背後から手を掴まれて壁に押し付けられた。夜の冷気を吸った家屋の木肌はひんやりと
泰明の掌を冷やした。
しかし、それを感じる余裕は泰明にはなかった。
屈辱に赤く染まる頬。吐き出す吐息はその熱を移し、大気を染めた。
「怯えているのがわかる」
耳元へ近づけられた唇から囁きが注がれた。
剥き出しの項にさらりと触れてくる髪が、緩い波となって泰明の背にまで落ちる。
月と星を抱く、夜の空の色。漆黒というには青みがかる神は、泰明の物よりも柔らかかった。
「ほら、震えている」
言われて泰明は唇を噛んだ。
隠そうとしても膝は体を差支えるだけで精一杯で、壁についた手に縋っても、不自然な揺れを
止める事は出来なかった。
「可哀想だけど、君が悪いのだから、・・・ね?」
捲り上げた着物の裾が垂れないよう、帯に挟み込む。
差し込む月明かりに白い肌が晒された。人にしては色の薄い皮膚はまるで内側から発光している
かのようだ。
「苦し、い・・・」
泰明が喘いだ。
優しく撫ぜられていた腰の下、ふっくらと肉付いた臀部の狭間を押し広げ、異物が顔を覗かせて
いた。
ずいぶん長い間咥えさせられているのだろうか、周囲の皮膚は常の穏やかな色合いと異なり、
真っ赤になっていた。
引き伸ばされると最初は白く色を失う。さらに刺激が続けられると、こうして充血してくるのだ。
ぴったりと閉じ合わせされているはずのそこは、今では幼子の腕ほどの物によって、無理やり広げ
られていた。
「何時までも入れておかなければいけないのは君のせい。これで達ってしまえば、すぐに抜いて
あげる、と私は言ったはずだが」
友雅が突き出ている物を握り、内部を抉った。
「ひ・・・っ!」
擦れた悲鳴を泰明が上げた。
「いい顔だ」
敏感な粘膜を容赦なく責め立てられる苦痛に歪む顔を、顎に手を掛ける事で振り向かせる。
「この表情が、私は好きだよ・・・さあ」
尚も掻き回されて、解放せよと促された。
「達け・・・ぬ・・・」
泰明が呻いた。
「ああ・・・友雅、止め・・・」
「では、これから覚えていけ」
壁に凭れかかっていた体を友雅は引き離した。いきなりの事にバランスを取りきれなかった泰明
がよろめいた隙に、帯を奪い着物を剥ぐ。
袴は既に奪われていた。単と合わせが腕から抜けてしまうと、簡単に泰明は衣全てを無くした事に
なる。
驚いて蹲りかけた泰明の動きは即座に阻まれた。いったん離れた友雅の手が、瞬時に手首を
掴んでいたのだ。
友雅は片手で泰明の両手首を一まとめに掴み直すと、泰明から奪った帯を巻きつけた。
顔を背けていた泰明は、自分の手首に絡まる物に視線を戻した。
「や・・・縛る、なっ」
クルクルと巻かれた帯は既に固く結ばれていた。泰明は後退さったが、帯を握っている友雅との距離
は変わらない。
「嫌ならきちんと抵抗しなさい」
楽しげに微笑し、友雅が余った両端を泰明の首の後ろへ回した。
「尤も、君のように非力では私に簡単に捻じ伏せられるだけだ」
逃げ口を封じる言葉。
友雅の行動の意味に気づいた時には、遅かった。くっついた両手首が喉元ぎりぎりまで引き寄せられた
状態で帯が首の後ろで結ばれたのだ。
目と鼻の先に自分の両手が見えているのに、その手を泰明は動かせないのだ。そればかりか、頭を
反らせていないと顔に手が当たってしまうので、自然と顎が上がる。
震える肩を掴んだ友雅が泰明を引き倒した。
「あああっ」
床に崩れた衝撃に咥えた物が振動した。
「それでは、達けないのだろう?」
仰向けに押さえつけた姿で膝を立てさせ、ずるりと異物を抜き取る。
「んん・・・あ・・・」
入れられる時に絡められた香油が、耳を覆いたくなるほど淫らな音を発した。
「友雅・・・」
切なく立ち上がっている泰明のモノがやんわりと掌に包まれた。
脳に突き刺さる快感に泰明がくっと眉間を寄せる。唇からは期待に満ちた喘ぎが漏れた。
しかし、友雅はそこを愛撫する事なく手を離してしまった。
「どうして・・・っ」
「私は後ろで達きなさいと言った。ここを弄れば意味がないだろう?」
「でも・・・苦し・・・」
くっと身を傾げた友雅が、熱い頬に口付ける。
「どうしたい?」
理性による羞恥と、うねる体の欲求の責め合いに葛藤する泰明が、切れ切れに哀願を紡いだ。
「奥に・・・友雅、達かせて・・・」
「いいだろう」
脚が抱え上げられ、泰明は深く貫かれた。
「生身がよほど欲しかったか? あまり締め付けるな」
「んくっ!」
つんと尖った乳首を指で弾くと、華奢な体が反り返った。
「矜持は高いのに、身体だけは貪欲に淫らになっていく。意識を体に委ねてしまえば、これほど楽な事は
ないのにも関わらず」
膝が胸につくほど折り曲げさせると、より深くまで到達されて泰明の瞳が見開かれた。
「そこが、好きなのだが」
汗で貼りついた前髪を掻上げてやる。
白い肌は内から滲む上気した血の色で、薄紅に変じていた。縛められた指先が、何かを求めるように
戦慄いて・・・握り締められた。

2周年アンケート物 遙か1編  友雅×泰明で鬼畜系でした。
遙か2編の方がテーマ的に難しいのですが、頑張って書きますね。翡翠×泰継自体が初めてです。
どうなるかしら。
・・・タイトルが思いつきませんでした。