「永泉・・・おまえは何時からそれを嗜んでいるのか?」
泰明の問いに、夏風に髪を靡かせ、気の向くままに笛を奏でていた永泉が
振り向いた。
「・・・さあ。幼い頃より独りで置いておかれる事が多く、表に出る事も制限
されていましたので、樂を楽しみ、書を読んだりするのが唯一の趣味でした
から」
さらりと立ち上がった永泉が泰明に近付いた。唇が触れるほど寄せられた顔
から、甘い香りがした。
「放っておかれて退屈ですか? 今宵は私の生誕した日。泰明殿にも祝って
頂きたくて訪れたのに、不調法な事をしました」
あなたからは、私の元に来れないのにね、と朱を引いたような赤い唇が
笑みを刻んだ。
今の泰明は、素肌に剥かれ、太い柱を背に縛められていた。座する形なので、
永泉とはまともに視線が合ってしまう。
「これを解け」
「嫌です。あなたは私に捧げられた供儀なのです」
先程まで奏でていた笛を、泰明の唇に当てた。
「音を出すのは簡単です。息を吹き込んで」
言われるまま、軽く吐息を出す。穴を押さえ、音調を合わせるのは永泉が
行った。昼の熱気が冷めきらぬ暗い室内に、涼やかな音が響いた。
「まるで私に口付けされているようです」
うっとりと永泉は囁いた。
「もうよい」
泰明が顔を背けた。肌を無遠慮に這いまわる永泉の視線が堪らなかった。
「解けと言ったはずだ」
「・・・否、とお答えしたはずですが?」
手元に戻した笛に、永泉が唇を寄せた。再び、清らかな音が流れた。しかし、
音色はすぐに止んだ。
「ああ・・・また私だけの世界へ行ってしまう所でした」
法衣を纏う腕が伸びて、きゅっと泰明を抱きしめる。
「相変わらず、線が細くて・・・儚げですね・・・」
「それはおまえだ」
「私たちは似ていますか?」
永泉は顎を取り上げ、唇が深く合わせられた。
「止め、ろ・・・」
嫌がって泰明が首を振った。頭の自由は残されているので、ささやかな抵抗は
出来る。
「どうして?」
唇は離したが、抱きついたまま、永泉が見上げてくる。
「おまえは何故このような事をする?」
「・・・愛しいからです」
「違う、愛しいというのは・・・」
「何がわかるというのです」
永泉が頭を落として、拝跪した。床の近くで萎えている泰明に手を添え、自身の
口内に迎え入れる。
「あ、あああ・・・」
切ない喘ぎが起こった。温かい口に含まれ、唾液と舌がねっとり絡みつく。
永泉の唇の中で、泰明がゆっくり頭を擡げてきた。
「こちらは素直ですね」
白い掌が根元をきつく掴んだ。
「・・・うっ」
「気持ち良いですか? それとも別の場所に愛撫が欲しい?」
吐息が吹きかけられた。背筋にぞくっとした痺れが走り、漣のような震えが起こった。
握り締める手がすっと離れ、小ぶりな果実の下に潜り込んだ。
「少し腰を上げて」
尻肉をきゅっと抓る。
「いた・・・っ」
「もっとされたくないならば、お早く」
「く・・・」
悔しさに永泉を睨むと、さらに爪が食い込んだ。
「満たされずに疼いているのでしょう?」
ぐいと半ば無理矢理に腰を上げさせ、熱を持つ入口に指を当てる。
「こんなにも熱い」
指が狭い入口を割った。根元まで突き入れたが、細い指の事、痛みは感じなかった。
「物足りない?」
赤い唇が吊りあがった。泰明にわからないよう、後ろ手で背後を探る。
「ではこれを差し上げましょう」
目当ての物を見つけた永泉が頬擦りして、それを見せつけた。二人の息吹を吸い込んだ
笛に泰明が凍りついた。
「良い太さでしょう? 今日は私の誕生日を祝って欲しくて、生身を連れては来ません
でしたが、お望みなら次からご用意致します。・・・どなたでも」
私ではあなたを貫いて差し上げられませんから、とどこか悲しそうに永泉が言った。
「必要・・・ない。誰も、私に触れるな」
「では誰が泰明殿をこのように開いたのですか? ・・・彼でしょう? あなたの善がる顔を
他の方が知っているとは、妬けますね」
掌で持ち替えた笛の先で深々と泰明を貫く。
「うっ、ああ−−!」
「美味しい?」
内部で好きなように操り、柔らかい肉を抉り立てる。
「痛い、止め・・・ろ・・・」
「そのお顔が堪らない」
再び顔が伏せられ、泰明を含んだ。
「こういうの、お好きでしょう? ここは、少しも萎えてはいない」
くちゅくちゅと濡れた音が室内に響いた。
「私を祝って下さい」
鈴口に尖らせた舌先が触れ、抉じ開けるように突いた。
「あ、あ、あ・・・っ」
「これ、下さいますね?」
「嫌だ、嫌・・・」
「下さるでしょう?」
泰明を貫く笛がもっと押し込まれた。
「びくびく反応して・・・お可愛らしい」
身を寄せた永泉が体を起こして、下肢を寛げた。乱れた法衣は艶があり、覗いた脚はどこ
までも白かった。
「あなたが良いから、慣らさなくても私は平気です」
喉を仰け反らせて泰明を受け入れる。恍惚とした表情は、男を咥えることに何の抵抗も
覚えていないようだった。
恐ろしいと、泰明は感じた。しかし、不思議とおぞましさは覚えなかった。
「祝って・・・下さいますね・・・」
再びの言葉を永泉は紡いだ。

遅ればせながら、永泉様お誕生日おめでとうv
何時もとかわらない所がまた何とも・・・