突然の元始天尊の来訪に、玉鼎は膝を折った。
「お呼びいただけましたなら、何時でもこちらから参りますのに」
いぶかし気に顔を上げ、崑崙山の主に問う。
何があったのか、と。
「お主の弟子の事だ」
「楊戩がいかがされましたか? 今朝は早くから外へ飛翔して行きましたが・・・」
元始天尊がため息をついた。
「誰もおらぬ山の一つにだが、落ちていた」
「・・・は?」
「自己を律し、人の姿を保てぬのでは、まだ玉泉山から出すには相応しからず」
腕を差し伸べた先に、今まで存在しなかった大きな箱が置かれていた。
「何か穢れにでもあてられたか。この崑崙も完璧ではないという事だ」
「金鰲の妖怪でもはいりこんでいるのでしょうか?」
「それは分からぬが、お主の弟子は、元の姿に戻れぬようだ。取りあえず暴走せぬよう
封じてある」
そこで元始天尊は頭を振った。
「金鰲から預かった者だ。そして、お主に預けた。何とかしてやって欲しい」
「畏まりました」
玉鼎は再び深く頭を伏せた。
「では、な」


置かれた箱の中には、縛められた楊戩が、体を曲げて入れられていた。
両手は体の前で合わせられて結わえられ、足には鎖が絡んでいる。
「聞こえるか? 意識はあるのか? 楊戩」
玉鼎の声に、楊戩はゆるりと顔を上げた。
普段より白くなった顔に走るのは、妖怪の紋。頭には隠せない角が突き出ている。
赤い瞳が切なく玉鼎を見つめた。その口には、布が噛まされていて、楊戩は何も答える
事が出来なかった。
「口も利けぬようにされているのか」
玉鼎が細い顎に手を掛け、上向かせる。
「自我はあるようだな。ここまで封ぜずとも・・・ひどい事をする」
硬い結び目を解き、乾いた唇を解放しながら、玉鼎は言った。
「は・・・あっ」
呼吸が楽になった楊戩が、括られた両手で玉鼎にしがみついた。
「咆天犬を与えたのは早すぎたか? もう、大丈夫だと思ったのだが」
「師匠・・・」
吐き出される、楊戩の吐息が熱かった。
「体を抑える方法は教えているはずだ」
そう口にすると、玉鼎は楊戩に接吻した。
「ん、う・・・」
再び吐息を遮られた楊戩が、顔を顰めた。
「このような場所で性急だが、あまり時間をかけては、元の姿に戻るのが益々難しくなる」
汗ばんで肌に絡んでいた楊戩の着衣上から、玉鼎が手を這わせた。
「い、嫌・・・っ!」
裾を割られた楊戩が思わず叫んだ。
「そう怯える事ではない。すぐに終わる」
玉鼎の指が、下肢を探り秘裂に触れてきた。
「あ・・・」
敏感な箇所にこれからされる事を知っているだけに、楊戩は竦んだ。
「人と交わる事。人の気を分けてもらう事。おまえに今必要な事だ」
「ですが・・・っ」
「それが証拠に、口づけただけで角が小ぶりになった。さあ、力を抜きなさい」
楊戩が顔を覆った。
「どうか、お止め下さい。このような事、師匠にご負担をかけてしまう・・・っ、ああっ」
言葉を最後まで言わせず、玉鼎の指が深く楊戩を抉った。
「やっ、ああっ、い、や・・・っ」
乾いた場所を何度も抜き差しされ、無理に解されていく感覚に、背を撓らせて楊戩が喘いだ。
「師匠、ごめんなさい、・・・」
「楊戩、何故謝る」
喘ぎの中からの謝罪に、玉鼎は首を傾げた。
「人である・・・師匠に、崑崙最高位の十二仙の師匠に・・・僕が保てぬ度にこのような、事を
させて・・・」
玉鼎が華奢な体を抱きしめた。
「師匠・・・」
「ききなさい、楊戩。取り乱し、謝る事など、何もない。
私はもう、悠久の時を生きてきた。まだ幼いお前の抑えきれない力を受けとめた所で、耐え切れぬ
とでも思うのか」
衣を掴む手を静かに離させる。
「この私が、お前を元に戻してやる。安心して身を委ねておれ」
楊戩は玉鼎の肩口に顔を埋めた。
「もう良いか?」
「・・・はい」
楊戩の返答と同時に、玉鼎は細い腰を掴んで自身の上に引き落とした。
「ああ------っ!」
解しきれなかった硬い入口を抉じ開けて、深く・・・深く受け入れさせる。
激しく楊戩を突き上げながら、玉鼎が薄く笑んだ。
「こうして、お前を元に戻す役割は・・・私だけだと心得よ」
もう楊戩には届いていない事がわかっていながら、そう口にする。
垣間見える玉鼎の欲望。
受け止め続けた彼もまた、変わりつつあるのか。



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