風は刺すほどに冷たいというのに、楊ゼンは汗ばんでいた。つつっと流れた一筋が、
目に入って痛んだ。
「は・・・あ・・・」
「もう、限界?」
普賢がチラリと楊ゼンを見上げる。先程と同じ位置で、木の根元に腰掛け、撮り終えた
写真の束を捲り、溜め息を吐いた。
「つまらない写りばっかりだなあ。ちっとも艶っぽくない」
楊ゼンの顎を取り、上向かせる。ひどく震えているのは手を通してすぐにわかった。
「もっといい顔してよ。今日の記念に」
「普、賢、様・・・・」
熱い吐息が普賢にかかった。楊ゼンが頭を動かし、離れた普賢の掌に口付ける。
「へえ・・・哀願の為?」
木に結わえる紐を解き、楊ゼンを地に突き倒した。膝立ちの姿勢から解放されたものの、
未だ両手首は合わせて縛められていた。
「それは手にやるんじゃなくて、足にするんだよ?」
普賢は蹲る楊ゼンの前に右足を出した。
「やってごらんよ、さあ」
深く、楊ゼンは項垂れた。濡れて赤く光る唇が、普賢の靴に降りた。
「あははっ! プライドの塊みたいな君が、ずいぶんあっさりした物だね」
楊ゼンの肩に足を掛け、仰向けに普賢が蹴り転がした。転がされた体が身じろぐより早く、
上から腹を踏みつける。
「はううっ・・・」
楊ゼンの目の前が真っ白に染まった。出口を求めて体内を熱い奔流が暴れている。押し
留めている場所は、痙攣さえ起こしていた。
「ねえ、這って見せてよ。苦しい所」
小ぶりな靴先に、ぐぐ、と力が入る。
「ううっ、く・・・う・・・」
「哀願するほどだから、僕の気を損ねたりしないよね。それと・・・君の決心のほど、態度で
表してよ」
楊ゼンが動いたので、普賢は一歩下がった。腹部に衝撃を与えないよう、ゆっくり這いつく
ばっていくのを、冷笑して見つめる。
「もっと脚、開いて」
普賢は命じ、楊ゼンの横に膝を付いた。
「ぶるぶるしてる」
「ひあっ!」
指が触れてきて楊ゼンは悲鳴した。
「やっ、いやっ、離して、ああうっ」
「腰振って僕を誘ってるの? どんなにしても、僕、君をやる気なんてこれっぽっちも起こらない。
下手に動くと、それだけ、余計に辛くなると思うけどなあ」
引き結ばれた蕾を揉んでみるが、ぴっちり閉じられていて、髪の毛一筋すら通りそうになかった。
「すごいね。他の人間だったら、とっくに陥落してる」
手が秘裂から逸れ、その下で縮こまっているモノと双果が、握り、包まれる。
「ああ、あ・・・」
急所を弄られる事で、抜けかけてしまう力を、楊ゼンは必死に込めた。堪える事で食いしばった
歯がきりっと鳴る。
「君の強情さがたまらない。プライドが高ければ高いほど、僕は楽しい。ほら、生意気な仔犬
とかってついつい苛めちゃったりしない?」
楊ゼンの腰が落ちないよう支え、さらに普賢は写真を撮った。日暮れ近くなった空、全身にフラッシュ
が光る度、楊ゼンは身を竦ませた。
二桁は悠にいった数の写真を、普賢がきれいに揃えた。
すとんと腰を下ろし、這った楊ゼンの頭を膝に乗せる。蒼天の髪が乱れて広がった。普賢は、
着物に流れる涙がじんわりと染みるのを見た。
「さっきよりはましなのが出来たから、許してあげる」
普賢がくすすっと笑んだ。
「もう、止めないから。というより無理でしょ? やったら? 僕が全部原子に還元してあげるから、
跡も残らないよ」
「向こうへ・・・どこかへ行って下さい!」
「じゃあ誰が後始末するの?」
温かく柔らかい普賢の手が、楊ゼンの頬をそっと包んだ。
「我慢してた分、気持ちいいんじゃない? きっと君はすごい快感、得てしまう。ね、きっと・・・」
軽く頬に添えられているだけなのに、押さえつけられているように楊ゼンは動けなかった。普賢の
横にふっと浮かんだ宝貝が、楊ゼンの背に下り、ころころ転がった。
「ん・・・」
楊ゼンが仰け反った。
「少し、力を加えてあげようか? 君がしやすいように」
太極符印に普賢の気が集中した。
「な、嫌、・・・ああ!!」
啜り泣きが楊ゼンから溢れた・・・。


泣き続ける楊ゼンに、普賢は再び棒を捩じ入れた。
「あああっ!」
「屋敷に戻ろうか。夜になるし、朝まで時間はたっぷりあるし・・・ね」
楊ゼンの肩を抱きしめ、その耳元にそっと囁く。
「これからも、時々は遊んで貰うよ。僕はとっても退屈してるんだ。九宮山は僕一人きりだし、まだ
弟子を取ろうって気にもまだならないかな」
「嫌・・・」
「何か言った? 楊ゼン」
普賢が掻き上げた髪の間から覗く首筋に噛み付いた。
「ひっ、痛い! や、め・・・」
「仲良く、遊ぼうね。君がうんって言ってくれたら、あの写真は僕の道府の中だけに置いておくし、
椿の事も、口を噤んであげる」
にっこり笑んだ唇から舌が現れ、白い項を舐めた。
「いいでしょ・・・?」
「・・・はい・・・」
「嬉しい。可愛い僕の玩具」
くすくすと・・・優しげな笑みだけが、夕闇迫る空に拡散していった。


                                                   終

これで終わりです。物足りなかったですか?(もういいって・・・)
まだ続きのネーム(椿、落つる)を切ってはあるのですが、HPで延々こんなのを
垂れ流すのも恥ずかしいので、本にしちゃうかも、です。