儀だ」
     「抱いてもらうのには夜の方がいい」
      玉鼎の膝に手を添え、太乙が身を乗り出した。
     「欲しいんだ・・・師兄が・・・」
      無造作に身につけただけの着物から覗く細い肩に、血の滲む当て布がしてあるのを
     見た玉鼎が、襟を開いた。
     「師・・・」
     「おまえは体が弱い。傷の手当てはきちんとするよう、言ってあるだろう?」
      棚から薬の入った瓶を取り、玉鼎は乾いていない傷口に振りかけた。
     「く・・・っ」
     「この切り口は、赤精子の剣だな」
      新しい布を宛がい、包帯でくるくると巻く。太乙は切られた痛みがずいぶん和らいで
     いる事に気づいた。
     「ありがとう・・・」
     「ああ」
      とたん、太乙は腕を取られ、テーブルに上半身を押さえつけられた。足先は床についた
     まま、差し出された形になった腰から玉鼎が着物を捲くった。
     「何を・・・っ!」
      太乙が叫んだ。51   
     「他の男のモノを残して、私に抱かれたいと?」 
     「私は・・・ううっ」
      布を絡めた玉鼎の指が内部を抉った。
      苦痛に歪む表情を目の当たりにして、楊ゼンが我慢出来ずにゆらりと寝台から出た。
     「楊・・・ゼン?」
      太乙の色の薄い瞳が大きく開かれた。
     「すいぶんと、悩ましい姿ですね、太乙様。僕に酷い事をされる時と同一人物とはとても
    思えないです」
      近づいた楊ゼンが、反対側からテーブルに頬杖をついた。正面から太乙の顔を見つめる。
     「師匠には何時もこんな顔をされているのですか? でも他の方とされた後で来られるのは
    いただけないですけど。蜜壺の音からして、お相手は一人ではないようですし・・・」
      楊ゼンはにっこり笑った。
     「あまり太乙を責めるな」
      玉鼎が制す。
     「でも・・・」
     「離して、師兄」
      二人に、、まして楊ゼンに見られている事に堪えられなくて、太乙が身を捩った。
     「駄目だ」
      内部を清める指と逆の手は、背に置かれているだけなのに、動きが封じられていた。
     「嫌だっ! 駄目ならせめて楊ゼンを下がらせて!」 
     「どうしてですか?」
      太乙の赤い唇に這わせていた楊ゼンの指が、噛みつかれそうになって引っ込められた。
      楊ゼンは仕返しに頬を抓ってやった。
     「・・・っ」
     「僕を追い出されようとされるのですか? 太乙様は今日抱かれに来られたのでしょう?」 
     「誰が君などに・・・」
     「わかっています。何故僕があなたなどに挿れなければならないのですか? ただ師匠の
    お手伝いをするだけです。
      師匠、構わないでしょう?」
      楊ゼンは立ち上がった。


    「んん・・・、う・・・」  
      背後から座位で玉鼎を入れられている太乙の脚の間に、楊ゼンは跪いていた。
    「もっと舌を使いなさい、楊ゼン」
      玉鼎に指示されながら、太乙を焦らし、苦しめる。
      意識が遠のきかける度、二人がかりで引き戻されて、太乙は息も絶え絶えにされてしまう。    
    「夜明けはまだ先だ。おまえの望んだままに・・・」
      肩で切り揃えられた髪を掻きあげ、玉鼎が囁く。
    「太乙様には、もう届いておられませんよ」
      楊ゼンが、楽しそうに微笑んだ。 


    紫翆様へ
    こんな感じでよろしいでしょうか?
    え、全然愛がないって? 私なりに二人に愛される太乙を目指してみたのですが・・・。
    楊ゼンが性格破壊してるなあって思ってます。
    くだらない物ですが、お納め頂けましたら嬉しいです。
     
    また懲りずにリクして頂けましたら幸いです。