両腕の自由がないまま、膝より高いベッドに上がるのは大変だった。まして視界まで封じ
     られているのである。
      玉鼎が手伝ってくれる気配もなかったので、楊ゼンは倒れるように上体を乗せた。前に
     入れられた物がシーツに擦れ、ひっと息が詰まる。
      次は受け入れる体勢を取らなければならない。
      楊ゼンはゆっくりと腰を持ち上げた。膝を付き、下肢だけを高々と掲げた獣の姿。
      屈辱に、シーツに埋めた楊ゼンの頬がかっと燃えた。
      追い討ちをかけるように、玉鼎の苦笑が聞こえた。
      「僅かな移動で、私の位置がわからなくなるか?」
      「え・・・?」
      「何処を向いている」
      「あーーっ!!」
       いきなり三本もの指を捻り込まれて楊ゼンが悲鳴する。
      「痛いっ! ああ、止めて・・・っ」
       見えるはずもないのに、楊ゼンは振り返り、逃れようと膝でいざった。
       儚い抵抗を玉鼎は楽しみ、返答の代わりに、内部で指を鉤状に曲げた。
      「うう・・・っ」
       柔らかい肉に指が食い込む鋭い痛みが走った。
       埋めた指を操り、楊ゼンを望む場所に移動するよう導いていく。
       やがて真っ赤に充血した部分が、玉鼎の正面に据えられた。昼間から何度も広げられて
     いた秘口が酷い扱いに更に熱を増した。
       楊ゼンの全身がうっすら汗ばんでいた。白い肌は、花弁を溶かしたように、薄く紅に染まっ
     ている。
       荒く喘ぐ呼吸が繰り返された。どんなに衝撃を受けても、楊ゼンは必死で腰を上げていな
      ければならなかった。下げる事が許されるはずもなかったし、崩れると、陶花が前方を抉る
      のだから。
       存分に楊ゼンを蹂躙してから、玉鼎は指を引き抜いた。濡れた指を淫靡に舐め、ベッドに
      体を乗り上げる。
       ギシ、ときしむ音が、楊ゼンを竦ませた。
      「挿れるぞ、楊ゼン」
      「・・・」
       楊ゼンの背が震えた。
       着物を寛げると、先ほどまで楊ゼンが奉仕していたものが現れる。天を衝くほどに大きい
      それが秘裂の狭間に押し付けられた瞬間に、抵抗を破って入口は無情に開かされた。
      「−−−!!」
       楊ゼンの顎が反った。体の内側を殴られたようなショックに喉が詰まる。
       ショックは一度では済まず、玉鼎が全てを収めるまで続けられた。
      「ひ・・・あ・・・あ・・・」
       頭を振り、楊ゼンが強くシーツに擦りつける。
       労わるつもりのない玉鼎の手が前に伸び、異物を差し入れられたままのものを揉みしだいた。
      「いやあっ!」
       唯一自由が与えられている唇から叫びが上がる。
       杭に塞がれていては、楊ゼンがどんなに兆しても、達することなど出来はしない。弄られると
      それが内部デ蠢き、先ガあちこちに刺さるのだ。
       ぐいと腰が浮くほど突き上げられた。
      「−・・・っ」
       痛いと、赦して欲しいと言いたいのに、衝撃が強すぎて言葉にならなかった。
       繋げられていつ場所が炎を生む。内壁が蠢いて絡みつき、その動きが新たな炎を次から
      次へと発生させた。
       言葉にならないなら、惨めな意味のない音を聞かれないようにと、楊ゼンがシーツを噛んだ。
      「何時までそうしていられるか」
       察した玉鼎が含み笑う。
       激しさを増す突き上げ。頃合いを見計らって、玉鼎は前を堰き止めた花を一息に引き抜いた。
      「あああーー」
       悲痛な叫び。過度に留められた精は、玉鼎が促しても、じわじわ滲む程度にしか出てこない。
       狂おしい熱が渦巻き、楊ゼンは身悶えた。
       ・・・双方に快感など存在しない。
       ただ楊ゼンを痛めつけるだけの交わり。
       永い時間をかけた玉鼎が終わらせると、即座に身を引いた。白く濁った液体が、痺れ緩んだ
      所から流れ出す。
       ぐったりした楊ゼンは、腕の縛めが解かれた事も気づかなかった。泥のように疲れた体はぴくり
      とも動かない。
       玉鼎が立ち上がり、楊ゼンに着物を投げ与えただけで部屋を出て行った。
       しばらくして楊ゼンが体を丸めた。
       傷ついた獣が体を庇うように。
      「う・・・」
       嗚咽が漏れる。
      「師匠・・・」
       与えられたのは玉鼎の道服。彼の匂いを抱きしめる。
       瞳の覆いは自分で取った。痺れた指で結び目を解くのは難しく、何度も空しく布を引っ掻いた。
       領巾の白も、縫い取りの金糸も涙に濡れ、本来の色を失っていた。
       泣きながら、体を丸めたまま、楊ゼンは疲労が誘う深い眠りに落ちた。
      
       だから、玉鼎が新しいシーツの、さっぱりしたベッドに移してくれたのもわからなかった。


       「鍵」はこれで本当に終わりでーす。
       この完結も望月様へです。(当たり前ですね) 最初のを途中で切ってしまったのですから。