「そろそろ?」
太乙が背を押して、楊ゼンを倒した。
「たっぷり愛してあげる」
白い肌を撫ぜながら、うっすらと太乙が笑う。楊ゼンは声もなく、ただ、見開いた
瞳で、太乙を見上げた。
「楊ゼンをうつ伏せに固定させなさい、太乙」
「師兄?」
玉鼎が仰向いて、浅い吐息を繰り返す楊ゼンの唇に触れた。
「おまえはここを使うといい。私が仕込んだ唇だ。きっと気にいる」
頭上で交わされる会話に、楊ゼンは体を震わせた。
上と下を同時に使われる。まるで受け入れる為でかに存在しているように。
「・・・だって、楊ゼン。じゃあ伏せに・・・というより、四つん這いになろうか」
「嫌、怖い・・・っ」
悲鳴を上げて楊ゼンが叫んだが、太乙は赦すはずもなかった。
「今さら駄々を言わない」
からかうように頬に触れ、まだ大人になりきらない小柄な楊ゼンを押さえつけた。
胸を抱きしめ、縮めた腕を無理矢理伸ばされる。逆らって丸めた体は引き伸ば
され、伏せさせられ、腰が掴まれて高く掲げさせられてしまった。
「やああっ!!!」
髪がぐいと掴まれた。
「何故、素直になれない?」
「師匠、嫌、こんなのは・・・」
「数えきれないほど、私はおまえを抱いた。抱かれる悦びをしっているのに、
拒み続けるとは」
「ならば、師匠だけで、お願いです!」
「私を邪魔者扱いとは酷いな」
太乙が尻肉を抓った。
「・・・つうっ」
「いただけない。私も君の事を赤子の頃から知っているんだよ? だから可愛
がってあげようというのに」
「楊ゼン」
玉鼎の声音がきつくなる。哀願を訴えるのを聞き入れず、二人が使いやすいよう、
体勢を整えた。
「−−−!!」
着物を寛げ、玉鼎が夜着に隠れていた自身を取り出した。天を衝いて立ち上がる
それを楊ゼンに宛がう。
楊ゼンの入口が竦んだ。侵入を拒もうと、儚い抵抗だった。玉鼎の力に敵うはずが
ないのに。
「ひっ、あ、あううっ!」
穿たれた瞬間、振られた楊ゼンの頭から、涙が飛び散った。
「痛い、痛い、止めて−ッ!」
「体から力を抜かないと、余計に辛くなるぞ」
太乙が涙に濡れた顔を上げさせた。指で辿り、噛み締めた唇をなぞる。
「私の、食い千切られてしまうんじゃない? 師兄」
「そう思うか?」
「まあね」
青い瞳の側に太乙は口付けた。涙を吸うと、塩辛くて、僅かに甘い味がした。
嫌がって楊ゼンが首を捩じらせる。
「目が溶けるほど泣いて。仕方のない子供だ、君は」
「楊ゼン、太乙に仕えなさい」
玉鼎が命じた。
「・・・や・・・っ」 
掠れ声で否定が返され、太乙は肩を竦めた。
「嫌みたいだよ」
「逆らえば、もっと酷い目に遭う事を楊ゼンは知っている。嫌がるのは言葉だけだ」
締め上げるきつさに、玉鼎はぐいと突いた。
「あ−−−っ!!」
悲鳴が迸った。
「さあ、やるんだ」
顎の境に玉鼎が背後から手を掛ける。口を閉じかけた楊ゼンはその指に阻まれた。
「う・・・、う・・・っ」
「師兄が仕込んだ唇、どんなかな?」
太乙はくすりと笑って、楊ゼンに含ませた。
「ぐううっ」
うめきが振動となる。
腰にずくんときて、太乙は楊ゼンの髪を掴んで固定させた。熱く包まれて、唾液が
ぬるりと絡まった。
舌が動いた。苦しみながらも、それでも楊ゼンは奉仕を始めていた。
仕込んだ、とはこの事か、と太乙は思った。意思より優先させて、男に仕える・・・。
「どうだ、太乙」
「さすがだね、師兄。気持ちいい。長く保ちそうにないよ」
太乙はいささか悔しげに言った。
「おまえの唇をくれるか?」
「うん、いいよ、師兄・・・」
上体を太乙が前に傾げた。
楊ゼンの上で、深い接吻が交わされる。ぴちゃりと響いた音は一体どこからなのか、
誰にもわからなかった。


楊ゼンを味わったモノを、楊ゼン自身の唇で清めさせ、二人は寝台に横になった。
泣きじゃくる体を腕を絡め、二人がかりで抱きしめる。
「これからも時々皆で楽しもうね、楊ゼン」
「そんな、・・・」
玉鼎に視線を移したが、師は何も言わず、楊ゼンを庇ってはくれなかった。
「や、僕・・・は、壊れてしまう・・・」
太乙が吹き出した。
「本当に私達が君を壊してしまうとでも? あはは、子供だ」
きゅっと抱く腕に力を入れる。
「生意気な所が隠れると、こんなに可愛くなるんだ、知らなかった」
「太乙、楊ゼンを休ませなさい。夢見る時間をそろそろ与えてやろう」
「うん」
抱きしめた腕は緩まなかったが、楊ゼンが寝息を立てるまで、言葉が交わされる事は
もう、なかった。


「・・・ねえ、楊ゼンの靴に私の持って来た花びらがついてたね、踏みにじったみたい
だ」
「この子は屋敷に白い花しか飾りはしない」
「そういえば。私も白いの持って来れば良かったのかな?」
小卓の花に、太乙は目をやった。
窓から差し込む月明かりに、ぼんやりと赤い花弁が照らされていた。