楊ゼンが頭を振る度、シーツの上に広がった髪がぱさぱさと空虚な音を立てた。
                   伏せた顔の表情はわからない。しかし、時折漏れるうめきで、彼が苦しんでいる
                  のが窺われた。
                   「服従する事に疑問を持つからおまえは辛くなる」
                   そんな楊ゼンの空色の髪を指に絡めながら玉鼎は言った。
                   楊ゼンからの返事はない。既に応える気力さえ、残ってはいなかった。
                   玉鼎はくすりと笑って、右手にある物を握り締めた。
                   「ああ・・・っ!」
                   苦しい声に、優しく背を擦ってやる。
                   宥める左手と、苦痛を与える右手。
                   今、楊ゼンは腰から下を玉鼎の膝に預けていた。そのゆるく開かせた脚の付け根
                  には、大きな異物を含まされている。
                   裂ける寸前の、ぎりぎりの許容量限界の大きさで選ばれたそれは、快楽など
                  微塵も楊ゼンに与えず、ただ苦痛をもたらす為だけに存在していた。
                   玉鼎は、楊ゼンの体の事など知り抜いている。無垢だった場所を開いてから、数え
                   きれないほど抱いてきたのだから。
                   時を、回数を経たとしても、楊ゼンは慣れるという事を知らないようだった。
                   何時覚えたのか、高い矜持と羞恥心が、素直に抱かれるのを拒む。
                   確かに以前に比べて体を使っての抵抗は少なくなった。玉鼎の前では全くの無駄
                  である事は、思い知らされている。
                    しかし、その心が屈していないのも、また玉鼎にはわかるのだ。
                   楊ゼンは玉鼎の側にいる事を好む。一番好きな人は? と尋ねられれば、即座に
                  玉鼎だと楊ゼンは答えるだろう。幼い頃から慈しんで育てた子供の精神は未だ成長
                  途上で、愛しいから抱く行為を理解しきれてはいない。
                   玉鼎はそれに、言いようのない苛立ちを感じる事があるのだ。
                   強引に捻り込むと、楊ゼンの背が反り返った。上向いた顔の中、大きなアーモンド
                  型の瞳が、あまりの痛みを信じられないと、見開かれている。
                   一瞬遅れて、叫びが迸った。
                  「痛い、痛−−−・・・」
                   捻られた事で、神経の集まった粘膜が激しく擦られ、引き攣れた。全身を突き抜ける
                  激痛に、本能的にずり上がって逃れようとした楊ゼンの腰が捕まえられた。
                  「許して、いやあっ」   
                   涙でしとどに濡れた碧瞳が玉鼎の視線と絡んだ。
                   見つめられた黒耀の闇は冷たい色を浮かべてから、微かに笑むように和んだ。
                  「まだだ」
                  「どうして・・・っ」
                  「おまえに思い当たる事はないのか?」
                  「・・・・・・」
                   寝台を覆う帳が窓から入り込む風に揺れた。
                   楊ゼンは凍りついたように動かなかった。
                   夜、玉鼎が部屋を訪れた。楊ゼンが、ではなく、彼の師が訪れた場合、行為は
                  抱かれるだけにとどまらない。小さな体を慣らす事に時間が使われるのだ。
                   繰り返された日々を知っている楊ゼンは、抵抗する事もなく、言われるままに着物を
                  脱ぎ落とした。
                   結果がこれである。
                   手を取られ、寝台に腰掛けた玉鼎の膝に伏せさせられた。
                   軽く香油を垂らされただけで、経験した事もない太い物を銜え込まされた。
                   痛くて、苦しくて・・・。
                  「心は屈していない」
                   玉鼎が囁く。 
                  「体は抱かれても、おまえの心は抱かれる事を良しと思ってはいない」
                  「師匠・・・」
                  「服従する事に疑問を持つからだ」
                   繰り返される言葉。
                  「私は、おまえの心が欲しい」
                   楊ゼンが身じろいだ。
                   気づいた玉鼎がすばやく動きを封じた。
                  「無駄な事を」
                   いったん引き抜かれた物が、再び深く内壁を抉った。
                  「あく−−−!!」   
                  「この痛みは、強情なおまえへの、罰」
                   玉鼎が体を傾け、楊ゼンの首筋に接吻けた。
                  「それとも、もっと別の方法が良いかも知れぬ。苦痛ばかりが全てというわけでも
                  ないだろう」
                   淡々とした玉鼎に、楊ゼンが震えた。
                   何かが起こりそうで。 
                   助けて、と哀願が紡がれる。こんな事をしなくても、楊ゼンはただ傍らで静かに
                  いたいだけなのだ。 
                  「楊ゼン、私はおまえが愛しい」
                   指が背をゆっくりと辿った。
                  「愛しいから、壊してしまうほどに扱うのだ」  
                   唇に与えられた接吻が、深い。


                  8/26,27のイベントの日々で鬼畜話がいっぱい出来ましてvv
                  煩悩パワー復活ってな感じでまたしてもきつい師匠話です。
                  これだけでは何の事か勿論わかりませんので、これは続きます。