「雪の音がする・・・」
太乙が呟いた。
首を仰け反らせたまま、視線だけを窓へと向ける。瞳の端に、映った髪は色が薄く、
さらりと短く流れていた。
「ああ、やっぱりまた降ってる」
灰色でしかなかった外を、白い塊が過ぎって行く。
「本当に真っ白・・・っ!!」
がくりと太乙の背が撓った。ふいの衝撃をやり過ごそうと、全身を戦慄かせる。
深々と肉を抉った指は、嘲笑うように内部で折れ曲がった。本数はすぐに増やされ、
太乙がうめくのにも構わず、気ままに動き回る。
「止め、て・・・苦しい・・・」
上がってしまった呼吸の中、太乙が切れ切れに訴えた。
「お願い、師兄・・・痛・・・」
「・・・くはないだろう?」
前方が捉えられ、微かな笑みが聞こえた。太乙ははっとして体を固くした。
挿れられた指の細部まで認識出来るほど、きつう締め付けてしまう。
「ううう・・・っ」
苦鳴も、敏感なモノを弄られて途切れた。
「あっ、ああっ、あっあっあ・・・」
太乙の細い指が、伸しかかる玉鼎の背に回された。
「私に抱かれて、他の事が考えられるなど、余裕だな」
「ちが・・・違う・・・」
「何が違うのだ?」
「ああっ!」
さらに指が増やされた。
「やああ・・・もう、無理だよ・・・」
入口からぴりぴり引き攣れる痛みが襲う。ざらりと粘膜に直に擦られる事で、意思に関係
なく咥えた肉は収縮した。痛みと圧迫感、そしてむず痒いような快感に太乙は悶えた。
溺れる事を躊躇う意識があり、太乙が困惑する。自我を失い浅ましく乱れてしまうのが
怖い。
内部のある場所が強く押され、脳にびりっと刺激が走った。
「はうう・・・んっ」
瞳が大きく見開かれた。縁取る長い睫毛が切なく震えている。
「いや・・・あ・・・」
「もっと甘い言葉を囁け、太乙」
喘ぐ舌が摘まれた。
「んん・・・」
唇から唾液が流れた。頭を振って拒絶しようにも、玉鼎の指は痛いほどきつく舌を
捕まえている。
「・・・し・・・」
言いかけた事も、ただのくぐもった音にしかならない。舌が封じられていれば、抵抗も
口に出せない。
「あ・・・ん・・・」
太乙が苦しさに痙攣すると、舌だけはあっさり解放された。
「後ろも・・・や・・・」
執拗に嬲られて、苦しさと快さがないまぜになり、区別がつかなくなっていた。
「おまえの否定などいらない」
ぐっときつく抉られる。
「ああっ!」
「うつ伏せになりなさい」
「指、抜いて!」
「このままでだ。言う事を聞かなければ、もう一度抉るが?」
ひくりと太乙が反応した。
「やめ・・・て・・・」
華奢な手が、厚い玉鼎の胸を押しやる。二人が少し離れた事で薄暗い室内を照らす
燭明かりが太乙に当たり、涙が金に反射した。
「やるから・・・」
膝が曲がり、玉鼎の腕を跨ぐ。自分から内壁を刺激する行為に、顔はきつく顰められて
いた。
すっかり体が反転すると、吊り上げるように指を操り、腰を高く掲げる事が求められた。
シーツに顔を伏せて視界を閉ざし、僅かでも羞恥を押さえようと、太乙は足掻いた。
「頭は隠して、下半身だけを突き出していると、余計に淫らだな」
「言わ・・・ない・・・で・・・!」
太乙が叫んだ。
ようやく抜かれた指は、太乙の体液に塗れていた。それがつつ、と尻を辿る事で、白い
肉に濡れた軌跡が描かれた。
「んんん・・・」
「狂うほどに感じさせてやろう」
秘裂に触れたのは、熱い舌だった。
「ひゃう、んっ!」
がくがく太乙が震えた。ざらりと舐められ、指で緩められた蕾を寛げて、中をしたが
抉じ開ける。
「きゃああ、あ、・・・」
前が慰められた。前後を同時に愛撫してやると、たちまち象徴から蜜が滲み出した。
「あ、やあ、や、だ・・・」
喘ぎに啜り泣きが混ざる。腕を突っ張って前にずり上がろうとしても、すぐにベッドヘッド
へ追い詰められ、それ以上、進めなくなった。
ヘッドのパイプを握らされ、力を込めてしがみつく。逃げれなくて、ただ愛撫を受けつづける。
「ん・・・師兄の・・・師兄のでして、え・・・」
瞬間、太乙は深く貫かれた。
「はああ、あ−−−」
痛みを覚えるより早く、玉鼎を幾度も知る肉が与えられたモノに絡みついた。
「師兄、もっと、もっと満たして・・・」
太乙の腰が揺れる。
痛いと泣き叫ぶ体が、ここまで快楽を得るように仕込んだのは玉鼎だった。
だから、満足した。
大きな手が、色の薄い太乙の髪を撫ぜてから腰を掴み、激しい抽送を繰り返した。
「あああ、あ・・・」
背が脳が痺れ、快楽に意識が霞む。
「ゆ・・・き・・・」
自我が飛ぶ前に、また雪の音を聞いたような気がした。