引き摺るように部屋へと連れられた泰明は、強かに固い床に突き飛ばされて
痛みにうめいた。
体を丸めて衝撃がすぎるのを待つ暇も与えられず、うつ伏せに腕を捩られる。
「ああっ、痛・・・っ」
「誰に会っていた?」
泰明を押さえつける晴明から、冷たい言葉が発せられた。
痛みから逃れようと身じろぎしかけると、手荒く髪を掴まれ、頭を仰け反らせる。
「おまえの行動は、全て式が見ている」
「くうう・・・っ」
喉が苦しげに鳴った。色の違う二つの瞳に、晴明が手にした縄が映った。


晴明の供をして、初めて屋敷の外へ出た日の事である。長く歩いた事などない
足で、牛車に従った。
疲れきった泰明は、晴明に促されるまま、訪れた屋敷に入り、控えの間で足を
休めていた。用件を済ませるとi言い置いて 、晴明は去り、夏の熱気が篭る室内
にただ独り残されて。
その時に彼が訪れたのだ。
・・・泰明は思い出す。華やかな衣装を纏った男の事を。
「初めて見る顔だね。童というには大きすぎるが、新しく晴明殿の弟子になった
のかい?」
晴明以外の他者に話し掛けられた事などない・・・今日に至るまで師以外の生命
ある者に出会うのも初めてだった・・・泰明は、どう返答して良いかわからず、ただ
じっと見つめる事しか出来なかった。
「口がきけない? ・・・まさかね。陰陽師を目指す君が、呪を紡ぐ唇を動かせない
はずがない。私は橘友雅という。君は?」
「安倍・・・泰明」
「良い名だね」
ふっと頬に口付けられた。・・・ただ、それだけの事。高くにある開け放たれた窓に、
夏空に映える蝶が一羽、ひらひら舞っていた。


体にきつく縄が食い込んで、泰明の意識が引き戻された。縛める縄が天上梁に
掛けられ吊るされたようだ。
「う・・・っ」
細い体がぎりぎり締め上げられて、耐え切れないほどの痛みが走った。
「師、・・・匠、痛・・・っ」
「当然だ」
晴明の声は淡々と冷たい。言いながら彼は跪く泰明の膝を蹴りつけた。
「あああっ」
足が払われ、縄に掛かる負担が強まった。
「煩い。赤子のように泣くな」
瞬間、深い接吻が与えられた。痛みに喘ぐ唇は、易々と侵入を許し、怯える舌を
絡め取られてしまう。
「は・・・あ・・・」
漏れた吐息の中、溢れた唾液が泰明に顎を伝い、素肌に胸に落ちた。
泰明が教えられたのは、このように貪られるキス。昼間にされた優しく触れる口付け
ではただ、戸惑うばかり・・・。
「おまえは私のものだ」
「・・・・・・」
答えないでいると、乳首が酷く捩られた。
「ひっ!」
鋭い叫びが上がる。摘み上げている指から逃れたくても、縛められ、吊られていれば、
僅かに身じろぐ事しか出来なかった。
「嫌、止めて、下さい・・・っ!」
「こちらはそう思っていないようだが?」
「何−−−・・・」
涙でかすんだ瞳で晴明を見やる。視界はぼやけて、師がどのような表情をしている
のかがわからない。暗い怒りを表しているのか、冷たい笑みを浮かべているのか。
泰明のモノに晴明の手が添えられた。ビクンと反応した時には、鋭く細い物が先端に
突き立てられていた。
「痛いっ! ああ・・・いた・・・い・・・」
「動くな。尿道に傷がつく」
警告しながらも、晴明自身が刺した物を弄る。その度に凄まじい痛みに泰明は
身悶え、涙を落とした。
「今朝おまえが摘んできた百合だ」
夏を迎え、庭に咲き乱れた白い花を、晴明の為朝早くから集めたのだ。
両手いっぱいに百合を抱え、師の部屋を訪れた泰明に、晴明は笑んで一輪を抜き
取り、おまえも飾るといい、と与えた。
慎ましく泰明の部屋に飾られていた花は今、震え立ち上がっているモノにいけられて
いた。
「他の者に会い、口をきき、見つめ、あげくに接吻を受けたおまえが許せぬ」
紡がれる哀願を封じようと、清明は再び泰明に唇を合わせた。痛みと怯えが醸す
切ない震えが心地良かった。
晴明が袂から小刀を出し、泰明の頭上で縛めを断ち切る。支えを失った体がぐらりと
崩れた。
それを受け止め、ゆっくり床にうつ伏せに押さえつける。泰明が気配に気づくと同時
に腰は引き上げられていた。
一番嫌う獣の如き姿で抱かれるのだ。
「ああああっ!!!」
貫かれた泰明の背が大きく反った。慣らされもせずに穿たれた場所からは裂けて
しまうほどの痛みが生じた。
「う・・・ああ・・・、く、んん・・・っ」
冷たい板床に、衝撃を少しでも和らげようとするのか、ぎりり、と爪が食い込んだ。
「私だけのものだと言え、泰明。おまえを造った私だけだと」
「ああ・・・っ、ひい・・・っく」
泰明から新たな涙が流れたのがわかる。組み敷く体は、晴明が望んだ通り、華奢で
儚げだった。
望んだままの姿を現した泰明。
この魂を手放すつもりなど、晴明には毛頭なかった。

若葉マーク様のリクで、鬼畜な晴泰でした。何か別なキャラ絡んでしまって
すいません(汗) 拙すぎる物ですが、どうか貰ってやって下さいv