「この方はこういう事をされるのが好きなのです。態度や言葉で拒んでも、上辺だけ」
白い永泉の指が泰明の服を緩めていく。
「ほら、もう桜色に上気し始めて・・・きれいだと思いませんか?」
現れた乳首をびんっと弾くと、押さえつけている体が反り返った。
「こんなに感度も良くて、ね。本当に21にもおなりとは考えられません。子供のように
素直に反応してくるのですから」
朦朧とした意識の中、血のように赤い永泉の唇が言葉を紡ぐのを、泰明はぼんやり
見つめていた。
”ああ、色が白いから余計に際立つのか・・・”
出家した身では外に出る事もあまりないのだろう。
「・・・彼はどうされたのですか?」
泰明を抱えた永泉の前に、今一人別の人間がいた。
「さあ・・・ふふっ、おかしいでしょうか」
上衣をすっかり肌蹴させ、袖を残すだけに脱がせた手が下肢に降りた。
「何もおっしゃいませんし、瞳も・・・何時もはもっと毅然としていらっしゃる」
「泰明殿、喋って差し上げたらいかがです? 鷹通殿は声が聞きたいようですよ?」
さりげなく胸元を覆った永泉の着物の袖から覗いた指爪が乳首に食い込み、言葉を
強要する。
神経の集まる胸を弄られて、痛みがきりきりと突き刺さった。
「う・・・、あ・・・」
呂律が回らない。舌が凍り、意味のある音を醸し出せない。
何故だ・・・泰明は頭を動かした。それだけの事がとてつもなくだるかった。
永泉の背後に、香炉が一つ置かれていた。甘い香りが立ち昇っている。香りを意識
すると、またくらりと眩暈がした。
香が原因なのか・・・? ならば何故この二人は平気なのだ・・・。
爪がさらに苦痛を与えてきたが、泰明は永泉の望む事は出来なかった。
「どうにも・・・・お喋りはしたくないようです。夜になると、抱いてくれる方を欲しがる
ので、気がそちらにばかり向いているのでしょう。とても、淫らなのですよ、泰明殿は」
嘘だ!
叫びたくとも唇からはうめきに近い雑音しか漏れない。着衣全てを奪おうとしてくる
永泉から逃れようと、鉛を埋め込まれたような体を泰明は必死に動かした。
「素直ではないですね。折角私があなたに挿れてくれるお相手を探してきて差し上げた
のに」
唇を軽く尖らせ、永泉が泰明を睨んだ。
意思のままに動けない泰明の抵抗を易々と封じ込め、くるくると着物を脱がせてしまった。
内から光を放つかのような肌が隠す所なく剥き出しにされてしまう。
羞恥に染まる体から腿の下に手を通し、ぐっと曲げて広げさせた。奥まった場所を
鷹通に見せるように。
萎えたモノ、小ぶりに震える双果から、可憐に窄まる秘所までが薄明るい燭明かりに
晒された。
「・・・お願い出来ますか? 鷹通殿。私では彼を満足させられないのです。泰明殿は
挿入されて悦びを知る方ですから・・・」
「や・・・」
「ここへ」
指が秘所に触れる。既に男を知るそこが、ひくりと蠢いた。
「見られるだけで、涎でも垂らすように欲しがって・・・。まだ何もされていないというのに」
嘲笑が聞こえ、一本目が潜り込んできた。
「う・・・っ、!」
泰明の眉間が顰められた。淫靡にくちゅくちゅと音を立てて、永泉の指が出入りを繰り
返す。
膝を揃えて座している鷹通の視線が注がれている。その瞳はあくまで冷静で、観察者の
目を窺わせた。
「さあ、鷹通殿」
三本に増やした指で自在に泰明を嬲りながら、永泉が差し招いた。
「鷹通殿・・・。地の玄武を助けてあげて下さい」
哀れみを誘うよう、なるべく悲痛さを込めて。心優しい鷹通を罠に嵌めていく。
再度促されて、鷹通が立ち上がった。惨めに全裸の姿を晒す泰明の前に膝をつき、消え
入りたい羞恥に隠れる事も出来ない頬に手を這わせた。
「熱いですね。幼子のように高い体温をお持ちとは・・・」
「期待しているのですよ」
永泉が鷹通の肩を引き寄せた。唇が耳元に寄せられ、呪文にも似た言葉が囁かれた。
「お任せします。挿れて・・・下さい。この欲しがっている場所に」
「・・・わかりました。これが、泰明殿の為なのですね?」
「ええ」
にっこり永泉は笑んだ。
泰明を渡した永泉は、後ろに下がり、香炉を取った。蓋を被せて煙を消す。優しげな笑みを
はく顔から、一瞬だけ凍りつくような色が覗いた。
泰明の自由を奪ったのは、彼自身が思った通り、この香だった。解毒剤を、鷹通には
茶に混ぜて飲ませ、作成者の永泉は免疫がある。
先日来、泰明が異常に薬に脆い事はわかっていた。人ならば当然持っている抵抗力が
ない。茜にもらせた時も、あそこまで効果があるとは思っていなかったのだ。
「あ、あ、ああ・・・」
痛みを苦しさをない混ぜにした泰明のうめきに、永泉は振り返った。四つん這いにさせ
られた体に、鷹通が圧し掛かっている。
乱れた髪が広がっていた。背に汗が伝い、苦悶が窺われた。突かれる度に全身を小刻みに
震わせ、衝撃をやりすごす為か、細い顎が反り返る。
「何を苦しまれているのですか?」
頬を挟み、ついと上向かせて、涙を滲ませている泰明に接吻した。
「気持良いはずなのに。・・・比べる対象がないのがいけないかも知れませんね。一度
女性の味を知ってみますか?」
出家した者とはとても思えぬ事を、平然と永泉は口にする。
「鷹通殿・・・前に触れてみて下さい」
初めて男を相手にしたのであろう、ぎこちなく抽送を繰り返す鷹通の手を導き、泰明の
股間を握らせる。
「これ、は・・・」
「感じている証拠ですよ。ね? 遠慮などいらないのです。もっと酷くしても、構わない
くらい」
立ち上がり、切なく雫を垂らせて震える泰明のモノを、握った鷹通の手ごと包み、永泉が
愛撫した。
「ん・・・んんっ、くう・・・」
香が薄れたか、泰明の声が明瞭さを帯び出した。
「達かせはしません、まだ」
喘ぐ唇に、ぴたりと指を当てる。
「私の中で・・・」
床に突っ伏しかけている泰明をぐいと引き上げた。出来た体の隙間に永泉が潜り込む。
「それを、私に挿れて下さい。鷹通殿」
白い脚が捲れた法衣から覗き、鷹通に絡められた。
「私もまぜて下さっても良いでしょう?」
伸ばされた腕が、二人を抱きしめる。
「皆で楽しみましょうね・・・」
自身から腰を突き上げ、永泉が泰明を迎え入れた。
「はっ、ああ・・・」
嫌々と首が振られる。色の違う二つの瞳から、涙が流れた。


夜が白々と明けていく。
鷹通を帰し、二人きりになった部屋で、永泉が解いた泰明の髪を梳いていた。
「満ち足りましたか?」
もはや逆らう力すら残ってはいず、されるがままに・・・。

うーーん、何だかわからないです・・・。鷹通を巻き込んでみたかったのですが、
彼もどちらかといえば受け派ですよね・・・。難しい。