気がつけば取り囲まれていた。
野宮にほど近いさびれた森だった。怨霊の気がすると、独り向かった帰り・・・
既に陽はとっぷり暮れている。
怨霊に傷つけられた腕が痛んだ。布を巻きつけてはいたものの、血は止まっては
おらず、だらりと力なく垂れているだけだった。
もとより太刀など持たぬ身、念で防ぐくらいしか出来はしない。
木立に凭れていた泰明が静かに体を起こした。
囲んだ男達の退廃した様子、乱れた装束を見れば、野武士の類か、と泰明の
顔にあからさまな侮蔑が浮かんだ。
特定の主を持たず、世の不浄である金次第でどこにでも雇われる彼らには蔑み
しか覚えない。多くが物取り、夜盗もまた行うという事も、その思いを強くさせた。
「・・・何用だ」
盗るに値する物を泰明は持ってはいない。師に与えられた霊珠の連なりのみが
月光を鈍く弾いていたが、それすらもただ人の目には高価だと映らないだろう。
返答はなく、囲む輪が縮められたとたん、切りかかられた。
「・・・!」
二人までは裂けられた。華奢な体は花より生まれ出た者に相応しく、軽やかに
翻る。
だが、そもそも最初から数に違いがあるのだ。
「う・・・あっ!」
腕がずきりとした。動かした衝撃で、傷が開き鮮血が行く筋も布を伝って流れた。
僅かに竦んだ隙をつかれ、腕が強かに蹴り上げられた。
もんどりうって倒れる泰明の髪を、汚れた靴が踏みつけた。
「おまえ達は・・・っ」
月明かりを背に受ける男達の瞳の色に泰明は気づいた。情欲に濡れた輝き。
即座に彼らの意図がわかり、せんりつに体が震えた。
泰明は男を受け入れる事を識っていたから。
これからされる事は容易に想像がつく。
「離せっ!」
返答は暗い嘲笑だった。襟元に手がかかり、着物が悲鳴を上げて裂かれていく。
「止め、ろ・・・」
何人もの男に、腕が、足が、押さえつけられる。
「嫌、だ」
敵わない。
泰明に涙が浮かんだ。


「・・・泰明殿?」
頬を軽く叩かれて、泰明はぼんやり瞳を開いた。頭が霞んだようにぼんやりし
ているのは、意識を失っていたせいだろうか。
何度か瞬きをする内に、周囲に満ちる血に匂いに気づいた。腕の傷ではない。
もっと、多量の・・・。
泰明ははっとして、起き上がろうとした。
「う・・・っ」
体があちこち痛んで、思わず顔を顰める。視線を落すと、布切れと化した衣服の
名残が身を覆っているだけだった。
蒼ざめる泰明に、今一人陰にいた男が口を開いた。
「犯されてはいないようだが?」
「友雅殿」
泰明を目覚めさせた頼久が振り返った。
「力無き身で夜歩きは感心しないね。だからこういう事になる」
悔しそうに泰明は唇を噛んだ。
「だからとはいえ、屠ってよいものではない・・・」
色の違う瞳が痛ましげに事切れた男達を見やった。
「彼らがやり終わるのを待ってから、助けた方が良かったかな?」
頼久が肩を貸し、泰明を立ち上がらせた。
「傷が酷いようです。・・・屋敷までお送りしましょう」
「・・・・・・」
「怪我人は素直になる事だ。その姿では徒歩など出来はしないだろう?」
車を用意してある、と友雅が先に立って歩き出した。


