与えられた薄物を羽織った肩を抱きしめ、部屋の隅で震えていた泰明は、幾人もの
男達によって、湯や桶、用途のわからないその他の物が運ばれるのをぼんやりと
見ていた。
同じ衣装を着て、表情すらない彼ら。夕べ味わった、晴明の冷たいながらも存在した
生命の気配すら感じられなかった。
「この者達は式だ」
全ての支度が整い、男達が控えた後に晴明は訪れた。素足に踏みしめる桔梗の花が
夏の暑気に萎れかけているのに気づき、一輪を取ると泰明へと翳した。
「部屋を何時もこの花で満たしておきなさい」
ポトリと膝に落とされた。枯れつつあっても、香りは衰えていなかった。意識が目覚
めてからさんざん吸い込んで、脳にまで染みた芳香に、泰明は思わず花を払い
除けていた。
「まあ良い。おまえがこの花を嫌おうとも、花の方で離してはくれぬ」
晴明が泰明に着物を外し、部屋の中央に行くように命じた。
明るく差し込む光、人ではないと教えられても、幾つもの視線が注がれる中で素肌を
晒せとは。
「嫌・・・」
抵抗の言葉が漏れた。白い顔は一層蒼ざめ、羞恥を起こさせる言いつけを止めて
欲しいと全身が訴えている。
「無理にされるのを好むか?」
細い腕を晴明は掴み、湯の張られた桶のそばへ投げ出した。打ち付けた体を庇う
間もなく、羽織っていただけの夜着は奪われた。
「止めてっ!」
泰明は蹲った。伏せた顔に涙が伝う。
何故この男は酷い事ばかりをするのだろうか。意思も自我もなくまどろんでいたのを
目覚めさせ、苦痛と屈辱を与えて・・・。
何故・・・男は・・・泰明は彼の名すら知らなかった。
「身を清める事を覚えなさい。一日の終わりに、私に抱かれた後に。湯殿もあるが、
苦しくて動けぬならこうして誰かに用意させると良い」
薄い色をした泰明の髪に晴明は指を絡めた。
「湯に身を浸せば体が安らぐ。・・・だが、先におまえはやらねばならぬ事がある」
髪を優しく梳きながら、泰明の額に接吻する。肌の下に怯えが漂っているのが、
触れた唇から伝わった。
「森に住む小さな獣のようだな」
晴明はうっすら笑んだ。
「私はおまえの敵ではないというのに」
「ならば・・・」
袂の長い晴明の袖を掴み、泰明は顔を上げた。必死に留めようとしてはいたが、涙の
跡が目元にはあった。
「・・・ならば」
言葉の続かない泰明を離し、床に伏せさせる。嫌がって体を反転しかけるのを制し、
背後にいる式達に抑えつけるように命じた。
何本もの手が動きを封じてきて、恐怖に泰明は強張った。
「湯では洗えぬ所を最初に清めるのだ」
晴明が腰を引き上げ、双丘を割り開いた。
「嫌、嫌あっ!」
昨夜与えられた痛みが思い出され、恥ずべき部分に視線を感じて、泰明が悲痛に
叫ぶ。
逃れたくても、押さえてくる人数は多すぎた。・・・それでも抵抗を止める事は出来な
かった。炎のように全身を覆う羞恥故に。
晴明がそのように創ったのだ。抱いて犯し、屈服させる対象が、高い矜持と汚れを
厭う心を持っている方が、加虐者をそそる。
肌をほんのり朱に染め、ぶるぶる震えている肉に晴明は手を滑らせた。秘められた
谷間に息づく蕾は男を受け入れた事を忘れたように口を閉ざしていた。
指で軽く突くと、ひゅっと泰明の喉が鳴った。
「少し緩めなさい」
「んんっ!」
泰明が首を振った。意思で出来るはずもない。反対に触れる指を拒んでさらに固く
なってしまう。
「おまえが辛いだけだ」
一度爪先だけをつぷりと潜らせてから晴明は手を引いた。式の一人から握れる
ほどの太さの長いガラス筒を受け取る。中には色のない液体が半ばまで満たされて
いた。
「もっと強く泰明を押さえるように。初めてだから・・・な」
「何を・・・っ!」
「言わなかったか? 清めると」
晴明は筒の細く出た先端を泰明の秘所に突き刺した。
「ああっ!!」
痛みはなかったが、昨夜激しく擦られ傷ついていたそこは、敏感になりすぎていた。
結わえていない長い晴明の髪がさらさらと落ち掛かる。汗ばんだ泰明の皮膚に
髪は不快に貼りついた。
「抜いて、嫌ああ・・・っ」
床に押さえられ、くぐもった哀願が繰り返された。
「心配せずとも、注ぎ終わったら外してやる」
円筒を操り、晴明はゆっくりと液体を体内に注ぎ始めた。咥えた所から冷たさが襲って
きて、泰明が辛そうに仰け反った。
「あああ・・・」
量は多くなかったので、注入はすぐに終わった。同時に束縛も消え、泰明は獣の
ように身を丸めた。
しばらくは、荒い泰明の呼吸だけが室内に響いていた。
・・・ふいに。
ぴくりと泰明が反応した。
最初は小さく。
「・・・く、ううっ」
声には苦痛が混じる。
「お腹、痛い・・・」
色の違う瞳が晴明に向けられた。
「ああ、あれは・・・。私の体に・・・」
掌を当てがっても、痛みは高まってくる。先程とは違う冷たい汗が流れた。
「私のものが混じりあって溶けるまで我慢しなさい」
「出来ないっ、痛い、痛いのです」
泰明が晴明に縋りついた。
「・・・お願いです」
顎が取られ、泰明は深い接吻を受けた。抱きしめられて、思いがけない安らぎを覚える。
「ふ・・・っ」
脱力しかけると、内部に注がれた物が溢れてしまいそうで、体を震わせて晴明に
掴まった。
「まだおまえの中は私のもの以外は何もないから、僅かな量にしてやった。これからは
もっと多くなる。今少し堪えよ」
言いながらも晴明は吐き出させる準備をさせた。
下肢に小さな手桶が当てられて、遂に泰明は激しく泣き出してしまった。

だんだん酷くなってくる泰明お清め編