注:ブラッディな話が嫌いな方はここは読まないで帰られる事をお奨めします。
      これは、タイトル横の文を読まず、また意味を調べてもわからなかった方へ
      のコメントです。
                     

玉鼎がナイフを研いでいるのを、楊ゼンは横でじっと眺めていた。段々ぴかぴかと
輝いてくる。
柄には細かい細工が彫られ、ナイフ自体は非常に優美だった。ただ、古い物だと
いうのが伺われた。刃は銀に光る。
「何に使われるのですか?」
幼い声で楊ゼンが尋ねた。首を傾げると、長くなり始めた髪がさらりと揺れた。
「すぐにわかる」
誕生日のプレゼントかな? と最初楊ゼンは思った。今日、8歳になったのだ。
しかし、ナイフが欲しいなんて、言った覚えは楊ゼンにはなかった。
ピンポンとドアフォンが鳴った。
「太乙だろう」
顔も上げずに玉鼎が言う。
楊ゼンが不快そうな顔をした。二人で暮らす金霞洞に彼の仙は何時でも入り
込んでくるのだ。
「楊ゼン、彼を迎えて、茶を煎れてきなさい」
「師匠が言われるなら」
ぷいと顔を背けて、楊ゼンは出ていった。


「こんにちは、師兄。10時きっかり、約束通り」
太乙が玉鼎の横の椅子に腰を降ろした。
「すごいナイフだね、切れ味良さそう。・・・ねえ、本当にするの?」
「ああ」
「師兄の国の風習だろうけど、ここ華大陸ではしないよ?」
「私が生まれたのも、西域とはいえ、大陸の一部だ」
「私の問題じゃない。楊ゼンは師兄の弟子だし、私はあの生意気な子が好き
でもないから。きっと持って来るお茶にも私のだけ塩が入れてあったりするんだよ」
軽い足音が近づいた。
「茶を飲んだら始める。サロンが明るいからそこを使う」
「ロープ貸してくれる? 子供だけど、全身で抵抗されたら、押さえるの大変だ」
「敷き布とともに用意してある」
「ならいいけど。私でも手伝える」
交わされる会話は、楊ゼンが扉を開いた事で中断した。


玉鼎に手を引かれて、楊ゼンは陽の光が天窓から明るく差し込むサロンへ連れ
られた。少し遅れて太乙もついて来る。
何時もはソファーと合わせた小さいテーブルがあるだけの部屋に、今は大きな台
が置かれていた」
「師匠?」
「あそこへ行きなさい」
「どうして?」
不審気に楊ゼンが尋ねた。
「聞こえなかったか?」
「・・・はい」
近づくと、今度は上に乗るように命じられた。所在無く端に腰掛けた楊ゼンを、玉鼎
が仰向けに倒した。
蒼い髪がふわりと広がった。
「−−太乙」
「わかった」
「え・・・?」
頭の上から太乙が楊ゼンを押さえつけた。
「何をされるのですか! 離して下さい!」
太乙を嫌がって、楊ゼンが身を捩った。
「やっぱりロープが必要だ」
言葉と同時に、細い手首にくるくると紐が巻かれた。そのまま引っぱり、台の脚に
括りつける。
「止めて下さい、師匠!」
「大人しくしなさい。すぐに終わる」
上半身の自由を楊ゼンは失い、下半身だけを押さえれば太乙は良かった。膝が
立てさせられ、丈の長い道服の裾が捲くられる。
「いや−−−!!」
下肢が剥き出された。冷たい外気が内腿に触れ、光の下に晒されて震えた。そんな
場所を、湯殿でもないのに、曝け出され、楊ゼンが羞恥に悲鳴した。
「ひっ!」
冷たい玉鼎の手が、幼いモノを握った。
「嫌、やっ、師匠、何を・・・ッ、離して下さい!」
顔を上げて下半身を見ようとしても、たくし上げられた着物が邪魔で叶わなかった。
だから、玉鼎の横に先程のナイフがある事も知りようがなかった。
「8つを数えた子供に、割礼を施す。それが子供時代からの一回目の脱皮だ」
玉鼎が言葉を紡いだ。
「だ、そうだよ」
太乙が押さえる手に力を加えた。
「じっとしてないと、危ないからね」
割礼という単語を楊ゼンは知らない。ただ、下半身に受ける二人の視線が突き刺さる
ように感じられた。
何時までこうして、恥ずかしい思いをしなけらばならないのか。
瞳に涙が滲んだ。どうして、何時も優しい師がこんな事をするのかがわからなかった。
涙ぐむ楊ゼンを宥めながら、玉鼎がナイフを取り上げる。そのまま、鋭い切っ先を、
手にした楊ゼンのモノの先端に宛がった。
「ひっ、師匠、冷た・・・っ、あ、あ−−−!!!」
冷たいと思った瞬間、凄まじい痛みが楊ゼンを襲った。目の前が真っ白に霞むほどの
激痛が駆け巡る。
「痛い!痛いっ!、や、痛い−−−」
痛みは引き攣れ、何度も起こり、終わりはなかった。叫んだ唇が逆に噛み締めないよう
太乙は阻む。
玉鼎が血に濡れた手を離した。布で楊ゼンを包み、きつく握って、止血する。
既に楊ゼンは意識を失っている。
「終わった?」
無言で玉鼎は血に塗れた楊ゼンの包皮を見せた。切り口はきれいで、ナイフの鋭さを
証明していた。

8つの誕生日。
楊ゼンが純粋な子供時代を終わらせた、日。

割礼とは男の子の包皮切除の事です。宗教的儀礼です。
封神の時代の頃、ユーラシアの西、地中海東岸から発生した習慣です。

馨子様へ。
先日言っていた、楊ゼンを切りたい、という私の発言はこの事でした。
ほら、今日は成人式だし。
ああ、痛々しい話を書いてしまいました。だってこれで楊ゼンは包●では絶対
なくなtったんですよ(馬鹿な話書いてますってわかってるのですけど)