縛られ、床に転がされている泰明を見ても、客人達はさして驚いた様子ではなかった。
「中秋の月満ちる夜のお招き、ありがとうございます」
永泉は膝をつき、丁寧に頭を下げた。反対に友雅は軽く礼をしただけだ。
窓は大きく開かれ、縁から庭まで全てが開放されている。降り注ぐ月光は眩しいほどで、
燭が失われてもさして困りはしないだろう。
「今宵の肴は泰明殿かな?」
設えられた座に友雅がゆったり胡座した。
「さて、肴と呼べるほどの価値があると良いが。ずいぶん惚けてしまっている故」
晴明の唇が杯を傾けながら薄く吊り上った。
いざり近付いた永泉が泰明をうつぶせに返させる。乱れた髪を脇に流してやると、白い
背から臀部までが露になった。
「お可哀想に。切れてしまっていますね」
すいと法衣を纏った身を屈め、舌で泰明の秘所に触れる。
「ん・・・」
泰明が身じろいだ。動けば縄が華奢な作りの体に食い込む。逃げる事など出来るはずも
ないのに、意識がはっきりしないまま、儚い抵抗が起こり始めた。
「手伝おうか?」
「ええ、お願いします。友雅殿」
友雅が肩を押さえつけた事で、味わいやすくなった場所から、永泉は流れる血を舐め取った。
「・・・甘い味がします。これは晴明殿がそうされたのですか?」
「何の話だ?」
「さあ」
永泉に言葉を続ける気はないようだった。


違った角度から伸びてくる複数の手指が泰明を嬲っていた。細い体は全身で拒絶を示し
ながらも、無数に散る性感帯に触れられる度、びくびく反応した。
「もう少し楽しめる方法はないものか。人形のようでいささかつまらない」
月を愛で、会話を交わしていたのがふと途切れた時に友雅が言った。長い指が乳首を摘んだ。
散々弄られたそこは、擦り切れるほどに痛ましく形を変えて、腫れていた。
「では泰明を正気づかせようか」
晴明が飾られていた秋花−桔梗−を一輪手にした。
「何をなさいますか?」
「さて」
今度は晴明が言葉を濁した。先程の意趣返しに永泉が長い袂を口に寄せて笑った。
転がされた泰明の虚ろな瞳が天を見るとはなしに見つめている。その表情が愛らしく、友雅は
背後から抱え起こして抱きしめた。
「・・・・!」
触れる事で伝わってくる体温に泰明が竦んだ。耳朶を噛むと、小刻みだった震えが大きくなる。
「何故八葉の中で私達だけを呼ばれた? 晴明殿」
「・・・この泰明はこの屋敷からほとんど外に出た事はなかった」
晴明の指が項垂れた顎に手を掛けて上向かせた。
「赤子のように無垢だったのが、気付けば何かの色を移している」
「私達が原因だと?」
面白そうに永泉が問い返した。
「悪い事を覚えた弟子に、師としては罰を与えねばなるまい?」
縄目ごしに晴明の手は滑り落ち、泰明のモノを捕らえた。
「は・・・っ」
「泰明の罰を君達の前でしようと思った。だが、純粋に月の美しさを味わうのも一興ではないか」
「・・・然り」
晴明の目的を理解した永泉が足の縛めを解き、友雅は膝裏に手を添えて大きく開かせた。
「八葉とはかくも協力的なものなのか?」
捕えたモノの先、濡れた鈴口に、晴明が桔梗の茎を差し入れた。
「ひっ! −−−−!!!」
泰明が仰け反った。色の違う双眸が、苦痛をいっぱいに浮かべて見開かれていた。透明な涙が
月光を弾いて滴った。
さらに挿入すると、不自由な体を悶えさせ、与えられる激痛から逃れようと暴れ出す。
「泰明殿・・・」
掠れた叫びを紡ぐ唇に永泉が接吻した。
「あ、あ、あ・・・」
喘ぐ吐息が熱い。泰明がかっとより熱くなった事に応えて友雅が項に噛み付くような愛撫を始めた。
「・・・ううううっ」
痛みの中の性感を擽る刺激に、朦朧としていた泰明が少しずつ頭をはっきりさせていった。
最初に認識したのは、広がる永泉の髪。月に藍を増し、暗く映える。
「・・・!」
口付けられている事の驚きに顔を背けようとしたが、やんわりと永泉の手が両頬に添えられて
遮られた。
突っぱねたくても腕が動かない。陽が落ちる頃、晴明によってきつく縛られた事が思い出される。
縛められて・・・手酷く抱かれた。慣らしもせずに穿たれた傷が痛む。・・・それから・・・何故師以外の
人間がここにいる?
「元に戻ったようだね。瞳の色でわかる」
「友雅・・・っ」
首筋にある舌の感触。そう、これは目の前にいる師でも永泉でもない。
「止め・・・、あああっ」
下肢を襲う突き刺さる痛みが今一度与えられ、瞬間ふっと消え失せた。泰明に入れていた花を、
晴明は外へ投げ捨てた。
「どうして・・・師匠、こんな・・・」
抱き支える友雅の腕が解け、泰明がぐらりと傾いだ。倒れた肩を今度は晴明が押さえる。
「月が見事な夜だな」
泰明が顔を横向け、視線を表に向けると、縁から輝く中秋の月が見えた。尤も、泰明の目は涙で
霞んでいるのだが・・・。
「私達をもてなしてはくれないのかい? 今宵は客人としてここに迎え入れられている」
友雅の指が乱れた髪を梳いた。
「嫌、いや、だ・・・」
月に隠す事なく全てを晒されるのに堪えられず、解放を望んで泰明が拒絶を口にした。
「駄目です。月がある間は、あなたは私達の物」
くすくすと永泉が笑う。
「−−−泰明」
晴明が呼びかけた。
手が、淫靡に泰明の体を這う。
増してくる愛撫の激しさに、泰明が切ない溜め息を漏らした。


月の明るい夜の話。

No.7000きり番、咲様のリクでした。
複数って、む、難しい・・・。どうしても喋らない人が出て来る・・・。しかもこれは
裏物なのかしら?
大変お待たせした挙句に、こんな物ですいませんでした。