玉鼎の手が下肢に降りた時、堪えきれなくなった涙がぽたりと落ちた。
湯の面にそれは波紋を描いて広がった。
一つ落ちると、涙は止まる事を忘れたように、次々と楊ゼンの大きな瞳から流れた。
形を辿られて体が震え、握られると怖れに竦んだ。恥ずべき場所を他者に触れられて、
視界がくらむほどの羞恥を覚える。
「嫌、止めて・・・」
涙ながらの哀願は消え入るほど小さく、玉鼎に届いたかどうか。
「んん・・・っ」
先端に開いた可憐な裂け目に引っかけるように爪が食い込んだ。とたん、電流が走った
ように楊ゼンが跳ねた。
「やああっ!」
体内を巡る未知の感覚。
怖い!!
意識が霞む。自我が消え去り、とろけるように何もわからなくなってしまいそうになるのが
恐ろしい!
「う・・・え・・・っ」
すすり泣くと、玉鼎が抱きしめてきた。湯の中にあっても、彼の温もりが伝わるようだった。
項に優しい接吻が与えられた。
「何を恐れる? 私にされているからおまえは感じているのだろう?」
「え・・・?」
捉えられているモノは既に姿を変えつつあった。
玉鼎は杯に酒を満たして取り上げた。一口含んでから、楊ゼンの口元に宛がう。
嬲るての動きはそのままだったせいで、初めての酒であっても、味わえる状態ではとても
なかった。
つん、と鼻につく刺激と、喉を焼く熱さと・・・。
苦しくて、楊ゼンは咽てしまい、大半は唇から溢れた。
美味しいなどとは思えなかった。
「もう、いいです・・・」
喘ぎ喘ぎの言葉で玉鼎の杯を拒む。このような物を何故師は好むのか、楊ゼンはわからな
かった。
「酒は要らぬか?」
玉鼎が苦笑した。32
「離して・・・」
まだ子供だと、玉鼎は言いたかっただけなのだろうだから。何時までも、裸でいるのがいた
たまれず、解放を楊ゼンが求めた。
「駄目だ」
「どうして・・・。僕が子供だって事は良くわかりました・・・。もう、わかりましたから・・・、ああっ」
いきなり強く握られて、痛みに悲鳴が上がる。
「・・・これだけではわからぬな」
耳元に囁かれる言葉はまだ、意地悪で・・・。
楊ゼンは力いっぱいからだを捩って玉鼎の腕から逃げ出した。触れられていた場所がずきんと
痛んだ。
ともすれば崩れてしまいそうになる膝を宥め、楊ゼンは湯を掻き分けて進む。
「嫌い! 師匠なんか!!」
叫んでも、師はゆったりと笑むだけだった。
「嫌い、嫌い、嫌い!」
少しでも離れようと楊ゼンは奥の暗がりに後退った。
「楊ゼン、戻りなさい」
呼びかけられる。
「嫌! ・・・」
玉鼎の声は、背筋に響くように染みた。
「・・・楊ゼン」
「酷い事をしないで・・・」
足がもう動かなかった。水音がして、玉鼎が立ち上がった事がわかる。
それでも、動けなかった。
手を引かれて楊ゼンは元の場所へ戻された。湯が緩く打ち寄せる際に座らせ、玉鼎は前に
膝をついた。
「や、何を・・・っ、いやあああっ」
温かい口中に含まれて、楊ゼンが悲鳴した。
「止めて、止めてっ!」
玉鼎の長い髪を掴んで楊ゼンが涙を流して制止を訴える。巧みに動く舌に絡められ、瞬く間に
追い上げられていってしまう。
「離して、もう、無理・・・」
精神が陥落してしまいそうで、楊ゼンは唇をきつく噛み締めた。
ついと玉鼎が顔を上げた。
快楽を覚えつつも、流される事を厭う心に満足げに見つめる。この高いプライドは生来の
物に加え、玉鼎が教えたのだ。
「では、手で達かせてやろう。どうにかせねば、何時までも終わらぬだろう?」
楊ゼンに自身で慰める事を教えるつもりも、赦すつもりも玉鼎はなかった。
「辛いか?」
「・・・はい」
顔を背け、楊ゼンが返事を返した。首筋までが赤く染まっている。
「そうか」
「ああ・・・っ」
先程とは違って、優しく包まれ解放に向かって導かれていく。堪える事さえ出来ずに、
初めての吐精は訪れた。
「はあっ、あ・・・」
白濁としたぬめりは、大量の湧き出る湯に洗い流されてしまった。
全身の力が抜けてしまって、楊ゼンはくたりと玉鼎にしなだれた。体を支えたいのに、骨が
溶けてしまったように力が入らないのだ。
「湯にも当てられたか?」
楊ゼンは首を振った。振ったつもりだったが、酷く緩慢な動きにしかならなかった。
「続きは寝台の上でしてやろう」
玉鼎が笑み、成長しきっていない小柄な体を抱き上げた。

後、もう一回続きます。楊ゼンは頂かれてしまうのですねv 何故楊ゼンが好きなのか、原点に
帰ってらぶらぶをやってみる事にしました。師匠は何時もの師匠と別人かも・・・。