泰明は途方にくれてしまった。
可さから探している物が見つからないのだ。この時期は一番の盛りだというのに。
左京の市を外れまで歩ききってしまうと、悲しくなった。
毎日当たり前のように目にしていた物。何故今日に限って手に入れる事が出来ない
のだろうか。
襟の合わせに大事に差してある布袋を泰明はそっと押さえた。確かな感触に安堵の
息を吐く。この日の溜めた銅銭が入っているのだ。
未だ身分なく、仕え事もしていない泰明には、こまごまとした些事で貰う駄賃だけが
収入で、僅かな量しか集められなかった。
それでも一年を掛けた。腕に抱えるくらいは買えたはずだ。夏に咲く百合。薄暗い
室内にあってもあの花の色は華やいだ光になるだろう。
市を抜けてしまった泰明は俯いた。
いくら想像しても百合の花は存在しない。明日にあればまた山から届けられるだろうが、
今日でなければ意味がないのだ。
花を、という気持ちは変わらないので、泰明は違う物で諦める事にした。
淡いピンクの薔薇の花。特に気に入ったわけではなく、ただ、引き返した最初の店で一番
多かったからという理由で泰明はそれを選んだ。


仁和寺の門を潜り、広大な敷地を歩いていく間に泰明の瞳が信じられないと見開か
れた。
周囲に漂う高貴な香り。これは泰明があれほどまでに求めた花の物だ。
「おまえだったのか・・・」
観音像の奉られた祈りの場一面に敷かれた百合の中に永泉は座っていた。
「見事でしょう? 星供養の為に用意しました」
永泉がゆっくりと振り返った。
「私がどうかしましたか?」
「・・・何でもない」
「それは私にでしょうか」
泰明の腕にある薔薇を指し、嬉しそうに永泉が笑んだ。
「ああ・・・だが、ここにはそぐわぬな」
「何故? 構いませんよ」
立ち上がった永泉が泰明の腕を引いた。
ばらばらと花が床に落ちる。
「永泉・・・」
「ほら。薄紅色も見事です」
「だが、私はこの百合を贈りたかったのだ」
「それは・・・」
永泉は軽く背伸びをして泰明に口付けた。満ちる花と同じくらい甘い吐息が流し込まれた。
「ありがとうございます」
花を踏みつけぬように今まで自分が座っていた場所に泰明を導いた。ここが花の海の中心
だった。
されるがままになっていた泰明だったが、永泉が抱きついてきた時にはそれを拒んだ。
「止めろ、こんな所で」
「ここは私個人の祈りの場。誰もいないし、誰も来ない・・・」
「仏がいる」
永泉が楽しそうな表情をして、小首をちらと傾げた。
「ではあなたを供物として」
優しい笑みを刻む唇が言葉を綴った。
「服を脱いで、座って下さい」
そっと見上げた泰明の顔は強張っていた。永泉の元に自ら訪れたのだ。される事など
わかっているはずなのに、怯えているのがおかしくもあり、愛しかった。
「あまりひどい事はしないでくれ・・・」
「さあ、それは泰明殿次第です」
着物を落として正座した泰明の腿を開かせ、永泉は小さく竦んでいるモノを掌に収めた。
「ん・・・」
転がしながら扱かれ、切なく泰明がうめいた。
「これ、冷たいですね。お体の内はとても熱いのに」
永泉が百合の花芯を引き抜いた。
「何故でしょうね。同じ泰明殿なのに」
構える間を泰明に与えず、永泉はそれを小さな先端に差し込んだ。
「あぁ−−−!」
「痛いですか? でも小さすぎる泰明殿もお悪いのですよ?」
微笑みを永泉は浮かべた。
「少しずつ太い物を入れて広げていきましょうか」
「馬鹿な、事を・・・っ! ああ、痛っ、動かすなあ・・・っ」
「どこがおかしいのですか?」
くるくると回転させる度に泰明が息を詰めた。
「人の体は柔らかいのです。特にここは妨げる骨もない。広げれば私の指も飲み込む
でしょう」
青ざめた泰明が首を振った。永泉なら本気でやりかねないと思ったからだ。
「でも・・・そうしてしまえば、泰明殿のここはお行儀が悪くなってしまいますね。簡単に
お漏らしをしてしまったり」
再び永泉が接吻してきた。
「今も気を緩めると出てしまうのでは?」
より一層深くに花は挿入された。
「嫌、嫌だっ! 永泉!」
下肢に力が入らず、がくがくと泰明は震えた。
「私はどのうような事をされる泰明殿でも愛して差し上げられる」
貫いたまま、永泉は竦んでいる泰明を握った。
「離せっ!」
尿道への刺激が続けられれば、本当に出してしまいそうだ。その羞恥に怯え、泰明は
永泉から逃れようと身悶えた。
「花をお持ち下さったのは、今日が私の誕生日だからでしょう?」
ふわりと永泉が抱きついた。
「・・・そうだ」
身の内に抱える熱に泰明は唇を噛み締めた。
「嬉しいです。大好きですよ、泰明殿」
言いながら永泉は泰明を掌に包み、逆の手で下腹を圧迫した。
「ああああっ!」
叫びが上がった瞬間、突き刺した花芯を勢い良く引き抜く。
ひどい眩暈を感じた泰明は意識を霞ませた。

去年よりは泰明が素直な分、大人しいでしょうか。
永泉誕生日記念です。これは遅れずにUP出来て良かったです。