永泉の柔らかな掌が泰明のモノを包んだ。それは背後から加えられる刺激に、切なく立ちあがってしまっている。
「ねえ、泰明殿」
突然永泉が、泰明の腰を横から押し、華奢な体を転がした。
「うううっ!!」
体内にある器具が肉に食い込み、痛々しいうめきが漏れた。狭い内部いっぱいに満ちた異物は、その理不尽な扱いに堪えられなかった。
治りきっていない傷が、泰明の痛みをより増した。
「・・・すいません。抜くのが先ですね」
にっこり笑った永泉は、突き出た部分に手を掛けた。そのまま引き抜こうとすると、泰明のうめきが押し殺した悲鳴に変わる。
「ああ・・・。広げたままでした」
故意にか否か。笑みを消さずに永泉は器具の捩子を操作した。
圧迫が治まり、泰明が軽く息を吐いた。
「そう。ゆっくり落ち着かれて下さい。今、外して差し上げますから」
言いざま、一息に引き抜く。粘膜を激しく擦られた泰明が苦しみに大きく撓った。
「楽になりましたか?」
身を屈めた永泉が、そこに接吻した。
安堵を覚える間もなく、新たに責められる予感に泰明の瞳が翳った。
「あ・・・」
泰明がぴくりと震えた。舌で舐め上げられると、その震えは大きくなった。
「いささか小ぶりですが・・・泰明殿だというだけで、私の体は熱くなってしまいます・・・」
「・・・触るな」
荒い息をつきながら、泰明が永泉を拒んだ。
「何故?」
「誰がおまえなどと・・・」
「では、どなたならよろしいのですか?」
瞬間、永泉が口付けていたモノに歯を立てた。
「止め・・・っ!!」
「これを宥めるのに、まさかご自身で、という事はないでしょう?」
また、ともし火を灯すような愛撫が始まった。
昇り詰める事を許さない、動き。
焦りにも似たじれったさと、波打つ熱い奔流に全身を満たされて泰明の顔が苦悶に歪む。
「永泉、え・・・い・・・」
熱に浮かされた呟きが漏れた。何を言いたいか、泰明自身わからない。制止を言う事もなく、ただ永泉の名を呼ぶ。
「達きたければ、私の中で。さあ」
冷たい指先が泰明の胸を這い、小柄な体が乗り上げてくる。
紅を引いたように赤い唇が泰明を誘う言葉を紡ぐ。
「それとも、私が上になった方が良いですか?」
秘めやかな笑みが室内に響いた。
香を焚き染めた永泉の衣がばさりと翻った。長い裾を幾重にも重ねた着物なのに、絹で織られたそれは、驚くほど軽くなびいた。
帯を緩め、下肢を寛げた永泉がじっと泰明を見下ろした。
「泰明殿から、私を愛して頂きたいのに」
「う・・・!」
泰明は高ぶった場所に圧迫を感じた。
「嫌だ・・・」
永泉を押しのけようとする手は、意思を裏切り力が入らなかった。小刻みに震え、袖を掴むだけで・・・。
「抵抗しているつもりですか?」
細い指を取り上げ、永泉が接吻した。
「可愛らしいですね」
永泉は言いながら・・・腰を落とした。
「あああ−−−!」
体の最も敏感な場所に異様な感触を受け、泰明が叫んだ。
濡れて纏わりつき、蠢いて締めつけてくる。
泰明のモノを根元まで受け入れた永泉が身体を動かし始めた。
「ん・・・ん・・・」
薄い泰明の胸に手をついて腰をグラインドさせ、深く貪り味わう。
「思っていた通り・・・あ・・・あ・・・」
うっとりした永泉の声も泰明には届いていなかった。苦しさの中に背筋を突き抜けるような快感がある事に気づいて、それが未知の感覚であったが為に、ひどく混乱していたのだ。
傷ついた秘所を嬲られた余韻を残す後孔と、前方から加えられる快感が泰明の中をせめぎあい、駆け巡る。
頭が霞み、思考を働かせようとする意識が溶けていった。
涙で潤んだ瞳に永泉の仰け反った喉が見えた。紫紺の髪が乱れ舞っている。
伝う汗の雫がきらりと差し込む光を受けた。
「私に触れて下さい・・・」
永泉が泰明の手首を掴み、自身へと導いた。
「泰明殿・・・」
意思をなくした泰明は言われるまま、永泉を包んだ。
「あ、あ、あ・・・」
うめきとも喘ぎともつかない音を唇から迸らせ、永泉が達った。同じによりきつく締め上げられた泰明も、どくんと迸らせていた。


「すごく、良かったです」
丁寧に泰明の汗を拭った永泉が、ふわりと着物を纏わせた。
「私は・・・」
「晴明殿にも、誰にも言いませんから」
紫を帯びた瞳がひたと泰明を見据え、心を読んだかのように言った。
「その傷の、原因なのでしょう?」
「永泉・・・」
「起こった事全て、私と泰明殿だけの秘密です。お体もきれいにして差し上げましたから、痕跡などありませんよ。・・・尤も」
指が目元に触れ、反射的に泰明が身を強張らせた。
「こんなに、潤んだ目と赤い顔をしていらっしゃれば、ばれてしまいますね」
狼狽する泰明に永泉が笑いかける。
「落ち着かれるまでここで休んで行かれれば良いでしょう」
ふっと永泉が首を傾げた。
「ね、泰明殿。今何かお口にされる物でも用意しますから」
楽しそうに、本当に楽しそうに永泉は笑った。

結局黒く終わる・・・。私に白永泉は無理だったようです。