京の鬼門に建てられた屋敷は明かりもなく、闇にあった。
「迎える者もいないのか」
静まりかえった様子に、友雅が軽く眉を寄せた。
「何故そのような者が必要なのだ。私は何時も独りだ。それで不都合などない」
「ずいぶん・・・淋しいね」
全く人気のない一角が、泰明の休む場所だった。きれいに清められたそこには
生活が営まれているなど到底感じられない。
泰明が燭に火を灯した。明かりさえもが、何処か物悲しく辺りを照らした。
腕を包む布を外そうとした泰明に、頼久がさりげなく手伝った。
「すまない」
「・・・いえ」
部屋に置かれていた水を傷にあて、乾いた布を弛ませる。
「・・・今日は迷惑をかけた。八葉としてあのように無様な真似は二度としない」
もう去れ、と言外に含まれていた。
「私達にただ働きをさせたと?」
友雅がくすりと笑った。
「何を望む・・・」
新たな白い布に手を伸ばしかけた泰明の肩を頼久は掴んだ。
「頼久?」
「離すなよ」
「・・・勿論です」
「え・・・?」
泰明が高い位置にある頼久を見上げた。
「あまりにもお可愛らしい顔を、泰明殿がされるから」
「汚れた者達に組み敷かれていた時の事だよ」
近寄った友雅の指が顎を拭い取った。
「私達にもその顔を見せて欲しいね」
そっと唇を寄せ、泰明だけに聴こえるように友雅が囁く。
「・・・私だけではなく、頼久にも」
白い頬が、かっと染まった。
「君が先で構わないよ、頼久」
「ありがとうございます」
「止めろ!」
泰明が叫んだ。
疲れきり、痛む体では、さしたる抵抗も出来なかった。下肢に身を移した頼久
が泰明の脚を折り曲げる。
胸につくほど屈曲させられ、腰が宙に浮いた。
「普段のように力を抜いて・・・」
友雅が膝に泰明の頭を乗せ、乱れた髪を梳いた。
近付いてくる頼久を、信じられないと泰明は見つめた。
「あ、あああああっ!!!」
知っている、二つに裂かれる痛みが襲い掛かった。目の前に白い閃光が走る。
固い場所を無理に抉じ開けて頼久の熱く滾ったモノが捩じ込まれる。
堪えがたい激痛が休む事なく脳に突き刺さってきて、泰明は悲痛に叫んだ。
冷や汗が流れた。
「すごいですね・・・」
深々と泰明を貫いた頼久が、身のおもむくままに抽送を始めた。
「う、ああっ、ああ−−−」
頼久が体を打ち付ける度に、体が激しく揺すぶられ、泰明はい息も絶え絶えに
うめき続けた。
身体が、苦しくて、痛くて・・・。
同じ八葉に犯されている事が泰明をさらに苦しめた。
頼久が低くうめいた、泰明の中に欲望を吐き出した。
満足気に溜め息を吐くと、震えている泰明を見つめる。
「あまり辛い表情をなさらないで下さい・・・」
「君は感じる事を拒む癖がある」
「・・・泰明殿」
言いながら、頼久は泰明に触れ、友雅と位置を変えた。
「どうぞ」
「ああ。でも君が前からやったから、同じでは彼も嫌だろうね」
友雅がくるりと泰明を伏せさせ、腰を引き上げた。
「やだ、もう、嫌だ・・・」
涙が溢れてきて、眼前がぼやけた。
「頼久だけになんてつれないね」
着物を寛げ、友雅が勃起した自分のモノを引き出すと後ろからおもむろに泰明を
貫いた。
「あ、うううっ」
頼久を受け入れたばかりで真っ赤に充血している場所に容赦なく突き込まれる。
きりきりと痛みが突き抜け、泰明は大きく背を撓らせた。
目の前がふっと暗くなった。
しかしそれすらも、友雅が動き始めた事で阻まれてしまった。
「痛いっ、痛い・・・止めて、くれ・・・」
限界を超える痛み。
抜いて欲しくて、知らず、哀願が漏れる。
友雅が笑んだ。
「・・・可愛いだろう?」
「本当に」
ぐっと深く突いてから、友雅もまた深くに迸らせた。
彼が離れると、泰明は床に倒れた。
「共有するのもいいかも知れないね」
友雅の声が遠くから聞こえるようだった。
「一度彼を抱くと、止められなくなる・・・」
離されても泰明は僅かも動けなかった。鼓動に合わせるように、痛みが掛け巡
る。
涙で霞んだ目を、それでも必死で泰明は上げた。
「ゆっくり休まれて下さい」
頼久が優しく肩を押さえた。
胸がつまって、新たな涙が泰明から流れた。
「大げさに考える事ではないよ。恋は人生の楽しみなのだから」
喘ぐ唇に接吻が降りた。
泰明の反発ごと・・・吸い上げるように。

今回は最後まで入れてみました。だから少し長めなのです。泰明は二人
がかりで・・・。

ゆきの様へ。大変お待たせして申し訳ありませんでした。何だかなあという
話になってしまっていますが、貰って頂けたら嬉しいですv