それから、寒椿の続きです。
「なっ・・・!」
ふいに襲いかかってきた凄まじい重圧に耐え切れず、楊ゼンの膝が折れた。大気が
ぐにゃりと湾曲している。
地に倒れると、圧迫は胸に圧し掛かり、呼吸さえ苦しくなってしまう。喉が掠れた音を
立てた。
楊ゼンは知っている。この性質の宝貝を使う者を。
意識がくらみ、急速に翳った視界に空色の髪が映った。
「君にだけ効果があるように仕掛けたんだ」
普賢がすたすた歩いてきて、楊ゼンの前に膝を付いた。
「久しぶりだね。こんにちは。地上には慣れた?」
瞳を朦朧とさせている楊ゼンの頬を叩き、失いかけている意識を醒まさせる。
「気絶なんてしないでよね。つまらないから。少し緩めてあげたらすっきりする?」
くすりと笑んで、普賢は膝に抱えた宝貝に指を走らせた。
楽にはなったものの、起き上がって抵抗出来るほどではなくて、普賢の意図がわからず、
青い瞳が不安げに揺れた。
これまで何度も手酷い目にあわされただけに、優しく笑む彼が怖い。まさか地上にまで
やってくるとは。
「何を心配してるの? 僕は君を犯ったりしてないでしょ?」
打たれたばかりの頬がきゅっと抓られた。
「ね?」
楊ゼンを転がし、伏せさせた体から手首を捩り、後ろにきつく縛める。
「僕の頼みきいてくれる? そうしたらこの前の写真、返してあげるからv」
「・・・・・」
「君は逆らえない。嫌なら、玉鼎師兄に送りつけちゃうだけだもの。宝貝止めるから・・・
立って」
空気が鳴って、普賢が巡らせていた重力圧が消えうせた。
「聞こえなかった? 立ち上がって、木立の奥に行きなさい。炭を焼く為の小屋があるでしょ?
春になったから、今は使われていないけど、そこに望ちゃんがいる」
首筋にぴたりとナイフが当てられた。
「望ちゃんは、僕の大切な友達だから、僕の玩具を紹介したくて」


普賢が扉を開けて中を覗いた。
「待った? 色々手間取ってしまって」
「おぬしが下に降りてくるなど珍しいのう」
床に座り込んだ太公望の回りには既に酒や菓子が広げられていた。
「ふふ。望ちゃんに会いたくて」
近くにあった棗の皿から一粒摘み、口に放りこんで、普賢は微笑んだ。
「ん? 他に誰かおるのか?」
太公望の問いに普賢はくるりと背を向けた。扉の陰になっていて見えなかった場所から楊ゼンを
引き寄せる。
「・・・楊ゼンではないか。おぬし達は何時から知り合いだったのだ?」
「崑崙にいる時からだよ。僕とよく遊んでくれたんだ」
「おぬしが遊んだ、だろうが。楊ゼンの性格では気が合うはずもない」
「意地悪だなあ。望ちゃんも交ぜて遊ぼうと思ってたのに」
唇を尖らせて、軽く太公望を睨む。腹いせにか、楊ゼンをきつく中へと突き飛ばした。
「普賢!」
「この子は酷くされて感じるんだよ」
髪を掴んで顔を上げさせ、ねえ、と同意を求める。腕を拘束されているので庇う事も出来ずに
体を床にぶつけ、苦痛を浮かべていた楊ゼンが反応した。
「はい・・・」
「楊ゼン、おぬし・・・」
「ちゃんと言わないと、望ちゃんかえって心配しちゃうじゃないか」
楊ゼンの肩に腕を回し、後ろから抱きしめる。
「望ちゃんは優しいから、君が嫌がってるって思ってるかも。いいの? それで」
さりげなく胸元から指が襟の中に潜り、乳首を捻りあげて楊ゼンだけに聞こえるよう、囁く。
「君の秘密、ばらしちゃおうか?」
「や・・・っ、普賢様・・・」
楊ゼンが頭を振った。
「止めよ、普賢。楊ゼンを離してやれ」
「いえ、師叔・・・僕を・・・抱いて・・・」
「僕が無理強いしてないってわかった? 望ちゃんが楊ゼンの事気にしてるの知ったから、
この子に教えてあげたら、抱かれたいって」
とん、と楊ゼンの背を押す。
「本当か、楊ゼン・・・」
海の青をした瞳が伏せられて肯定した。
「じゃあ服脱がないとね。手、解いてあげる。縛られてたりするのも、趣味なんだよ」
手際よく楊ゼンから全てを剥がしてしまうと、改めて太公望に委ねた。
「ここには水がないね。僕、汲んでくるから」
二人に軽くキスをして、普賢が出ていった。
彼が戻るまでに抱かれていなければ・・・と楊ゼンは体を強張らせた。彼は容赦という事を知らない。
・・・そして、楊ゼンの一番大切な人に、あのように惨めで淫らな自分を見せるわけにはいかないのだ!
「して・・・くれないのですか?」
楊ゼンがわざと憂いを含ませて、太公望を見つめた。
「師叔・・・」
「・・・わかった」
まだ信じられない思いだったが、尚も楊ゼンが誘ってくるのに加え、纏っていた酒精が理性を
飛ばさせた。
「望み通り、酷くだな・・・」
太公望が圧し掛かってきた時、きつく閉じられた楊ゼンの目から、一筋涙が流れた。

投票所企画3月分です。
全然テーマクリアならず・・・。すいません!私、太公望で強姦なんて
とても無理です。彼はいい人っぽいイメージがあるので、ただ望楊という指定
だったらもっと書けたかも、なのです。しかもこれ普楊っぽいし。はうううう。

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