口をいっぱいに開いても、楊ゼンは全てを含む事など出来なかった。
かろうじて半ばまでを収めてはいるが、それでは師が満足してくれない
事も知っている。
  後頭部を押さえられれば、先端は口腔を越えて喉に突き刺さった。
今はまだ添えられているだけの手に何時力が加えられるのかと恐れ、
楊ゼンは必死で奉仕した。
  無駄な事かもしれない。
  楊ゼンに口淫をさせるのは、後唇で迎え入れる準備をさせる為だった
から。
  いくら仕えても、楊ゼンの唇だけではまず玉鼎を満たせはしない。
幼い体を開かれた直後から仕込まれたのだが・・・。
  玉鼎の指が楊ゼンの髪を掻き上げた。
 「辛いか?」
  伏せられた青い瞳は戸惑うように揺れた。舌が濡れた音を響かせる。
  きゅっと玉鼎に縋り、楊ゼンなりに否定を表す。
  冷えた体に熱い迸りが欲しかった。
  座した足元に蹲る楊ゼンを、玉鼎は見つめた。まだ大人になりきらない
体は繊細さを残し、細い肩は切なげに震えている。
  拙い奉仕を楽しみ(到底達く事は出来なかったが)時折喉奥の熱さを
味わってから、それを引き抜き、楊ゼンを這わせた。
  楊ゼンは湯の面に映る顔を背けた。隠しきれない快楽を表している
表情・・・。
 「は・・・うう−−っ、く、っ」
  挿入は最初から深かった。楊ゼンを知りぬいた動きが、抉り、追い上
げていく。
 「やああっ、苦しい!!」
  普段あれほど感じている痛みはなく、代わりに内臓を圧迫される苦しさ
と、体の中を出される異様な感覚が起こる。
  首を振る度に、水が染み込んだ髪が重く揺れた。
 「ん・・・、んっ、あっ、あうう・・・」
  玉鼎の抱き方は激しい。楊ゼンは呼吸を合わせる間もなく、いつでも
追い詰められてしまうのだ。
  穿たれるモノは炎を纏っている。
 「あ、師、師匠、・・・あああっ」
  手が、楊ゼンの下肢に触れた。入れられた衝撃に再び大きく立ち上が
ったモノがゆっくり愛撫される。
  もどかしさに楊ゼンの腰が蠢いた。受け入れる蕾にさらに負担を掛ける
事になっても、それでも。
 「あ、くっ、んんん!」
  迪送のきつさ。高ぶっているのは、玉鼎か、楊ゼンか。
  そして楊ゼンの意思とは関係なく、今度は達く事を止められた。
  塞き止められる苦しさを訴えても許されなかった。
  早く放出させると後が辛くなる。紛らわせる術が失われると、苦痛がいや
増すのだ。
  過ぎた快楽は痛みにすりかわり、楊ゼンから抱かれる悦びを奪う。
 「離して、どうして・・・」
 「もう少し我慢しなさい」
 「いやあ・・・」
  叫ぶだけの力はなく、楊ゼンはすすり泣いた。
  寒い戸外にいた事が、体を支えるのも難しいほど力を消耗させている。
 「う・・・、うう・・・っ」
  漏れる嗚咽を、玉鼎が宥めた。
 「師匠・・・」
 「私に全て委ねる事だ。体も、心も」
  指が楊ゼンの頬を擽った。
 「それが私がおまえに求めている事だ」
  腰を掴んだ手に力が入った。
 「あああ−−!」 
  先程のが優しいと思えるくらいに激しくなった動きに、楊ゼンの自我は
翻弄されて消えていく。
  何もわからなくなる。
  咥えている場所だけが体のように感じられる。
  委ねるという事。


  冷たい水が唇に与えられた。
 「ん・・・」
  体は再び湯で温められていた。
  ぼんやりと意識が戻ってくる。
 「炭と・・・橇・・・は?」
  楊ゼンは木炭を運んでいた。
 「私に言えば飛行獣を出してやる。雪の中をわざわざ出て行かなくて良い」
 「・・・はい」
  炭で汚れていた指はきれいに洗われていた。
  寒さは欠片も残ってはいない。抱かれてゆったり温もりに包まれている。
  奥深い疼きは愛された証。
  溜息を楊ゼンは吐いた。
 「どうした?」
 「もっと水を頂けますか?」
  グラスが宛がわれた。水は流れとなって楊ゼンに染みた。
 「雪はまだ降って・・・」
  言葉はふっと遮られた。
 「金霞洞にいる限り、おまえには関係ない」
 「そうですね」
  玉鼎が秘所に触れた。
 「師・・・?」
 「私の物が入ったままだ」
  瞳を楊ゼンは閉じて、僅かに腰を前へずらせた。


  氷が解ける季節まで、二人を閉じ込める、冬。