襟から差し入れられた手に、夜着を乱された楊戩が、玉鼎をそっと押しやった。
「楊戩?」
いぶかし気に首を傾げた玉鼎に、楊戩は言う。
「師匠も・・・、衣をお脱ぎになって下さい。僕だけでは、嫌です」
「ああ、そうか」
玉鼎が苦笑した。
「では、おまえの手で私を脱がせなさい」
「僕が?」
「そうだ」
抱き着いていた腕を解いた楊戩が、躊躇いがちに玉鼎の衣に触れてきた。
何時もは、乱しはするものの、着物を纏ったままの玉鼎を、自らの手で・・・自らの
意思で脱がせるのだ。
「さあ、」
夜着の合わせに手をかけたまま、戸惑う楊戩を、玉鼎は促した。
「・・・はい、やります」
襟を寛げ、帯を解き、その度に感じる温もり。
玉鼎の体がしっとり熱い事に、楊戩は気づいた。どのような表情をしているのだろう、
そうふと思い、見上げてはみるものの、明かりを落とされた室内では、伺う事は
出来なかった。
肩から滑り落とした夜着が、玉鼎の足元へと落ちた。
「私の姿を見たいか?」
手を伸ばした玉鼎が、室内の明かりを再び薄く灯した。
柔らかな光が、玉鼎を映し出した。
「師匠・・・」
鍛え上げらた肉体に、楊戩は視線を奪われ、じっと見つめてしまった。
「満足したか、楊戩」
見つめ続ける楊戩に、ふっと笑みを浮かべた玉鼎が、膝を折り口づけてきた。
「ん・・・っ」
吐息を継ぐ度に口づけは深くなった。
逃げられないよう、後頭部に手を当てられ、意識が霞む頃にはまた、楊戩も
夜着を脱がされてしまっていた。
「他に望みは?」
玉鼎が問う。
「いえ、何も・・・」
寝台に押し倒された楊戩が、玉鼎を見上げて答えた。
「おまえの嫌がる明かりがついたままでも?」
揶揄うような口調に、楊戩は室内の朧な明るさに今更のように反応した。
玉鼎の姿が見えるという事は、これから乱される自身もまた、見られてしまうという事だ。
「や・・・っ」
楊戩は両手で顔を覆った。
光に晒されるのは恥ずかしい。でも・・・。
「それでも・・・」
「ん?」
楊戩は顔を赤らめながらも、覆っていた手を離し、玉鼎へと伸ばした。
「僕は師匠を見ていたいです。だから、今宵はこのままで」
さらりと流れる黒髪を一房指に絡め、楊戩は唇を寄せた。
「・・・わかった」
熱い頬に、玉鼎は口づけて囁いた。
もっと深い接吻欲しくて、楊戩が玉鼎を抱きしめる。
「我儘だな」
「ああっ」
突然乳首を摘ままれた楊戩は小さく悲鳴した。
「感じていなさい、私が求めるのはそれだけだ」
指を捻り、玉鼎はさらに吐息を詰めさせた。
「私の、楊戩。私に預けられた魂」
苛まれてぷくりと赤くなった胸に、玉鼎に唇が落ちた。
「私の庇護の元にある内は、おまえを食らい、犯すのは私の自由に」
囁きが熱い。
体の上に広がる玉鼎の髪をかき分け、楊戩は師を抱きしめた。
「もっと・・・」
「楊戩」
「食らって、下さい・・・」
自身が発した言葉に、体がさらに熱くなった。
瞳を開けて玉鼎を見つめ続ける事が辛くなり、ぎゅっと固く閉じる。
「無論、血の一滴まで」
玉鼎の独占欲を感じて、楊戩は嬉しかった。それは恐ろしくもあるが、玉鼎のこういった部分も
含めて、愛したい。
「・・・はい、全てを、師匠に」
楊戩が答えると、胸に落ちた唇とともに、体中を玉鼎の手が探ってきた。
「今日は随分と大人しい。恥じらい、嫌がりはせぬのか?」
「したくないのです、多分」
「今宵だけ?」
意地悪な問いかけに、楊戩は自ら足を開く事で答えた。
「・・・わかりません。でも、僕は師匠が好きです。それだけではいけませんか?」
性器へ向けられた視線が感じられた。
「・・・・可愛い、楊戩」
囁きと同時に、玉鼎は楊戩の性器に指を絡めた。軽く扱かれるだけで、高みへと導かれ、射精への
欲求が起こった。
朧とはいえ、光の中に裸体を曝しているというのに、どうしてこんなにはしたない思いを抱いてしまうのか。
(師匠が抱いて下さるからだ)
「まだ・・・駄目です、師匠・・・!」
「何故?」
遮ろうと動いた楊戩の手を、玉鼎は退けた。覗いてみれば、翠玉の瞳は熱く潤んでいる。
「僕だけでは・・・、嫌・・・なかに・・・して、中に下さい・・・っ」
幾度となく玉鼎を受け入れた場所が、まだ触れられていないのに疼いた。
自分で指を入れて、かき乱したいほどの疼きだった。だが、そこは玉鼎のものだから、楊戩が好きに
触れてはいけないのだ。
「師匠、お願いです・・・」
「月明りにでも絆されたか。今宵のおまえには驚かされる。そのように強請ってくるとは」
玉鼎は小さく笑うと、楊戩の後孔を探った。
「あうっ!!」
「どうしようか」
「今すぐ、下さい、師匠の・・・」
「それでは、おまえが痛いだけだ」
「痛くても・・・」
楊戩がもどかし気に身を捩った。
「構いませんから」
答えた時には、楊戩の腰は抱え上げられていた。
玉鼎が与えられる。
「ああ・・・・っ」
「力を抜きなさい。慣らさぬでは、さすがにきついな」
苦痛に顔を歪めてはいたものの、楊戩は必死に首を振った。
耐え難いほどの痛みだったが、急な挿入は楊戩の全てを満たした。
「師匠・・・」
受け入れたものは硬く、熱かった。しかも中でさらに大きくなっていくのがわかる。玉鼎もまた、
感じてくれているのがわかって、嬉しかった。
食らわれる。
今宵も、また。
愛しているという言葉を聞きながら。


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