乾燥と発酵を長時間施された葉は、黒く変色する。しかし、熱い湯を注がれると、
すぐに以前の色を忘れ、赤くグラスの中身を染め上げるのだ。
大地に囲まれた三つの海の、二つめに大きい南岸でのみ栽培されている茶である。
厚めのグラスが一つと、砂糖壺、スプーン、シナモン。忘れ物がないのを確認して、
楊ゼンは丸い盆を取り上げた。
「師匠、お茶が入りました」
「ああ」
スプーン半分の砂糖とシナモンを振りかけた茶は、玉鼎が満足する出来だった。
種類によって煎れかたが変わる茶葉に対する楊ゼンの努力が表れているようだ。
「上手くなった」
「僕などまだ・・・」
楊ゼンは、彼に茶の煎れかたを教えた仙をちらりと思った。
「おまえも座りなさい。眠る前に飲めば、落ち着くだろう?」
「いらないです。グラスも持って来ませんでしたし・・・後で下げにまた来ます」
「私は座れと言ったんだ、楊ゼン」
「あの・・・」
「どうした?」
態度に不審さを感じた玉鼎は、楊ゼンを手招いて目の前に立たせた。
「私といるのが嫌なのか?」
「違います!」
慌てて否定した声の大きさに、楊ゼン自身が驚いた。その顔が見る間に赤くなっていく。
「今日はおかしいな。何かあったのか?」
「・・・痛いんです」
玉鼎を正視出来ずに顔を背けたまま楊ゼンが恥ずかしそうに呟いた。
「痛くて、座れないんです」
くっくっと玉鼎は笑い出し、細い体を引き寄せた。後ろ抱きにストンと玉鼎の膝に落とされた
楊ゼンの顔が顰められた。
「痛・・・っ」
「それは悪い事をした」
楊ゼンを抱きしめ、耳元へ唇を近づける。
「私のせいか?」
答えられないのを知っていての問いかけ。
「・・・・・・」
「舐めてやろうか?」
「やっ・・・!」
逃れようと身を捩った楊ゼンに、温くなった茶を一口含ませてやる。シナモンの刺激が、
舌に広がった。
「ベッドへ行きなさい」
玉鼎に促され、彼の寝台へと誘われた。背を軽く押されるだけで、楊ゼンはくず折れた。
抱かれる行為の予感が、楊ゼンから力を奪ってしまっていた。
小さく震える楊ゼンの傍らに腰を下ろし、玉鼎が空を映した髪に触れた。
「怖いのか?」
「・・・はい」
「傷を見せてみなさい」
伏せた体を膝が立つまで持ち上げる。頭はシーツに付けたまま、腰だけを高く突き出した
姿勢に、楊ゼンの怯えが強まった。
纏っている道服の裾を捲くられ、閉じてしまわないように楊ゼン自身に持たせる。
白い肌が露出した。陶器のように硬質なイメージを与える楊ゼンの体だ。
玉鼎が手をかけた双丘の狭間には、充血の引かないガーネットの蕾が息づいていた。
敏感すぎるほどに研ぎ澄まされたそこは、軽く触れられただけで、楊ゼンに悲鳴を上げさ
せた。
「いや・・・っ、見ないで・・・」
「もう幾度も私を受け入れているのに、何を言う」
「止めて下さい、そんな事・・・!」
異形の子に人としての感情を教えたのは玉鼎だった。本来なかった羞恥心は、楊ゼンが覚
えると急速に彼を満たした。
恥ずかしさが、楊ゼンの頭を巡っている。今すぐにでも消えてしまいたいほどの思い。
「中も傷があるのか」
指が楊ゼンをこじ開ける。
「ああ・・・」
「同じように真っ赤だな、確かに辛そうだ」
内部を確かめ、震える入口を探り、玉鼎が言葉を綴った。
「おまえの痛みを和らげてやろう・・・」
「・・・んんっ」
楊ゼンから、最初に舌先が触れた時、艶めいて淫らな喘ぎが漏れた。一度触れた玉鼎の
舌が離れると、舐められて湿った場所の熱が引いて辛い。
「・・・っ」
いやいやと楊ゼンの首が振られた。玉鼎を拒む為か、秘部を晒されている事への抵抗か・・・。
玉鼎の愛撫は止まらなかった。楊ゼンは彼の執拗な舌技で責め立てられ、何度も泣きながら
赦しを請うた。  
「や・・・嫌だ、もう・・・お願いです・・・」
ふいに手が楊ゼンの下を潜り、高ぶりを探し出した。
「ゥッ・・・あ、んっ」
楊ゼンのものは、先端から透明な雫を滴らせていたのだ。
「辛いばかりではないだろう?」
意地悪く玉鼎が笑った。
舐められてとろけた場所に、指が入り込むと、その凄い刺激に楊ゼンが精を吐き出してしまい
かけた。しかし、玉鼎はまだ達かせはしなかった。危うい所で楊ゼンを突き放してしまう。
「あああ・・・っ!」
悲痛にうめく楊ゼンの中に増やした指を再び挿れ、ゆっくりと入口を開いた。
「知っているかい、楊ゼン。おまえがいつも煎れてくれる赤い茶には、殺菌作用がある事を」
玉鼎が翳した手に、テーブルに置かれていたグラスが現れた。軽く唇を触れ、人肌くらいに
冷めているのを確認する。
グラスが傾けられた。中の液体が、細い流れとなって滴り落ちる。
「何・・・あーー・・・」
寛げられた唇に、紅茶が入り込む気配に楊ゼンが背を撓らせて反応を示した。決して冷たくは
ない。ただ、体の奥深くにまで染み込む異様な物が、楊ゼンに恐怖を与えるのだ。  
最後まで注いでしまうと、玉鼎は指を引き抜いた。
「漏らさないように締めていなさい。その年で、眠っている間に出してしまうのはもっと恥ずかしい
事だ」
「師匠・・・」
縋るように楊ゼンが振り返った。
言われた通りに体に力を入れている楊ゼンの顔が、憂いを含んだように翳っていた。
「朝までだ」
「出来ません、そんな事」
瞬間、楊ゼンは抱き上げられた。
「では、浴室に連れて行ってやろう」
「・・・はい」
楊ゼンは玉鼎にぎゅっとしがみついた。

                           何だかよくわからないまま終わり。続くかも。