楊ゼンはすやすやと眠っていた。半ばうつぶせに、大きな枕を抱きしめている。
閉じられた瞳を縁取る睫毛に未だ涙が残っているのに気づいて、玉鼎はそっと
拭ってやった。
あどけない顔が苦悶に歪められたのはつい先刻。与えられる理不尽な痛みに
泣き叫んだのだ。
痛み、そう、楊ゼンにとって、愛を交じあわせる行為はただの痛みだった。快楽を
極めさせても、矜持の高い魂は受け入れる事を否定する。
意識を失った時だけが安らげるかのように、寛いで眠る楊ゼンに、玉鼎は言いよう
のない怒りを覚えた。
成人しきっていない楊ゼンの、柔らかな曲線を描く頬に指を這わせる。
「おまえを狂わせてみたい・・・楊ゼン」
見下ろす楊ゼンはあまりにも無防備だった。例え警戒していても、この小柄な体は
玉鼎に敵う訳もなく、簡単に捩じ伏せられてしまうのだが。だからするだけ無駄なの
かもしれない。
しかし、そうして力ずくで手に入れられるのは体だけだった。組み敷き、熱く貫いて
も、心は頑なに抱かれる事を拒む。
玉鼎は心から求めて欲しいと願うのに。
つと玉鼎が立ち上がった。まっすぐ部屋の隅に置かれている棚に近づく。少量の
竹管と様々な箱や瓶がそこには並べられていた。
海の色をした瓶を玉鼎は選んだ。中には親指ほどの大きさなカプセルが一つ入って
いた。
楊ゼンに、と作り、今まで使わなかった物。掌に取り出してみると、それもまた、薄い
青をしていた。
眠り続ける楊ゼンを振り返る。躊躇するような色が玉鼎の瞳に揺れたが、カプセルは
手にしたまま、ベッドへと戻った。
「・・・楊ゼン」
上に羽織るブランケットを外すと、着物を着けていない白い肌が現れた。玉鼎が
足首を掴み、ごろりと仰向けにさせる。弛緩した脚を大きく開かせ、思うさま蹂躙
した蕾を探った。
「ん・・・」
微かな声が漏れたが、覚醒までには至らなかったようだ。
「おまえを愛している」
言いながら・・・カプセルを秘口に押し込んだ。指の届く限り奥まで入れても、深さは
足りなかった。内部であればあるほど、効力を発揮する種類の物なのだ。
ぐっとさらに脚を広げる。普段の慎みを取り戻しきれていない楊ゼンに、道服から
出したモノを当て−−−一息に貫いた。
「うううっ!!!」
楊ゼンが強張った。
意識は無くても、脳は痛みを知る。体を裂く激痛に青い瞳がかっと見開かれた。
何が起こっているか瞬時に理解出来ず、ぼんやり玉鼎を見つめる。
「まだはっきりしないようだな」
きつく玉鼎が突き上げた。
「は、あうう・・・」
頭が仰け反り、露になった首に、玉鼎が噛み付くような接吻をした。
「・・・師、匠、あ、まさか・・・」
「そうだ。おまえを抱いている」
「どうしてっ!」
掠れた叫びを楊ゼンが放った。泣き叫んだ喉が苦しい。
「私がまだ満足していないからだ」
「いやあっ」
「拒絶もすぐに言えなくなる」
容赦なく揺すぶられ、痛みに楊ゼンは身悶えた。溢れた涙がシーツに吸われていく。
「・・・くっ」
玉鼎が低くうめき、精を叩きつけた。
「あ−−・・・!」
敏感な腸壁がその熱さとともに受け止める。
ずるりと引き出されたまま、楊ゼンは動く事が出来なかった。
疲労に包まれているのに、痛みが去らないせいで、安らげない。未だ異物を咥えて
いるような感覚まである。
「うっ・・・え・・・え・・・」
すすり泣く体が丸められた。
そんな楊ゼンの髪を撫ぜ、玉鼎がベッドの縁に掛けた。これから起こる事を知っている
から・・・。カプセルは体内の熱で溶け、液体は神経に浸透していく。
効き目はすぐに広がるだろう。
玉鼎は泣き続ける楊ゼンに触れながら、ただ待った。
・・・ぴく、と小さな体が反応した。
「え・・・?」
爆発にも似た衝撃が身の内で起こったのだ。余波を伴って、むず痒く楊ゼンを刺激する。
「あああ・・・」
全身が粟立った。とてもじっと横たわっていられず、シーツを握って体を捩る。脚の間
から覗いたモノは切なく立ち上がっていた。
「どうした?」
変らず玉鼎の手は楊ゼンを撫ぜている。
「わか・・・りま、せん。あ、ああうっ!」
青い精がシーツに飛び散った。
「すいぶんはしたない事をする」
楊ゼンがかっと羞恥に赤く染まった。
「や・・・やあ、どうして・・・」
握りしめた指がぶるぶる震えている。体を硬直させ、燃えるような熱を押さえようとして
叶わず、再びソレは頭を擡げ出した。
「止めて、おかしい、僕・・・」
「当然の結果だ。おかしい事などない」
「師匠・・・!」
くくっと冷たい笑みが玉鼎から漏れた。
「おまえがどこまで堪えられるか見物だ。その高いプライドが砕ける様を確認してやろう」
「そんな・・・ああうううっ!!」
玉鼎が苦しむ楊ゼンの顔を上げさせた。
「お、あえを愛しているから・・・体でけではなく心が欲しいのだ」
暗い炎が垣間見えたようで、楊ゼンは体を震わせた。

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