「あ、あ、あ・・・」
切ない楊ゼンの声が響き、重なるように濡れた音がする。
指一本でもきつい楊ゼンに二本目は困難を要し、太乙が甘い柑橘の匂いがする香油を
垂らせたせいだ。
それども、引き攣れる痛みは酷かった。幾度力を抜くよう命じられても、かちかちに強張った
楊ゼンはとても従えなかった。
「師匠、もうやだ・・・嫌・・・」
涙で濡れた瞳を上げると、玉鼎の視線と絡んだ。ずっと楊ゼンを見つめていたのだろう。
ゆったりと優しく宥めながらも、口のした言葉はきつかった。
「駄目だ。これぐらいを堪えられなくてどうする」
同調して太乙が指の腹で内壁を擦った。
「あああっ」
「太乙、代われ」
「うん。少しふっくらとはしてきたよ。どのみちこんな状態では、痛い事に変わりようがないから、
受け入れさせちゃう?」
指が抜かれた。ようやく敏感な箇所を嬲られる事を止まって、楊ゼンが安堵にか、ひくりと震
えた。広げられていた所が見る間に慎みを取り戻していく。
「上、向こうか」
太乙が楊ゼンの腰を掴んで体を返させた。柔らかいスプリングに背が沈んだ。
「見せて」
「太乙様!」
立てた膝が力ずくで割られた。
「嫌あっ」
「ふーん、不感症ではないね。あまり痛がるから心配してた」
両足の狭間にあるモノを突き、太乙はにっこり笑った。
「ひあ、んん」
「師兄、1回達かせるよ。それから交代」
「ああ」
玉鼎が返事を返すと同時に握られた。張り詰めていた楊ゼンのモノは凄まじい刺激を伝えてきた。
「あうううっ!」
楊ゼンが大きく反り返った。
扱かれ始めると、未知の快感が次々に湧き起こって、楊ゼンは恐怖に襲われた。
「怖い、止め、怖いっ」
「どこかに飛んでいってしまいそうかい?」
意識の高ぶりを太乙が言い当てる。
「弾けてなくなってしまいそうで」
「ああ・・・」
「怖いなら掴まっていなさい」
「師匠・・・」
楊ゼンが身を捩って玉鼎に縋りついた。
「大丈夫だ。男なら誰でも知る事だ。今だけは理性も矜持も要らぬ。与えられる物に心も、体も、
委ねなさい」
余計な物が映らないよう、玉鼎が掌で楊ゼンの視界を閉ざした。
楊ゼンが啜り上げた。
源を妖しの存在に持つ者の性で、光を失えば自然、動きは緩慢になる。怯え故の抵抗も、また。
玉鼎が目で太乙を促した。答えて頷き、極めさせるべく太乙は指に力を入れた。
初めての吐精はあっけないほどだった。
散らないよう受け止めた太乙が、濡れた手を楊ゼンに翳した。
「君のだよ、ほら、見て」
言われて顔を上げた楊ゼンだったが、太乙が絡める白い汚れに堪らずすぐに逸らせてしまった。
それ以上苛める気はないようで、布を手繰り寄せた太乙が指を拭う。
「疲れたかと思うけど・・・まだ終わりじゃないよ」
「え・・・?」
「こっち、放り出したまま」
太乙が秘所に触れてきた。先程の事をまたされるのかと、楊ゼンが蒼ざめる。
「私達には君のここが必要なんだ」
脇の下から腕を回して楊ゼンを起こし、玉鼎に向き合わせる。
「師兄の膝にお座り」
「おいで、楊ゼン」
手が差し伸べられた。
「おまえを満たしてやろう」
怯えが大きくならないよう、しっかり抱きしめてやりながら、玉鼎は着物の裾を寛げた。
「ああ・・・ひ、あ」
体が膝立ち近くまで浮かされ、太乙によってさんざん嬲られた場所に固いモノが押し当てられる。
「何、や・・・っ」
「じっとしなさい」
位置を確実に定めさせ、背を摩って囁く。
「さあ、腰を落しなさい」
「そんな事・・・」
楊ゼンにもわかる。従えば貫かれてしまう事を。
嫌々と首を振る楊ゼンの方を太乙が掴んだ。
「ひ・・・っ」
「初めてだから」
太乙もまた、楊ゼンに抱きしめ、力を掛けて押し落とした。
「−−−−!!」
あまりの痛みに悲鳴は音として発せられもしなかった。見開かれた瞳からはぽろぽろと大きな
涙が滴り落ちた。
玉鼎と太乙に挟まれ、未だ幼さを残す体がびくびく痙攣した。
「まだ痛みだけかもしれないけど・・・いずれ快感に変わる」
太乙の呟きにも似た声が最後に聞こえた。
すとんと闇に落ちていく楊ゼンは、玉鼎の濡れた、初めて知る煌めきを浮かべる瞳に気付いた。
「気絶しちゃったね」
くすりと笑って太乙が楊ゼンの首筋に接吻した。
「これからずっと可愛がってあげる。許されるなら未来永劫。ねえ、師兄」
楊ゼンの内部に熱く迸らせた玉鼎が、ずるりと体を離した。
「私もしたかったけど・・・」
玉鼎が負担の掛からない姿勢で横たえさせたのに、異議は言わずに、きゅっと楊ゼン
を抱きしめた。
「今日は川の字で許してあげる。お休み」
太乙は色の薄い髪を揺らせて、玉鼎を誘った。

とっても時間がかかってしまいましたが、暗夜シリーズ、完結です。