蒼天を映す楊ゼンの長い髪がふわりと揺れた。何時もなら艶めいた輝きと、水の
流れを思わせる髪も、今は体が纏う濃い疲労と同調して、乱れほつれていた。
瞼の周囲が重く疼く。ともすれば意識を失ってしまうほど消耗しているのに、不自然な
姿勢を強いられているせいで、それも叶いはしない。
「−−−楊ゼン」
光源のほとんどない部屋に声が響いたのと同時に、髪が掴まれ俯いた顔を上げさせ
られた。
もういくら泣いたかわからない青い煌めきが、引き攣れる痛みを浮かべつつ、前方を
見つめた。
「ここが気に入ったか?」
「はっ、あああ、んっ!」
乳首が捩られて、脱力下身体が強張った。摘み取られそうなほどきつく爪は食い込み、
頭の中が白く濁る。
逃げる事は出来ない。
萎えて、身を支えられずに折れた脚と、吊られた腕。天井の梁に通された鎖によって、
楊ゼンは腕を頭上に掲げたまま固定されていた。
「赦して、・・・」
「駄目だ」
玉鼎が背後に回り、細い体を抱きしめる。素肌に直接触れる絹に惨めさを覚えた
のか、楊ゼンから嗚咽が漏れた。
「こんなにしていて」
脚の始まりに息づくモノに玉鼎が指を這わせた。
「・・・ああ」
「体は心より正直だ。特におまえは」
耳元で苦笑されて、いたたまれなさに楊ゼンは首を振った。
「おまえの望みだ」
「どうして、僕・・・っ」
形を辿っていただけの指が、楊ゼンを掌に包み込んだ。とたんにびりっとした痺れが
走ったような気がして、未だ幼さが抜けきらない体が仰け反った。
玉鼎は何もしていない。ただそれを手にしているだけだというのに。
「師匠、離して、や・・・」
「何故?」
そう尋ねたいのは楊ゼンの方。
自身の体の反応には戸惑うばかり。
師の指を意識した事で、下半身に血が集まり、小ぶりなモノが姿を変えていく。
自由を奪われていれば隠しようもなく、堪らない羞恥に消えてしまいたくなってしまう。
しかし、楊ゼンの感情の動きなどとうに察知されていた。
ゆらりと身の内から発生したオーラが放出される事なく消えた。
「・・・!?」
「変化などさせはせぬ」
顎が捉えられ、振り向かされた。先には、闇色をした玉鼎の瞳があった。
「おまえを縛める物を良く見てみなさい」
言われて、頭上に目をやる。細い手首を食む枷に、びっしりと文字が書き付けられて
いるのがわかった。嵌められている枷には封が施されていたのだ。術までもが奪われて
いた事に、楊ゼンが愕然とする。
「私の手の内から何処へも行けはしない。行かせもしない」
「嫌、いやあっ」
耳朶を噛まれ、ひくっと震えた瞬間、玉鼎の顎を捉えていた指が下へ落ち、楊ゼンの
肉を貫いた。
「い、痛っ、あ、くううっ!!」
楊ゼンの苦鳴にも耳を貸さず、揃えた指を根元まで飲み込ませる。乾いたそこは固く
玉鼎に絡んだ。
「長く使っていないせいで、忘れてしまったようだな。私が開き、男を覚えさせたこの
体は・・・。満たされない疼きにも気付かないほどに」
抉る指はすぐに抜かれたが、変わりに押しあてられたのは、男を象った張り型だった。
「師匠、そんなの、無理っ・・・、い、あああっ」
体が裂ける音がしたような錯覚が起こった。それほど痛みは激しかった。衝撃に堪え
ようと縛める鎖を掴みかけたが、ふいに体を吊る力が失せた。
梁から外された鎖とともに、楊ゼンが床に崩れる。
「あ、あ・・・」
「後ろで感じる事は覚えているようだ」
楊ゼンの横に膝をついた玉鼎が、硬度を失っていないモノに唇を寄せた。
熱い口中に含まれて、秘所の痛みも飛ぶほどの快楽が、脳に突き刺さった。
「嫌、嫌、んんんっ」
昇りつめさせれらたのは瞬く間。宙に空しく舞うはずの青い迸りは、しかし、玉鼎に
全て受け止められた。
「止めて下さい、そんなっ」
玉鼎を止めようと身を捩ったとたん、咥えさせられた物が凄まじいまでの痛みを与えた。
「く・・・っ」
「達った後では辛いばかりだな」
ふっと首を傾げ、玉鼎がそれを引き抜いた。
苦しげな洗い呼吸が漏れる楊ゼンの頭を、玉鼎は膝に抱えた。
「師匠・・・」
声が震えていた。
「どうした?」
「僕が飢えていると思われるのでしたら・・・、どうして、師匠はくださらない・・・?」
「いきなりで私のモノに堪えられるとでも?」
玉鼎の指が喉を擽った。
子猫がそうされて喜ぶのと同じ心地良さが楊ゼンに満ちた。
「・・・はい。以前の僕が出来た事なのですから」
洞府に帰った身が責められた理由はもう、わかっていた。玉鼎は何時も、隠しておきたい
事全てに気付き、曝け出させるのだ。
「師匠でないと駄目なのです。知っておいでだと思いますが・・・」
手を支えに玉鼎の膝から離れた楊ゼンが、跪いて靴先に口付けた。
「痛みと快楽を下さるなら、どうか、師匠に」
「・・・わかった」
玉鼎が立ち上がるのを、潤んだ青い瞳が追った。

ちょっとお久の純粋な玉楊読みきり。師匠は変わらず労わり責めなのです。
突発なので、少し・・・いえかなり意味不明な話かも・・・(汗)
玉楊を喚起して下さった高千穂ジョン様にこれは差し上げますね。
要らないですか?
ところで、今回、裏小説60本目です。企画物とか女の子とか太乙受けとか
遙かとか、合わせたら既に100本を越えていたり。私って馬鹿かも、と
思ってしまいます。