楊ゼンは切なく溜息を吐いた。熱っぽい体に床の冷たさが染みる。
  煌々と明かりが照らされる室内で、足を崩す事も許されず正座を続ける楊ゼンの
俯いた瞳には屹立したモノが映っていた。
  萎える兆しもない男の象徴は、触れてくれる手も唇もないのに、震えながら存在を
主張している。後ろ手に縛められた楊ゼンにはどうする事も出来ないのだ。
  否、例え自由であったとしても、自ら慰める事は禁じられている。それは楊ゼンが
性の目覚めを迎え、耐え切れない疼きに手を伸ばした時から命じられていた。玉鼎は
きつく折檻を与えてから言った。
「おまえ自身で快楽を得るのを許さぬ」 と。
 もう一度、楊ゼンは息を吐く。
 性感を刺激する薬をソレに直接注入されてから半刻ほど経過しただろうか。射精を
封じる為に根元には輪が嵌められ、先端に開いた鈴口には金串が挿入されて−−。
 放置されればその内に気がふれてしまうかもしれなかった。
 実際、時間と共に体内の熱は高くなり、全身は汗でぐっしょり濡れている。腿を擦り
合わせて身じろいでも、到底刺激は足りはしない。
  時々気を落ち着かせる為に深い呼吸をせる事だけが、楊ゼンに残された術だった。
  チリチリと内部から焼かれていく感覚に涙が浮かんだ。
「何故・・・」
  楊ゼンが呟く。
  任を帯びて下界へ降りた楊ゼンが、自身の力不足を補おうと師の開く道府に戻った
のはつい今朝方だった。
  金霞洞に入った途端、空間が歪むような違和感を覚え、気がつくと奥まった部屋に
連れ込まれていた。
  理由を請う楊ゼンに、玉鼎は冷たい一瞥を与えたでけで、着物を脱がせ薬を針で
刺した。
  それから・・・独りで・・・。
「師匠・・・」
  叫ぶ。
「助けて、お願いです・・・っ」
  閉じられた扉に向かって。
  流れ落ちた涙が石の床に染みを作った。


  人が近づく気配に、楊ゼンはゆっくり瞳を開いた。意識は朧に霞んでいる。何時の
間にか床に倒れていたようだ。深い藍の道服が見える。
「座っているように言ったはずだが」
  慌てて体を起こそうとしても力が入らず、空しく楊ゼンは身もがいた。
「辛そうだな」
「は・・・い・・・」
  ようやく頭だけをもたげられた楊ゼンを、玉鼎は無表情に見下ろした。
「お願いです、師匠・・・、達かせて・・・」
  楊ゼンが苦しげに哀願する。
「どうして、このような事をされるのですか・・・」
「思い当たりがないとは言わさぬ」
  すいと身を屈めた玉鼎が、突き刺さる金串を引き抜いた。
「ああぁ・・・うっ」
  尿道を擦られ、射精に近い衝撃に楊ゼンの脳が遊泳した。しかしそれは擬似でしかなく、
苦しさは余計につのった。
「もう、赦して・・・」
  すがりつくように玉鼎の足元にいざり、深く頭を下げる。縛められている手指が体の苛立ち
を発散させる為か、空しく開閉していた。
「それほど辛ければ這え。銜える物を与えてやろう」
  楊ゼンがさっと朱を刷いた。
「ほう、まだ羞恥を覚える理性があるか。這うも這わぬもおまえの問題だ。私は一向に構わ
ぬが」
「師匠・・・」
  視界が涙で曇った。体を前屈みに倒す。肩で状態を支え、腰だけを突き出して。
  玉鼎の嘲笑が耳に痛い。
「んんんっ」
  ひやりと冷たい指が秘所に触れてきた。辺りに甘い匂いが立ち込める。玉鼎が香油を
蕾に塗り、解しているのだ。
  ただ揉み解されるだけではとても足りず、楊ゼンの後唇は物欲しげに緩んだ。
「無様だな」
「−−−!!」
  いきなり三本の指が深々と肉壁を抉った。内部で鉤状に曲げられた指が、粘膜に爪を立てる。
「痛っ! ああ・・・う・・・っく、痛い・・・」
  血が玉鼎の指を伝った。曲げたままで指を引き抜き、代わりに玉で造られた張り型を宛がう。
  挿入の気配に楊ゼンが大きく震えた。
「入る物なら何でも良いようだな。淫らに腰を振りたて、おまえは男娼と何ら変わらない」
  玉鼎は知っていたのだ。楊ゼンが他の男に抱かれた事を。
  愕然と楊ゼンはした。
「おまえが人一倍孤独を嫌う事はわかっている・・・」
  張り型を操りながら玉鼎は言った。
「だが、それが他の男を寝台に引っぱり込む理由にはならない・・・違うか?」
  激しい抜き差しは楊ゼンの息を絶え絶えにさせる。頃合いを見計らい根元を封じる輪を取り払い
解放に追い上げていく。
「ああ−−−ッ」
  感極まった叫びをあげ、楊ゼンがぐらりと傾いだ。玉鼎の手は合わせて動きはしなかったので、
一層抉られる角度が増して、苦痛に背がぴんと反り返った。
「うううっ・・・」
  痛みに顔を歪めた楊ゼンを支える腕は、以前と何も変わらない。
  変わったのは楊ゼンの方か・・・?
「しばらくここにいなさい。私のもとに。おまえの淋しさが癒えるまで」
  楊ゼンは頷いた。
  手首の縛めが解かれる。後ろには異物が入ったままの惨めな姿で楊ゼンは自由を得た。
「自分でやってみなさい」
「・・・え?」
「おまえのモノに触れるのを許さぬが、後ろで達く分まで止めはしない。私が与えた薬はきつい。
すぐに次の波がくるだろう」
  それにも楊ゼンは頷き、長時間の束縛に痺れた手を伸ばした。


ルシル様のリクです。
楊ゼンが他の男に抱かれた事を知って、いたぶる玉鼎がテーマでした。
こんな感じでよろしかったでしょうか?
よろしければまたリクして下さいね。

・・・それにしても裏で玉楊は実に1ケ月ぶりというvv