上体を支える腕が、もう限界だとばかりに折れた。頭は寝台に突っ伏してしまったが、捕えられた
下肢は高く残されてしまった。
「あ、あ、あ・・・」
脱力した体に穿たれる衝撃はきつい。揺さぶられる度に増した痛みが背筋を駆け上がった。
痛み。そう、楊ゼンはこれに慣れる事が出来ない。
「感じてはいるのにね」
太乙が言う。
触れられたモノは、後ろからの刺激だけで立ち上がっていた。握ってくる太乙の手を濡らし、
切ない震えを起こす。
「私では駄目なのかな? でも師兄との時もさして変わらないようだけど」
二、三度扱いただけであっさり楊ゼンは弾けた。解放を迎えたせいで、ますますぐったりした楊ゼン
から太乙は貫いていたモノを引き抜き、体を仰向けに転がした。
太乙は未だ硬度を保っている。それを目にした青い瞳が暗く翳った。
「止めて、下さい・・・。もう・・・」
くすりと笑って太乙がつんとした楊ゼンの鼻先を突いた。
「駄・目」
しゃくりあげるのを見ながら子供らしさを残す筋肉の薄い足を抱えた。
「腰掲げるのは無理だよね」
胸に着くほど折り曲げさせてから、大きく膝を割らせる。秘所が天を向き、太乙の下でひくりと震えた。
背が縮まるこの姿は、届く限りの最奥まで到達されるから、一番辛い。
楊ゼンからぼろぼろっと涙がこぼれた。
「いっぱい泣かない。私が君を苛めているみたいじゃないか」
目元に口付けた太乙が優しく涙を吸い取る。
「双方が楽しむのがSEXだよ」
濡れた頬を舌で辿り降り、唇を太乙は奪った。
「ん・・・」
息が封じられる。淫らな音を立てての接吻。あっさり割られた唇に熱い舌が侵入する。絡み合う
ディ−プ・キス。楊ゼンが苦しさに喘ぎ出すのを図って、太乙は再び自身を挿入した。
「−−−!!」
仰け反る肩を押さえつける。唇は合わせたままだ。
ぎちりと締め上げてくる強さは楊ゼンの味わっている痛みに比例している。太乙もまた、苦痛を
覚えているが、楊ゼンを抱く事を止める気にはならなかった。
不思議だと思う。
今まで太乙は玉鼎に抱かれてきた。受け入れる快感を知っている。楊ゼンのように苦しみはしない。
そして、抱かれ続けた身が、何故楊ゼンだと抱きたくなるのか。
玉鼎との間に入り込んだ楊ゼンに、嫉妬を起こして当然なのに、それよりこうして抱いて愛おしんで
やりたいのだ。
・・・玉鼎も楊ゼンを抱く。もともと楊ゼンは、玉鼎を独り占めしたくて、間に割って入ったのだから、
彼が抱かれるのは当然だ。
でも、玉鼎はどう考えているのだろう。弟子と交わる事に。
「ああああっ!!」
接吻が終わった途端、楊ゼンは叫んでいた。そうする事で加えられる痛みを紛らわせるかのように。
狭い楊ゼンの秘所は一度ではとても全てを含ませる事など出来ない。引いては突き、じょじょに深く
加えさせていく。
「あ、うううっ、やあ・・・」
「君の願いがされてる途中で叶った事あった?」
太乙がきゅっと乳首を捩った。
「くうっ」
びくっと楊ゼンが撓る。指で挟んで擦り合わせ、薄く太乙が笑った。
「ねえ、なかったよね。そろそろ無駄なお願いは止めた方がいいよ」
内臓が押し上げられた。太乙のモノが下腹の内側をいっぱいに満たし、収められている臓器を
圧迫する。
「苦・・・しっ」
「私も、だよ」
「では、どうして・・・、」
「それでも、君を抱く事を止められない」
太乙が頭を振り、肩口で切り揃えられた髪がぱさりと波打った。


三人分の茶をグラスに入れてきた太乙は、書斎の床に座ってまどろんでいる楊ゼンに気付いた。
机についている玉鼎の足に凭れている寝顔は幼くあどけない。
「一人分無駄になったかも」
指で頬を突いても、楊ゼンが起きる様子はなかった。
連夜の交わりに疲れているのがわかっているから、無理に起こす事はせず、太乙は玉鼎の向かい
に座った。
「外は紅葉がきれいだよ。三人で見に行かない?」
「そうだな」
玉鼎が顔を上げ、ゆったりとグラスを手にした。
「無理はさせていないか?」
「大丈夫。怪我一つ負わせていないから。師兄との修行の方が傷だらけになってるよ?」
二人で楊ゼンを愛おしむ。この時間が、いい。
「・・・ん・・・」
ふいに楊ゼンが身じろいだ。バランスを崩して横に倒れかかるのを、玉鼎が抱き起こした。
「ししょお・・・?」
膝に座らされた楊ゼンは手を伸ばして自分のカップを取った。
猫舌なせいですぐには飲めず、息を吹きかけて冷ましていた楊ゼンだっかが、突然びくんと
強張った。
「あ・・・」
カップを握る両手がかたかた震えている。
「どうした?」
玉鼎がささやくのを、太乙は頬杖をついて見つめた。
俯いた楊ゼンの顔から項が赤く染まっている。玉鼎に敏感な箇所を弄られて感じているはず
なのに、必死でそれを押さえこもうとしているのだ。
「熱いな。太乙に抱かれた名残が消えていないようだ」
「勿論。激しく抱いてやったからね。師兄は昨日玉虚宮に行っていたから、楊ゼンが淋しくない
ように」
堪らずに泣き出した楊ゼンの涙を拭う為に、太乙は絹布を手に立ち上がった。

今回は太乙の目線。何となく続きます。