立て続けの放出に、楊ゼンは酷く疲れていた。師の胸に体を預け、息が落ち着くまで じっとしていたかった。 　　楊ゼンの心を知っているのかいないのか−−−玉鼎が滑らかな背筋に指を這わせた。 　「あ・・・、ん・・・」 　　ぴくんと体が跳ねた。 　　刺激に、玉鼎を銜えたままの場所がきつく締まる。 　「ひあっ！」 　　極めてしまった体に受け入れ続けるのは辛い。意識を散らす対象がないからだ。 　　小さな器は、広げられる苦痛のみを覚えてしまい・・・。 　　締め上げたせいで、余計に痛苦が増した。 　　顔を顰めた楊ゼンに構わず、意地悪な指が敏感になっている入口に触れた。 　「やああっ」 　　慎ましやかな襞がなくなるまでに拡張された周囲をなぞられて、楊ゼンがいやいやと 首を振った。 　　玉鼎が苦笑する。 　「おまえだけ楽しむいもりか？」 　「あ・・・」 　　楊ゼンの頬に新たな朱が昇った。まだ玉鼎の迸りを受けていない事に今、気づいたから。 　「・・・師匠」 　「わかったなら体を起こしなさい」 　「無理、です・・・、疲れて・・・あう！」 　　爪先が肉壁に掛かった。受け入れるだけで精一杯の蕾に侵入されようとしているのを 知って、楊ゼンが凍りついた。 　「言う事を聞けない悪い子には、罰が必要だろう？」 　「嫌、赦して下さい！　本当に、もう・・・」 　　ずっ、と根元まで一息に指が入った。 　「ああああっ！！」 　　腰を浮かせ、楊ゼンは必死に逃げようとする。その無駄な努力は易々と封じられた。 　「い、痛いっ、抜いて下さい、師匠、お願い・・・」 　　温かい涙が、玉鼎の胸に伝わった。 　「では言われた通りにしなさい。そうすれば指だけは赦してやる」 　「出来ません・・・」 　「もう一本挿れてやろうか？」 　　腕を突っ張り、体を持ち上げようとした楊ゼンだが、果たせず再びがくりと崩れた。 　　全身が恐怖に戦いている。 　　以上の挿入では確実に裂けてしまうのを、本能が察知していた。 　　ごうを煮やした玉鼎が、繋がったままで体勢を入れ替え、楊ゼンを組み敷いた。 　「ああう！」 　　楊ゼンが強引な動きに悲鳴する。 　　押さえ込んだ真上から楊ゼンを見下ろし、玉鼎は冷たく言った。 　「おまえ自身で加減出来ない分、辛いぞ」 　　蒼い瞳に怯えが走った。 　「私にされる事をおまえが望んだのだ」 　「違・・・っ」 　　師の意に叶うように楊ゼンはしたかったのだ・・・。 　「黙りなさい」 　　軽い接吻が施された。 　「師匠、あ・・・」 　「大きく息を吐いて、体の力をもっと抜きなさい。わかっているはずだ」 　「はい」 　　数えきれないほど抱かれてきた楊ゼンだから。 　　唇が開き、瞳は反対に閉じられた。 　　胸につくまで、膝が折り曲げられる。天頂から垂直に貫かれた。 　　酷い痛みに視界が真っ白に曇った。 　「あ−−−、あっ」 　　めりめりと体の中心から裂かれていく感覚を覚える。 　「んんんっ」 　「楊ゼン」 　　自身より頭一つ以上は悠に小さい身体を容赦なく揺さぶりながら、玉鼎が汗に貼りつく 空色の髪を掻きあげた。 　　表情の全てを記憶に留めておくように。 　　掌の中で育てた雛が、もう一度飛び立ってしまう前に。 　「・・・楊ゼン」 　　呼びかけが届いたにか、楊ゼンがゆっくり視線を向けた。 　「叶うならば・・・何時までも留めておきたいものだ」 　　そっと、燃え上げる熱に火照った手が、玉鼎に触れた。 　「僕が、・・・行く場所・・・が・・・他に・・・ある、でしょうか・・・」 　　痛みに苛まれつつも、健気に青を纏う道士は微笑んだのだ。 　　仙を名乗るだけの能力を持ちながら、その道を選ばなかった子供が、いた。 　「楊ゼン・・・おまえは・・・」 　　意識があったのは、もうそこまでで、楊ゼンの上げられた手がぱたりとシーツに落ちた。 　「行くのか？」 　　夜明けを迎える前に、楊ゼンはきっちり衣服を整えた。 　「はい。こっそり抜け出してしまいましたので」 　　玉鼎が上掛けを羽織らせてやった。 　「地上もこれから寒い季節となろう」 　「ありがとうございます」 　　藍染めの上掛けの紐を括る。 　　戸口へ向かった楊ゼンの足が、ふと止まった。 　「どうした？」 　「また、来ても構わないでしょうか・・・？」 　「ここはおまえの帰る場所だ。何を躊躇する事がある」 　「はいっ」 　　嬉しそうに頬を染め、足早に楊ゼンは去った。