ガチャン!
楊ゼンの手から滑った皿が、床で粉々になった。
「いい加減にしてくれない? これで何度目?」
肩に届く髪を揺らして、太乙が振り返った。
「君は全然手元に気をつけたりしないんだ」
「・・・してます」
楊ゼンがぷっと唇を尖らせた。
「それで?」
散らばった破片を手早く片付けながら、太乙がきつい瞳を向ける。
二人は今、台所仕事をしていた。
弟子として修行の他にすべき様々な日常の些事を、太乙は教えていた。
「これって全部、師兄が自分の国で求めた大事な物なんだよ」
玉鼎が知ったら怒るかもね、と言葉は続けられた。
しおしおと楊ゼンが項垂れる。幼い体はしょげると余計に小さく見えた。
「師匠には言わないで・・・」
「どうしようかな。片してしまえば、気づかれないかも。師兄は台所になんて
まず来ないから」
「太乙様」
「でもね」
太乙が顎に手をかけ、楊ゼンを上向かせた。
「それで終わりにしてしまえば、君はちっとも反省しないんじゃないかな?
悪い事をしたら、罰を受けるってなれば、少しは堪えると思うけど」
罰という言葉に楊ゼンが怯えた。
「小さいから、君の場合は罰っていうより、おしおきか」
とん、と背を押して、楊ゼンを立ち上がらせる。
「ズボンを脱ぎなさい」
「どうして・・・っ」
「私はここだけの話にしてあげようとしてるんだよ?」
太乙自身、姑息な言い方だと理解していたが、普段から何かと生意気に
反抗してくる子供に丁度良い機会だと考えたのだ。
「どうする?」 
玉鼎が大事にしている( と、太乙が言っただけだが)物を壊してしまった。
叱られる事よりも、師が悲しんだら・・・と思うと楊ゼンの心が痛んだ。
「師匠には本当に・・・」
くすくすと太乙は笑った。
「約束しよう」
背を向けて、楊ゼンはズボンを落とした。
太乙は椅子に腰掛け、素足に触れる冷たい床に震えている楊ゼンを
手招いた。
「私の膝にうつ伏せになりなさい」
躊躇する幼い体を引き寄せる。
上体を伏せさせると、脚が宙に浮いた。
脚の半ばまで垂れる上衣を太乙は捲くり、白桃を思わせる臀部を剥き出し
にさせた。
「ここを叩くよ。子供の罰としてはポピュラーだけどね」
太乙の衣を掴んだ楊ゼンの手に力が入った。今まで楊ゼンは打たれた事
などなかったから。
楊ゼンの仕草から、それに気づいた太乙が、体を傾げ、囁いた。
「泣いてもいいよ」
首がふるふると振られた。
「強がり?」
きつく、楊ゼンの尻を太乙は打った。
乾いた音が響く。
「うう・・・っ」
楊ゼンが強張った。
ぱあん、ぱあん、ぱあん・・・わざと大きく音を立てて、太乙は幾度も掌を
打ちつける。
白い肌はすぐに赤く染まりだした。
「や・・・ああ、止めて、痛い・・・っ」
身もがいても、太乙の左手はしっかり楊ゼンを押さえつけている。
逃げる事も出来ず、差し出された場所を叩かれ続けた。
楊ゼンの肌は熱を持っていた。腫れるまで打ち据えてやれば、終わった
後もずきずきと痛むはずだ。それを玉鼎に隠そうとして、さらに苦しむだろう。
「も、う、許して・・・」
哀願が繰り返される。
しかし、その語調が僅かに変化していた。
ふいに太乙は脚を開かせ、指を間に差し入れた。
「・・・ひっ」
敏感なモノに触れられて、楊ゼンが小さく跳ねた。
「へえ・・・」
太乙が蔑むような瞳で、膝の上の子供を見つめた。 
「君ってMの気でもあるの?」
手にしたそれは、未だ吐精も知らないのに、震えながらも立ち上がっていた。
「じゃあ叩いたのは罰にならなかったかなあ。気持ち良かった?」
「離して!」
打たれた場所よりは薄いものの、楊ゼンの全身は羞恥に染まっていた。
「太乙様!」
「煩い」
双丘の狭間に指が突き刺さった。
「あああ−−−っ!!!」
二本の指に深々と貫かれ、湧き起こる激痛に楊ゼンが叫んだ。
蒼い瞳が、信じられない痛みに見開かれている。
「痛いっ、痛い−−・・・」
「小さいだけにきついな」
内側で蠢かせる事によって、引き攣れた皮膚が悲鳴した。今にも赤い
亀裂が走り、裂けてしまいそうだった。
「闇雲に暴れて、自分から痛みをつのらせるかい?」
「でも、・・・」
「痛くないと罰にはならないだろう? じっとしないと、もう一本指増やすけど」
ひくっと楊ゼンの喉が鳴った。
恐怖に動きを止めた楊ゼンの内部を、太乙は思う様蹂躙し、新たな涙を
流させた。
達く事が出来ない辛さと、痛みが延々と楊ゼンを苦しめた。


「師兄が戻る前に、その顔戻しとかないと、ばれてしまうよ」
冷たく絞ったタオルを、太乙は投げ与えた。
「そこにでも座って・・・ああ、痛くて出来ないか」
口元に手を当て、くく・・・と笑う。
「お尻、どんな気分?」
ズボンを履く事をまだ許していない楊ゼンから、足の爪先で裾を捲くった。
「あ・・・」
「いいなさい」
双丘を滑らかな靴が擦ると、痛みに顔が顰められる。
「熱くて・・・痛い・・・です」
「だろうね」
太乙は立ち上がった。
「部屋で休んでていいよ。それじゃあ料理手伝うなんて無理だからね」
「・・・はい」
足を引き摺るようにして、楊ゼンは戸口に向かった。


太乙が、自分の手を広げた。
「少し酷かったかな。私の手まで痛い」
むず痒い感覚が、生々しく残っていた。
 


これはイラストと合わせて、倭郷ありき様からのリクです。
しょたって封神では初めての試みでした。