「手伝ってあげよう」
友雅の手が襟を寛げてきた。素肌に触れられて、泰明は酷く竦んだ。
「・・・おや? きれいな花が咲いている」
ふとつぶやきが聞こえたと思うと、明らかな意図を感じさせる動きで指が蠢いた。
しかも辿られる場所は全て泰明の弱い部分なのだ。
「な・・・っ」
「泣いて帰った君を、晴明殿は抱いてくれたのかい?」
そこで初めて泰明は気付いた。友雅が触れているのは晴明がつけた跡だという事に。
かっと羞恥が起こって、身を捩りかけた泰明の乳首を、友雅はきつく摘み上げる事で
封じた。
「つ−−う・・・っ」
鋭い痛みが突き抜けた。
泰明が感じている苦痛を知りながら、さらに捩り、爪を立てる。
昨夜抱かれたせいで、泰明はひどく鋭敏になっていた。
「ん、ん・・・ううっ」
色の薄い髪が打ち振られた。涙脆い瞳は、既に透明な雫を滲ませ始めている。
弄る指に力を入れ、擦り潰しでもすかのように捻る。華奢な体が仰け反り、バランスを
崩した。友雅がとんと軽く押してやるだけで、床に仰向けに倒れてしまう。
「あ・・・っ、嫌だ・・・友・・・」
左側の乳首だけが嬲られ続ける。赤剥けたように皮膚より突き出て存在を主張する
そこは、ずきずきした痛みが大きくて、快感などなかった。
「止めてほしいのかな?」
「離せ・・・っ」
「では帯を緩めて自分で着物の前を肌蹴てみせなさい」
指を捻って泰明を悶えさせ、友雅は命じた。
「やるから・・・止めてくれ・・・。されたままでは、とても・・・」
「交換条件だよ。君より先に願いを聞くわけにはいかない」
友雅が耳元に唇を寄せ、脳を蕩けさせてしまうような甘い囁きを注いだ。
「私を受け入れる、一番秘めた場所まで、膝を立てて晒すんだ」
「う・・・」
泰明から涙がぽろりと落ちた。
「目を開いて私を見なさい。そうきつく閉じていれば、君を抱いている者が誰かわから
なくなってしまう」
不思議な光を放つ二つの煌めきが、涙の膜の下から現れた。
「やりなさい」
白い指が震えながら、きっちり締められた帯に伸びていくのを、友雅は視線で追った。
完全に前が晒されてしまうまで、さんざん泰明の啜り泣きを絞りはしたが、彼がやり遂
げると、約束通り指を外した。
「は・・・あっ」
溜め息が泰明から漏れた。
「可愛いね。もう赦されたと思ってる」
「ひ・・・あ・・・」
下肢で張り詰めるモノを友雅がぐっと握った。
「や、ああっ、痛いっっ!」
「落ち着きなさい。ここがすごい快感の源だって知っているだろうに」
「違・・・っ」
荒々しく愛撫してくる手。意思とは関係なく追い上げられる。
「ああっ!」
「こんなにも蜜を溢れさせて。君には抱く、なんて事は必要ないようだ。これ以上の
快楽を得れば、発狂してしまうかもしれない」
「や・・・、うっ、ひっ・・・く。ああ、も・・・」
「まだ達くのは駄目だよ。放ってしまえば、受け入れる時に辛い。勿論周知だと思う
けど、ね」
根元を封じ、逆の手で泰明が漏れさせた雫を後ろに塗り込める。
「ひあ、あっ、あっ」
「少し黙ろうか」
友雅は軽く笑むと泰明に接吻した。
「ん・・・っ」
言葉を奪い、解放を止めて・・・友雅が下肢を抱え上げた。
貫かれた瞬間、大きく反り返る背。衝撃をやりすごそうと、固くなってしまう体。内部は
熱く、呼吸に合わせてきつく締め上げてくる。抱く者にとって、これほど心地良い反応を
示す存在が、そういるだろうか。
膝が棟につくほど折り曲げ、穿つ友雅は自身の快楽を極めていった。それが泰明の
悦楽へと繋がっていくのだ。
掌に包んだ泰明のモノは、萎えることもせず、身のうちに加えられる刺激で今にも
弾けてしまいそうだった。
「赦してあげよう」
一層深く男を咥え込まされ、泰明は熱い飛沫を迸らせた。


「ここで待っていれば頼久は戻って来る」
友雅は脱力しきっている泰明を座らせ、衣服を整えてやった。
窓を開け放ったせいで、情事の気配は急速に消えつつある。
「私はいない方が良いだろう?」
最後に、汗で湿った泰明の額に口付け、友雅は出て行った。
それから1刻ほど・・・。
泰明はじっと座ったままだった。体の中に残る痛みで、気を許せば崩れてしまいそうに
なる。膝に置いた手が強く握られていた。
「・・・泰明殿」
背後で扉が静かに開いた。部屋にいる人物に、頼久が驚く様子が伝わってきた。
振り返ったものの、泰明はすぐに言うべき言葉が見つからなかった。
「すまない、頼久・・・」
「いえ。もう済んだ事ですから」
頭を下げる泰明に、頼久の声は冷たいほどだった。
「顔を上げられて下さい」
「頼・・・」
戸惑う泰明の前に、頼久は膝をついた。その動きが何時ものしなやかさを持っていない
事に、彼の味わった事が窺われた。
「お茶でもいかがですか?」
昨夜、飲めなかった茶を出してくれるという。
軽く瞳を見開き、泰明は笑みを浮かべた。
「お願いする」
「わかりました。少しお待ち下さい」
頼久が湯を貰う為に立ち上がって出て行った。

ふっと泰明が窓の外を眺めた。
色づき始めた葉を纏った木々が映った。 

れにて終了です。結局何が言いたかったのかな、私。