「・・・っ!」
手首を強かに打たれて楊戩は木刀を取り落とした。
「拾え」
玉鼎が命令する。
「出来ません。斯様に毎晩嬲られて、僕に力が入るはずもありません」
きっと楊戩が玉鼎にきつい視線を向けた。
「そうか? おまえも随分楽しんでいるように思えるが?」
「・・・・!!」
頬を染めた楊戩に、玉鼎が腕を伸ばした。
胸に触れられそうになった楊戩は咄嗟に後ずさった。
そんな姿に玉鼎は苦笑する。
「襟を寛げなさい」
「嫌・・・」
「大きく広げて、私に見せなさい」
近づいた玉鼎が、襟をかっちりと締める銀の留め具に触れた。
嫌、と楊戩が首を振る。
「言う事を聞かぬな」
特に気を悪くした風でもなく、玉鼎は襟を強引に寛げた。
露わにされた胸に咲く赤い花。
見つめられて楊戩は居たたまれなくなり、しゃがみ込んでしまう。
夜ごと嬲られ、自身の手でも弄る事を強要された乳首は、真っ赤に色づいていた。
今では、触れられるだけで辛い。
「立ちなさい」
玉鼎が腕を引いた。
立ち上がらせた楊戩を、背後の木に押し付ける。上着はすっかり肌蹴られ、袖だけが
腕に残された。
それが楊戩の自由を奪う。
片手で楊戩を抱きしめた玉鼎が、空いた手で赤い乳首に触れた。
「んん・・・っ」
びりっとした刺激に楊戩が呻いた。
きちんと整えられた爪に、引っ掛けられるように乳首を扱われると、じんとした痺れが
全身を走る。
この数日の間、楊戩の乳首は嬲られる快感を叩き込まれていた。
玉鼎を受け入れ、中に出され、どんなに感じていても、立ち上がった自身に触れる事は
許されず、自慰は乳首を弄るだけしか駄目だと教えられた。
「僕は乳首で達きます。達かせて下さい」
と、恥辱の言葉を言わされ、射精するように繰り返し躾けられた。
そのせいで、薄い皮膚は感じやすくなり、赤く腫れていた。
しかし、今はどれだけ苛めれても、楊戩は達く事が出来なかった。
「許して、下さい、師匠・・・」
「達けるとでも?」
胸を離れた玉鼎の手が、下半身をそっと包んだ。
「あ・・・っ」
既にそこは熱を帯びていたが、切なく震えるだけだった。
下衣に隠されていたが、楊戩の性器は紐で縛められているのだ。
がくがくと力が入らなくなった楊戩は、右足を取られ、上へと折り曲げられた。
「・・・っ」
後ろに熱いモノを押し当てられ、楊戩が息を飲んだ。
それを与えられてこそ、達けるのだ。
「師匠、早く・・・」
中で玉鼎が射精してくれれば、絶頂を極められる。
それはもう当然の事だった。
期待が楊戩の体を熱くした。
しかし・・・
「駄目だ」
玉鼎は冷ややかに答えた。
「私に逆らう悪い子にご褒美が与えられると思うか?」
「師匠・・・」
楊戩は腰を振り、布越しに押し付けられれた玉鼎の性器を誘う。それで貫いて欲しいと。
入口を擦るだけなんて酷すぎる。
ところが玉鼎は、どれだけ欲望を煽り立てようと、楊戩の誘いには乗ってくれなかった。
「剣を取らぬなら、もう屋敷に戻るぞ」
「や・・・っ」
腰を引かれ、楊戩の足を離されてしまい、楊戩は縋るような眼差しを玉鼎に向けた。
「入れて、下さい・・・」
「今のおまえには嫌だ」
拒絶の言葉が楊戩を凍らせる。
時には酷い扱いをされても、基本的に玉鼎は楊戩を優しく抱いてくれていた。
それが、数日前にルールを告げられてから、体を陥落させようと態度を変えていた。
優しいはずの玉鼎の顔が、その柔らかい笑みが、悪魔的な美しさにも見えてくる。
突然のルール、そして過酷な扱い。それなのに、楊戩は虜になっている。
腕を上着から抜いた楊戩が、玉鼎にしがみついた。
「お願いです」
玉鼎が緩く笑った。
「そんなに咥え込みたいか?」
問われて、楊戩は頷く。
煽られて、苦しい。
早く楽にして欲しい。
赤く熱を帯びた楊戩の頬を両手で挟み、玉鼎が耳元で囁いた。
「そうだな・・・それならば、私の言う通りの事を言ってもっと強請ってみなさい」
蜜が滴るほど甘い声で玉鼎は唆した。
耳朶を軽く食み、そっと強請り言葉を教える。
「・・・・・・・!」
あまりにも被虐的な言葉に楊戩は震えた。
囁かれただけで全身が赤くなるようだった。あまりにも屈辱的だったし、淫らすぎる言葉だった。
それでも、楊戩は逆らえない。
玉鼎が欲しくてたまらないのだ。
・・・既に、楊戩は落ちていた。
震えながら楊戩が口を開いた。
「僕は・・・師匠のが・・・好き・・・いん、らん、だから・・・。だから、どうか・・・好きにして、下さい・・・」
言い淀む唇に、玉鼎が口づけた。
「それで?」
「僕の、あな・・・は・・・師匠専用です・・・」
快楽に溺れ、玉鼎の言いなりになっている悔しさ、恥ずかしさは勿論あった。しかし、楊戩に
とっては、今ではそれすらも快感にだった。
喉の奥で笑った玉鼎が、楊戩の背を撫ぜた。
「可愛い子だ」
尻へと降りた手が楊戩を掴む。
「望み通り、好きに使ってやろう」
柔らかい口調の中に、支配欲を滲ませて玉鼎は囁いた。
「・・・はい」
抱き上げられた楊戩が、玉鼎の首に腕を回した。
ようやく、犯してもらえる。
それは至福の時間の訪れだと・・・思えた。

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