太乙は寝台に起き上がった。
 「師兄」
  金光洞に抵抗なく入って来れるものはただ一人。だから太乙は、玉鼎が
扉を開けるのを待っていた。
 「今日はずいぶん遅いね」
  煎れたばかりの茶を差し出して、太乙は椅子を勧めた。
  玉鼎はそれを無視したいを引き寄せる。
 「久しぶりだな」
  闇色の長い髪に全身が包まれるような気がした。
 「最近、いろいろ忙しくて」
 「私を必要としないほどにか?」
 「そんなわけないじゃないか・・・っ」
  反論は遮られ、太乙は手荒く寝台に突き飛ばされた。
 「ちょっ・・・師兄!」
 「脱げ、太乙」
 「一体どうしたの? おかしいよ、今日の師兄は」
  乱暴にされたのが腹立たしく、玉鼎をきつく睨む。
 「聞こえなかったか?」
 「嫌だ」
  わずかな距離を置いて、二人は対峙した。先に動いたのは太乙だ。
玉鼎を避けて身を翻す。
  その足が止まった。揺らいだ空気が運んだのは、血と人界の匂い。
  止まらぬ戦と、多くの血が、彼を苛つかせているのか? それとも・・・。
 「怪我、してる・・・?」
 「私ではないが」
 「・・・!!」
  何時背後に回られたのかわからなかった。腕を捩られ、太乙は悲鳴を
上げる。
 「痛い!」
 「素直に言う事を聞かぬからだ」
  纏っていた夜着は何の役にも立たなかった。簡単に破り捨てられ、残骸
となって散らばる。
  絹の裂かれる音が太乙を総毛させた。
  捩られた腕はそのまま、ベッドの支柱に結わえられる。
 「やだっ! 離してよ、こんなのは嫌だ」
  聞き入れられないとわかっていても、太乙は言わずにはいられなかった。
 「今の師兄には抱かれたくない!」
 「どうやって拒むのだ?」
  返事は冷たい笑み。
  下肢が折り曲げられた。
  圧し掛かってくる玉鼎は、もはや恐怖しか太乙に与えなかった。
 「あ−−っ」
  強張った体に受け入れるのは辛すぎた。激痛に仰け反り、見開かれた
瞳からは涙が溢れた。
  衝撃は一度では済まずに繰り返され、太乙の息は絶え絶えになった。
 「ひ・・・く、うう、」
  震え戦く度に、内壁が収縮して、苦しみが増す。
 「や、もうやだ・・・」
  涙混じりの声で訴える。視界はぼやけて玉鼎がどんな表情をしているか
わからなかった。
  揺すぶられる全身はシーツに打ちつけられ、酔ったように頭がぐらりとする。
  無情に、欲望を満たす為だけの道具と同じに扱われて、悲しみが湧く。
 「苦しい・・・お願いだから!」
  玉鼎が汗で貼りついた色の薄い髪に触れる。
 「ああ・・・」
  額にある指がひんやり感じられた。
 「だが、拒んではいない、おまえは」
 「はうっ」
  前方を握られた。前立腺を刺激される事で立ち上がっていたモノが扱か
れる。
 「あっ、あっ、あっ」
 「そうだろう?」
 「師兄、何故・・・?」
  苦しくて、堪らなくて・・・。
 「私では師兄の、役には立たない?」
  ぐいと酷く突き上げられた。脳天を突き抜けるほどの苦痛が全身に襲い
かかる。
 「ああ!」
 「おまえはただ抱かれていればいい」
 「そんなの私は望まない!」
  痛みに歯を食いしばりながら、太乙は玉鼎を見つめた。
 「今は庇われるばかりでも、私は師兄と並び立てるようになりたいんだ」
  太乙がもう一度願った。
 「手、解いて欲しい。私は師兄を抱きしめて、抱かれたい」
  解かれた腕で太乙はしがみついた。
 「人界に下りたら、傷つくのはわかってる。特に師兄が来られた西の大地が
酷い事も。だから・・・私でも・・・」
 「太乙・・・悪かった」
 「もう、いよ」
  ふふ、と太乙は笑った。痛みに引き攣れた笑いだった。
 「欲しいよ、もっと」
 「・・・太乙」

  閉じられた空気がとろりと澱んだ。

  だから何だといわれても、はうっ。
  No.16666のきり番で、零羅様からリク頂きました。
  玉乙裏で、ハード目で、がテーマです。
  ちょっと腰砕けな感じになってしまいましたが、太乙はただ抱かれる
  だけより、どこか強さがあって欲しいと思ってしまうのです。
  
  また懲りずにリク頂けましたら嬉しいです。